不定期連載のポートフォリオ紹介、第6回は総合債券ETFの【BND】です。書くのは6番目になりますが、実はその後の価格変動と買い増しで、現在、単一商品としてはなんと最大シェアを占める保有額になっています。
意外なことに、これだけ株式バブルだといわれていても、年初からのパフォーマンスはBNDがS&P500を上回っています。安定して増加する資産の代表例が債券なのです。
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総合債券ETF【BND】とは
投資の王道は株式だと言われていますが、それと対をなすのが債券です。株式にインデックスがあるように、さまざまな種類のある債券の中でも、各債券をまとめてパッケージして上場させたものが「総合債券ETF」。なかでも、バンガードの【BND】とiシェアーズの【AGG】は定番です。
総資産額(AUM)はBNDが$65.01B、AGGが$81.82Bと、多少AGGのほうが大きいですがほぼ同等*1。信託報酬(コスト)はBNDが0.035%、AGGが0.04%とわずかにBNDが有利です。両者のパフォーマンスは、ほとんど変わらず誤差レベルです。
組入資産もほぼ一緒です。Tresury=米国債比率は4割ほど、MBSは財務省保証付きの不動産担保証券です。そのほか社債などが4割ほど入っていますが、いずれも格付けはBBB以上。いわゆる投資適格証券を組み入れています。
端的にいえば、債券について難しいことを考えず、株式でいうインデックスのようなつもりで買えるのが、BNDやAGGのような総合債券ETFだということです。
債券遍歴
もともと債券を買い付けたのは2008年のことです。金融危機前後に総合債券のAGGを買い付けました。当時は、TLT(米超長期国際)やIEF(米長期国際)も買っており、同様に購入しました。
その後、債券の価格はじわりじわりと上がります。結局AGGは2017年に売却し、別の資産に組み替えました。
しかし2019年2月になって、買い始めたのがBNDです。コロナショックに向けて債券価格はどんどん上昇し、2020年4月に一部を売却したものの、再び10月に入って買い付けました。
債券の魅力
投資の王道は株式なわけですが、ではなぜ債券を持つのでしょうか。1つには、それがたいへん安定した資産だということです。大きな増加も望まないが下落も嫌だ。そういいう人は現金を保有することが多いと思いますが、現金にはほとんど金利が付きません。また、株式が不調なときには金融緩和によって金利が低下し、債券価格が上昇します。大きな上昇ではありませんが、価格が安定しつつ、多少のリターンを得られるのが債券の特徴です。
下記は【BND】と米長期債ETFの【IEF】、そしてS&P500の金融危機から推移です。黄色の株式S&P500が金融危機で半値まで落ち、その後急上昇した一方で、BND(青線)やIEF(赤線)はほぼ横ばいです。
年平均リターン(CAGA)でみると、S&P500が6.47%。IEFは2.54%でBNDは0.97%になります。ただし、リスク(標準偏差)は、S&P500が15.79%なのに対し、IEFは6.37%、BNDは3.69%となっており、リスクが小さいことが分かります。
実際、リスクあたりのリターンを示すシャープレシオでは、
- BND 0.94
- IEF 0.70
- S&P500 0.56
となっており、BNDが優れた特性を持っていることが分かります。ドローダウンを加味しないリスク当たりリターンのソルティノレシオでは、BND=1.74、IEF=1.27、S&P500=0.81と、こちらも高評価です。
さらに、債券のほうが配当が大きいことも忘れてはいけません。BND、IEF、S&P500(IVV)について、この期間持ち続けた場合の配当額についても見てみましょう。債券はS&P500の2倍以上の配当を出していることが分かります。途中からどんどんS&P500の配当が増加して逆転していますが、これは株価が上昇し株価あたりの配当額はほぼ変わらないため、持ち続けた場合の配当額も増加しているためです。
また、IEFに比べて、モーゲージ債や社債を組み込んでいるBNDのほうが10-20%ほど配当が多いことも特徴です。
この配当を、仮に再投資した場合のリターンは次のようになります。傾向はあまり変わりませんが、S&P500のリターンにだいぶ近づきました。
具体的には、配当再投資後のリターン(CAGR)は次のようになります。
- BND 4.09%
- IEF 4.97%
- S&P500 8.58%
ちなみに、BNDのワーストイヤーは▲2.10%、マックスドローダウンは▲4.01%。これはよほどのことがあっても、年間で資産は2%くらいしか減らないということです。
攻めなら株式、守りなら債券
そうしたわけで、長期で資産を増やすなら株式に勝るものはありません。ただし、それは安定はしておらず、かなりの変動をもたらします。一方で、債券は配当を考慮すれば年平均4%程度で成長してきており、変動も小さく、最も下がった年でも2%でした。
ちなみに、年初からのリターンを見ると、これだけ株高のように感じても、コロナショックを無傷で乗り切って、その後もさらに上がり続けているBNDのほうが高パフォーマンスなのです。BNDは年初から6.26%、S&P500は2.65%でしかありません。
BNDの平均配当利回りは2.9%です(AGGは直近12カ月平均で2.23%)。金利水準の変化によって、過去平均1%程度のリターンが生じるとともに、3%弱の配当も毎年もらえるというわけです。ちなみにBNDは毎月分配で、100万円買えば毎月2400円(税前)が入ってくるというわけです。
ぼくの場合、米国株の定期買い付けは行っていないので、各ETFからの配当金が毎年けっこうな額入ってくる構成になっています。これまでは、これをだいたい1%の分配金が得られるドルMMFで運用していたのですが、コロナショック後は金利が大幅に低下し、ほぼゼロになってしまいました。であれば、現金で持っておかなくても総合債券ならば、価格は安定しており、3%弱の配当も入ってくる。というわけで現金をBNDに変えました。
正直なところ、バブルチックに株価は上昇を続けており、過大な金融緩和によって金利は下落しきっています。今後さらなる金利低下は望めず、金利が上がれば債券価格は低下します。このタイミングで本当に債券か? という思いはあったのですが、かといってバブルに乗るほどの勇気もありませんでした。
結局のところ、10月のBND追加買いは88.01ドルであり、金利はじわじわと上昇。あっと言う間に損失となりました。一時は87.4ドルまで下がり0.69%の含み損でした。ところが、11月11日あたりからの調整で金利は再び下がり、BNDは上昇。現時点での価格は88.38ドルと買値を上回っています。
たしかに金利の動向に影響を受ける債券ETFですが、株価と同様になかなか先行きは見通せないもの。さらに金利が上がるといっても、BNDのデュレーションは6.5年であり、さほどの影響は受けません。
というわけで、現金よりは債券のほうがまし。そういう感触をもっているわけです。
*1:ちなみに、【VTI】は$184B、【VT】は$15.7Bです。