FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

FIRE後の公的年金 家族の扶養に入る 完全FIREへの道(10)

経済的に自立(FI)した上で、退職に限定せず好きな仕事で働く(RE)ことがFIREだと思っていますが、今回サラリーマンも退職し、世間的な意味で完全FIREすることにしました。

 

健康保険と同様に、これまで勤め先が手配してくれていて意識する必要がなかったのが年金です。しかしFIREすると、自分で年金をどうするかデザインすることが可能です。前回は、公的年金の3つの選択肢のうち(1)となる第1号被保険者を選び、年金の免除申請を活用する手法を検討しました。

 

その時、課題として出たのが、「妻が専業主婦の場合、妻が第3号被保険者から外れて国民年金に加入しなくてはならない」という点です。では専業主婦ではなく働いていればいいのかというと、それなら妻の扶養に入るのがベストでは? という疑問が浮かびます。今回はそこについて。

第3号被保険者(ほぼ専業主婦用)

第3号被保険者は、ほぼ次のような組み合わせです。

  • 夫:サラリーマンで第2号被保険者
  • 妻:専業主婦で第3号被保険者

必ずしも専業主婦だけが第3号被保険者ではないのですが、第3号の全体793万人のうち男は12万人しかいません。ほぼ専業主婦のための制度といってもいいでしょう。

 

ポイントは、一切保険料を払わないのに、国民年金がまるまる受給できることです。つまり毎年79万5000円をもらえます。いや、美味しいというか、人によってはずるいと思うような制度です。

 

第3号被保険者になるには、下記のような条件があります。

  • 健康保険法等における被扶養者の認定取扱いを勘案して機構が認定
  • 認定基準年間収入が、130万円未満(その年の年収見込)
  • 第2号被保険者たる配偶者の年間収入の2分の1未満

FIREした人の第3号被保険者戦略

ではFIREした人は第3号被保険者を選択するとどうなるでしょうか? まずそのためには、妻あるいは父母、子どもの扶養に入る必要があります。「扶養に入る」というのは、この場合は健康保険の扶養者になるのとイコールなので、妻あるいは父母、子どもが勤め人で、組合健保/協会けんぽに入っていて、第2号被保険者である必要があります。

 

さて問題は「認定基準年間収入が、130万円未満(その年の年収見込)」でしょうか。FIREしていれば給与収入はないはずなので、基本的には問題ありません。基本的にはというのは、源泉ありの特定口座で売買している限り、譲渡益も配当益も分離課税されて申告不要を選択することになるので、「恒常的な収入」に入らないと解されていて、認定基準年間収入にカウントされないからです。

 

特に協会けんぽは基本的にOK。ただし組合健保は組合の規定によるようです。例えば下記の組合健保では、源泉徴収特定口座であっても譲渡収入は恒常的収入とみなす場合があるそうです。

被扶養者に株等の収入がある場合の取扱いについて|新たに被扶養者にしたい|各種届出・申請方法|azbilグループ健康保険組合

 

つまり、株式からの譲渡益・配当益を得ていても、確定申告しなければ認定基準年間収入にはカウントされず、妻の扶養でいつづけられると考えるのが良さそうです。

第3号被保険者のリスクとデメリット 入れてくれるか?

ではリスクやデメリットは何があるでしょうか。妻が働いていたり、親や子どもが働いていて扶養に入れるなら、第3号被保険者は大きなメリットがあります。ただ“扶養に入れてくれるなら”が問題です。

 

扶養に入るは、単なる税務上、社会保険上の数字の話で終わるものではなく、相手からすると「養ってあげる」ことを意味します。FIREに強い理解のある妻ならいいのでしょうが、「夫が無職になったので、私の扶養に入れます」と会社に言うのを嫌がる妻もいるでしょう。親の扶養に入るのも同様です。「せっかく一人前に育て上げたのに、また扶養に入りたいとは何事か!」と思うかもしれません。

 

多分に感情的な部分が絡むので、FIRE計画を立てるなら「扶養に入れてくれる?」って聞いておくことは大事だと思います。

第3号被保険者のリスクとデメリット 運用方法が限定される

もう一つの制約は「認定基準年間収入が、130万円未満」という点です。健康保険もそうですが、これを超えると扶養から外れてしまいます。いや、働いてないし、収入130万円もいかないでしょ? と思うかもしれませんが、下記は確定申告が必要になるため、下手に利益を出せないことになってしまいます。

  • FXやCFD、オプション、先物
  • ビットコインやクラウドファンディング
  • 外国税額控除
  • 配当控除
  • 不動産投資
  • 太陽光投資

もちろん収入が130万円以内に収まるようにすればいいわけですが、まぁ気は使いますね。現実的には、源泉徴収ありの特定口座の運用が主体になると思います。あとはぼくのように、これらの投資は法人で行うという手法でしょうか。

第3号被保険者のリスクとデメリット 制度廃止リスク

そして最大のリスクがこちらです。実は第3号被保険者はそんなに以前からある制度ではなく1985年の年金制度改正で導入されたということなので、まだ38年しか経っていません。当時は専業主婦の“内助の功”に報いたいという思いがあったそうです。

 

しかし、第1号保険者1450万人の半数近い数が第3号として加入しており、今や共働きが当たり前となりつつあります。連合は廃止を訴え、今度こそ廃止されるかもしれません。

president.jp

もちろん、廃止されるまで第3号でいて、その後はその後で考えるという選択肢もあります。

まとめ

というわけで、比較的メリットの大きい第3号被保険者の検討でした。第1号から第3号まで、年金受給額と保険料、制限と条件をざっくりまとめると下記の通り。年金額でいうと、第2号>第3号>第1号 という順になり、保険料だと第3号>第1号>第2号です。相対的に有利な第3号ですが、働いている家族が必要で、その扶養に入れてもらう必要があります。

ではぼくはどうするか? 選択肢としては第1号も第3号も選べる環境ではありますが、ぼくは第2号を選ぼうと思っています。次回は、第2号被保険者の特徴について。

 

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