「市場が平穏なため、取引高が減少」。こんな表現をよく聞きます。平穏な市場とは、値動きがあまりなく、大きなトレンドもない状態のことですね。しかし、なぜ市場が平穏だと取引高が減るのでしょうか?
ボラティリティと売買高の関係について調べてみました。
株価変動と取引高はなぜ連動するのか?
この問題、調べ始めるとかなり奥が深いものでした。代表的な仮説として言及されているのが、Thomas E Copelandの逐次情報流入仮説(Sequential Informationモデル)(現論文:A model of asset trtading under the assumption of sequential information arrival)と、Clarkの分布混合仮説です。
これを理解した範囲で説明してみます。
まず資産価格を変動させるような情報が出てきたとします。「FRBが利下げを行う」というような情報です。これが、誰にとっても資産価格を上昇させたり下落させたりする情報ならば、取引は行われません。誰もが同じように上昇と思っているのならストップ高となるということです。
ところが、あるトレーダーは下落と思い、あるトレーダーは上昇と判断するなら、ここで価格変動が起きます。下落と考えるトレーダーは売りますし、上昇と判断するトレーダーは買うからです。売り買いそれぞれがあるので、取引が成立します。
情報が入ってくるたびに、新たな取引が発生し、両者が妥当と考えるところで価格が均衡します。つまり、価格が変動します。多くの情報が入ってくるたびに価格はさまざま変動するわけです。これがボラティリティですね。
さてこうした情報がたくさんあるとどうなるでしょう。Clarkは、到達した情報と取引は一対一の関係にあると考えました。つまり、取引量は情報到達回数の変数となります。つまり、到達する情報の数とは、取引量であり、ボラティリティとなるわけです。
売買高の多くは高頻度取引?
仮説的にはなんとなくわかったようなわからないような。今度は取引高を別の観点から見てみます。いったい、誰が取引しているのでしょうか? 実は、現在売買高の5〜7割は高頻度取引(HFT)だと言われています。
これによると、HFTが参照する情報は、価格情報や注文情報(板情報)、そして報道情報となっています。価格情報や注文情報はボラティリティそのものとも言えるので、取引が活発になれば、それによって生まれた新たな価格や注文によって次の取引が生まれるというポジティブループに入るのでしょう。
となると、やはり到達情報としては「報道」の意味合いが大きそうです。
本当に連動するのか?
取引量とボラティリティの関係については、さまざまな実証研究が見つかりましたが、より実践的なものとして、「今日のトレード・プランと損益状況」に面白い数字が載っていました。2010年のデータですが、日経225の1日あたりの出来高別の値幅の分布です。
見たところ、見事に出来高が多いほど、ボラティリティも高いことが分かります。
穏やかな市場で利益を得る
では、どうしたらボラティリティが小さい市場で利益を得られるのでしょうか? 答えの1つはオプションです。ガンマとシータは表裏の関係なので、ガンマショートでシータによるタイムディケイを得ていく作戦です。つまりオプションの買いです。
値上がりや値下がりで損益が出るのは困るので、プットとコールを両方売って、デルタヘッジし、デルタをニュートラルにします。オプションの買いはガンマロング、売りはガンマショートなので、今回は売りです。
ただし、穏やかなはずが急にボラティリティが増すと、損失が出ます。ボラティリティを示すベガが敵だということです。
これはいわゆるショートストラドルの合成ポジションですね。ただし、◯◯ショックなどがちょうど起きると、単に損失が出るだけでなく、壊滅的な損失になる可能性があります。暴落時は流動性が極端に落ちて、損切りの注文が約定しない場合があるからです。さらに、「売り」の場合は損失無限大です。
では、VIXをショートしたらどうでしょうか? オプションプレミアムから算出されるVIXは、よりシンプルにボラティリティをトレードする方法ではあります。しかし、先日のVIXショックでも分かったように、ボラティリティ急上昇時は逃げられません。そして、損失はものすごく大きくなる可能性があります。ロスカットの可能性も大です。
なるほど、たしかに動かない相場で利益を得るのは難しいものですね。