カカクコムの創業者は、上場を前にして会社を売却し、いまは引退して暮らしているらしい……。そんな話を聞いたのは何年前でしょうか。上場すれば、名誉も金も多くのものが手に入るのに、どうして途中で売ってしまったんだろう? と当時は思っていました。
すると、先日、そのカカクコム創業者が新たなビジネスを引っさげて表舞台に戻ってきているという記事が。現在推進する美容室ビジネスをPRするために出てきたようですが、リタイアに至った経緯やリタイア時代の生活がなかなかに面白いんです。
経営者になりたいというより、束縛されない自由な時間が手に入ったら、働きたくないと思ってたんですよ。
僕、就職活動をしてるときから「5億円手に入ったらすぐに仕事を辞める」と宣言してましたから。
渡辺:
当時の起業家のなかでは珍しいタイプだと思います(笑)。ちなみに、なぜ5億円だったんでしょうか?槙野さん:
当時サラリーマンの生涯賃金が3億円くらいだと言われてたんで、普通の生活をするなら5億円あれば十分だと思ったからですね。
「5億円手に入ったらすぐに仕事を辞める」。これを聞いた周りの人は、大言壮語と思ったでしょうか、それとも仕事をやめてしまうなんてもったいないと思ったでしょうか。記事によると、結果的に25億円程度で会社を手放したそうです。
その後、一応投資をしたそうで、5億円でグローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)を買い、さらに5億円買い増します。毎月500万円の配当が入ってくるということで、なるほどグロソブ自体の良し悪しはともかくとして、10億円あったら債券運用だけで十分な生活ができてしまいますね。
お金持ちになる起業家の多くは、投資などでちまちまと利回りを稼ぐことはせず、ガバッ決めて特定の商品を買ったりして、もし失敗して金融資産がなくなっても、新たにビジネスを始めればいいや、みたいに言っていたりします。たぶん、「事業を始めればだいたいうまくいく、というかうまく行かせてみせる」という思いが、普通の人との違いなんでしょう。
ちなみに、悠々自適の生活に入っても、「なんかやりたい」と思って再びビジネスの世界に戻ってくる気持ち、ぼくには分かります。お金があっても、単に消費するだけの毎日というのは楽しくないんですよね。いや、楽しいところもあるんですが、しばらくすると飽きてくるんです。人によって違うと思いますけど。
そして、ビジネスの楽しさは、何かを生み出すところにあるんじゃないかと思っています。ものづくりでも、ビジネス自体でも。そして、それを維持したり管理したりすることが仕事になってくると、どんどんつまらなくなる。だから、カカクコムが一定の軌道にのって、あとは反復的に大きくするとか、そのために運営ができる人材を採用するとか、上場のために管理体制を整えるとか、そういうステージになるとつまらなくなる気持ちが分かります。
そういえば、このカカクコム創業者の槙野さん、28歳でカカクコムを売却して、現在45歳なんですね。
セミリタイアの先輩たちシリーズ