不定期連載として、現在保有しているポートフォリオの中身を紹介していきます。S&P500インデックス連動ETFのIVVに続き、2番めに大きなシェアを持つのがAmazonです。
いわずと知れたAmazonの歴史
ジェフ・ベゾスがAmazonの前身となる企業を設立したのは1994年、Amazon.comとしてサービスを開始したのは95年の7月です。インターネットが爆発的に普及する前夜であり、ネットバブルが始まろうとしていた頃でした。
日本ではまだWindowsでインターネットに接続するのは難しく、ぼくは大学のワークステーションからインターネットを使っていました。まだサイトの数も少なく、手動でサイトを分類したYahoo!が最も有名なサイトだった時代です。それでもYahoo!と並んでAmazonは、「これからはインターネットの時代だ!」というムーブメントを代表するサイトの1つでした。
97年5月にAmazonはNASDAQに上場します。初値は18ドルだったということですが、その後の複数回の株式分割を踏まえると、現在の株価に対応させるなら1.5ドルです。上場時にAmazon株を買っていれば、1500倍になったということですね。
そのAmazonが初めて黒字を出したのは2001年のこと。日本に上陸した翌年のことでした。僕がAmazonで初めて本を購入したのは2002年秋。初めて買ったのが『インデックスファンドの時代』だというのは、思い返すと面白いものです。
金融危機後に爆発的に上昇した株価
Amazon株は黒字を出した2001年に、実は10ドルを切るまで株価が下落していました。ぼんやりと当時の記憶があるのですが、「延々と黒字の出ない、出てもほんの僅かな企業」というのが当時のもっぱらの見方でした。ドットコム企業は利益なんて出なくてもいいんだ。そんなふうに言われた中でも代表企業でした。
そんなAmazonの株価が爆発的な上昇を始めたのは2008年末。金融危機後です。
この2000年代後半から現在にかけて、なんだかんだいってAmazonの売上は伸び続けてきました。しかも2000年代は年率40%もの高成長を続けてきたのです。
とはいえ、まともに(?)純利益が出始めたのは2016年になってから。それまでは売上は拡大するも、ひたすら投資をし続ける企業でした。この利益が出る企業への転機となったのは、AWSの登場です。AWSの財務状況が初めて明らかになったのは2015年の第1四半期から。この当時から、全体で営業利益率2.1%のAmazonの中で、利益率が20%を超えるサービスだと話題になったものでした。
利益のほとんどを投資に回し、ECで盤石の地位を築きつつあるAmazonに、もう一つの絶好調事業のAWSはしっかりと利益も稼ぎ出してくれる。強いAmazonを誰もが感じた頃です。それでも2016年始めの株価はわずか607ドルでした。
2008年に購入したAmazon株
このAmazon株を、ぼくが最初に買ったのはリーマンショックの大暴落途中の2008年10月でした。株価は44.53ドル。買った瞬間から大きく含み損となったわけですが、よくまぁ持ちこたえたものです。
さらに2013年5月に買い増し。このときはすでに260.88ドルに株価は上昇していました。そしてさらに2014年2月に買い増し。このときは341.75ドルです。平均買付単価は約198ドルです。
この株が現在は3000ドルを超えているわけですから、軽くテンバガー。ぼくのポートフォリオの中でも、最も上昇した銘柄になります。
とはいっても、ここまでのAmazonの上昇を期待、理解していたわけではありません。実は17年に半分、そして19年にそのまた半分を売却してしまっています。この時点でも、5倍、10倍ではあるので、うまくいった投資ではあるのですが、後知恵的に言えばAmazonのポテンシャルを信じきれなかったともいえます。
当初買い付けた株式の25%しか現在は保有していないのに、ポートフォリオの中で2番めに大きなシェアを占めているわけですから、偉大なりAmazonといったところでしょうか。
なぜAmazonを買ったのか
