投資なんてやったことのない初心者が、資産運用を行うなら何から始めてどうやっていけばいいのでしょうか? 20年ほどの経験をもとに、モデルケースを考えてみました。このケースだと年平均リターンを固く4%とおいて、退職時に6000万円弱の資産を作ることができます。
最初に今回のケースの前提があります。
- 年間70万円程度の投資ができる給与があること(月間で約6万円、賞与が2ヶ月+2ヶ月だと仮定すると4.4万円/月+賞与9万円)
- 自宅購入や自動車購入、結婚資金、子供の学費などはこれとは別に用意すること
月間6万円というとけっこう厳しいように感じますが、賞与を含めて年間70万円というのは、必ずしも難しい額ではないと思います。
最大のコスト、税金を克服する
投資の基本は、長期保有によって安定的な平均リターンを得ていくこと、そしてできる限りコストを抑えることで複利効果を活用することです。よく「投資は、安く買って高く売る」という言葉も聞きますが、これは投機の理論です。長期運用では考える必要はありません。
できる限りコストを抑えるのは、それが複利で効いてくるからです。たった1%のコストでも、それがあるのとないのとでは数十年という長期間では複利効果によって大きな違いが出ます。1991年から2016年の25年についてコスト差がリターンにどれだけ影響を及ぼすかという試算が『インデックス投資は勝者のゲーム』に記載されています。
インデックス投資は勝者のゲーム──株式市場から確実な利益を得る常識的方法 (ウィザードブックシリーズ Vol.263)
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これによると、この期間でコストが最も大きい投資信託(総コスト2.34%)のリターンは632%です。一方で、コストが最も小さい投資信託(総コスト0.91%)の場合855%となります。その差は実に35%。コスト1.5%の差が、25年に渡る複利効果を経ると35%もの違いになってきます。
では、最大のコストは何でしょうか? それは税金です。25年もの投資は複利効果で大きなリターンをもたらします。ところが、その20%を税金で持っていかれるのです。先の前提でいうと、定年までの総投資額が約2700万円なのに対し、利益は3200万円弱。そして利益から600万円もの税金を取られることになります。
幸い日本では、ここ数年で節税のための制度が複数整備されてきました。iDeCoやNISAです。まずはこの制度を最大活用することがスタート地点です。
iDeCoは年間で27万6000円の掛け金を投資できます。つみたてNISAは年間40万円が上限です。この合計額、年間67万6000円が前提となる投資額の根拠となります。iDeCoは掛け金を所得から控除できますので、税率20%として、都度節税できた5万5200円も投資に回します。
投資先商品は国際分散+低コスト
ではiDeCoやつみたてNISAでどんな商品に投資したらいいのでしょうか? 考え方は、投資先としては全世界、その上でできる限り低コストのものを選ぶというものになります。
iDeCoの場合、SBI証券なら「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」(信託報酬0.108%)がありますし、楽天証券なら「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」(信託報酬0.1296%)があります。NISAの場合、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(信託報酬0.15336%)がありますね。
ここ10年くらいは米国株が絶好調でしたし、ここ5年は日本株も上昇しました。しかし20年から30年という長期で見ると、新興国が大きなリターンを出してくる可能性もあります。市況や経済成長を分析する、ということは敢えてせず、世界の株式全部を買うと考えたほうが、リスクも安定し、長期で安定したリターンが得られるでしょう。
次回は、なぜインデックス商品に投資すべきかともう少し考察します。