FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

資産形成にサラリーマンが向かない理由

セミリタイアとは蓄えた資産やその投資によって、給与収入をあてにせずに暮らすスタイルに移行することです。そのためには、相当分の資産を作ることが必須になります。では、どうしたらそれだけの資産を貯められるか? 一番気になるところですよね。

 

kuzyo.hatenablog.com

 

給与の一部を着実に投資に回すこと、節約し生活レベルを上げないこと、 などは一般的に重要なことですが、もう一つ大事な点があります。実はサラリーマンはセミリタイアに向けた資産形成にあまり向かないのです。

 

周りの資産家を見るとサラリーマンがたいへん少ないことに気づきます。資産を築いた人の多くは、土地持ちの大家さんだったり、株式投資で一発当てた人だったり、そして起業した社長だったりします。それらのサラリーマンとの違いはいったいなんでしょうか?

 

それは税金と経費です。

 

サラリーマンの場合、税金は源泉徴収されてしまうので普段ほとんど意識することがありません。さらに、意識したとしても節税の方法はiDecoやふるさと納税などかなり限られています。ところが最も税負担が厳しいのがサラリーマンなのです。

 

  ざっくりとした税率 経費
サラリーマン 累進課税。最大45% なし
不動産投資 累進課税+譲渡税20% あり
株式投資 分離課税 20% なし
会社経営 法人税 23.2%/33.5% たいへんあり

それぞれの状況をざっくりまとめたのが上記の表です。

 

不動産投資は賃料収入こそ累進課税ですが、売却時に利益を得た分は(5年超保有時で)20%の課税しかありません。株式投資は配当も売却益も20%です。ストック・オプションやIPOに伴う自社株売出しも20%で済みます。

 

会社経営の法人税は、所得800万円以下なら23.2%、以上なら33.5%とサラリーマンの累進課税に比べて低く、さらに経費が広く認められているために所得を圧縮することができます。不動産投資などでは複数の法人を作り、1法人あたり所得を800万円以下にするという節税手法がよく知られているくらいです。

 

念のため、サラリーマンの実効税率が20%を超えるのは年収が1500万円を超えたあたりからです。これを聞くと「なんだよ、サラリーマンの税率が一番低いじゃないか!」ともうかもしれません。

 

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※金融庁の実効税率を計算した表

 

しかしこれは所得税と住民税だけを考えた税率です。実際のサラリーマンには年金や健康保険などの社会保険料がかかります。実はこれがかなり大きく、例えば年収1600万円だと年間で165万円もかかります。率にすると10%程度ですね。ちなみに、社会保険料はたいへん複雑なのですが、下記のサイトで簡単なシミュレーションができます。

hokenstory.com

 

この所得税と住民税、そして社会保険料を入れたサラリーマンの実効税率を見ると、なんと年収400万円で20%を超えてくるのです。年収800万では24.5%まで上がります。年収2000万円では34%に達し、経費もほとんど認められないのに法人税を超えてきます。この社会保険料というのは「隠れ税金」だと思うのですが、日本の税率の議論をするときにはここが抜け落ちた話になっていることが多いのが釈然としません。

 

所得税と住民税に社会保険料を入れた場合の個人の実効税率については、下記の『Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて』のp.92に素晴らしい表が乗っています。シミュレーションができるExcelシートも付属していますので、不動産投資に関心のない人でも、税金の観点ではとても参考になると思います。

Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて

Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて

 

 

これが、最初に書いたサラリーマンがセミリタイアに向けた資産形成に向かない理由です。

 

ベストシナリオは、資産形成の土台となる給与水準をできるだけ早く上げること。そして、資産を株式投資や不動産投資に振り向けて増加させること。さらに、無理に出世して給料を伸ばしていくだけの能力があるなら起業も考えること。そんな感じでしょうか。報酬を給与ではなく福利厚生やストックオプションで払うポリシーの企業に勤めるのも、税金の観点ではありだと思います。