ではどうして2008年にAmazonを購入したのでしょうか。実は当時はブログを付けておらず、日記にもメモが残っていません。ちょうど同じタイミングでGoogleも買っているので、ぼくのなかでは当時の2大IT巨頭を購入したという認識でした。
すでにネット銘柄のトップを走っていた2社。そして、この時すでにネットは生活やビジネスを抜本的に変えるという確信があったのは事実です。新興企業の株に賭けた、というつもりはまったくなく、これからネットが大きく伸びるなら、その代表的企業を買っておけ、というレベルの話です。
両社とも、ネット企業らしいカルチャーとプロダクトを持っており、直近の売上や利益よりも、未来に向けて行動しているという共通点もありました。当時のAmazonはすでに黒船と呼ばれており、日本でも書籍販売において早晩圧倒的な地位を築くのは誰の目にも明らかでした。
正直、AWSの伸びは全く想定外でしたし、書籍以外のEC全般でここまでAmazonが伸びるとは思ってもいませんでした。それでも、創業者の独特のカルチャーが根付いていることをプロダクトの隅々から感じられたものです。
なぜAmazonを売ったのか
ではなぜAmazonを継続的に売却したのか。これはぼくのリスク選好度の問題です。長いチャートで見ると見事な右肩上がりのAmazonですが、自分のポートフォリオの中でかなりの大きさを占めるようになってくると、さすがにビビるわけです。
一時期は、総資産の10%近くをAmazon1銘柄で占めており、安定しているとはいい難いこの銘柄に10%も投資し続けるのは、さすがに怖いものでした。絶対額としても相当なものです。
そこで節目節目で半分ずつ売ったわけですが、振り返ると、この半分ずつ売るというやり方は悪くありません。後に読んだ本多静六の『私の財産告白』でも、2倍になったら手持ちの半分を売る、という「二割利食い、十割益半分手放し」ルールが紹介されています。2倍どころか5倍、10倍になってからの半分売りですので、十分だともいえるでしょう。
逆に、Teslaの暴騰直前に、わずか40%の利益ですべてを手放してしまったことはさすがに後悔もします。半分残しておけばよかったという後悔です。
今後のAmazonポジション
コロナ前は、なかなか2000ドルを超えられないなぁという実感のあったAmazonですが、コロナを機に暴騰。一気に3000ドルを超えてきました。なんなんだろう? というほどの上がり方です。
このまま持ち続けるか、それともまた少し売却するか。もしも4000ドルまで上昇したら、やはり半分は売るつもりです。
ただAmazonの今後を見た場合、いずれ配当を出し始めてから10年くらいは成長を続けるでしょう。クラウド事業もEC事業もそれほどまで圧倒的であり、さらに最近ではGoogleとFacebookの牙城である広告事業にも進出してきています。テクノロジーの強さでは定評のあるAmazon。GAFAの中でも、もっとも多角化が進んでいる企業だと考えています。
そして、独占的といえるような事業がないことも強みです。GAFAはすでにプライバシーと市場独占で目をつけられていますが、Amazonはそのリスクが最も小さい企業だと考えています。
株価が上がりすぎだと考えるひともいるでしょうが、Amazonの売上の伸びを見ると、P/Sレシオは4.84。AWSが本格始動した2016年以降はP/Sレシオ3以上で推移してきており、短期的な上下動はあっても、売上高からそこまで乖離した株価ではありません。
逆に、利益の上昇に対しては株価の伸びのほうが鈍く、実はPERは低下トレンドにあります。15年秋に720倍だったPERは、このところ100倍を切るところまで下がっており、直近でも118倍です。この倍率自体は、市場平均よりも5倍近く大きく、とんでもない高さではあるのですが、一時期に比べれば利益が株価に追いついてきたということでもあります。
Amazonが一定の市場シェアを獲得し、シェア拡大から利益重視に舵を切ったとき、どのくらいの利益を生み出すのか。それを考えるだけでもワクワクしますね。Amazonは現在の3000ドルという株価でも決して割高というほどではなく、そしてあと10年は軽く戦える銘柄だと考えています。