FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

「長期的には我々はみな死んでいる」景気の変化を投資にどう反映させるか

自分自身もそうなのですが、米中貿易戦争で経済の先行き不安だとか、円高が進んだとか、S&P500が史上最高値だとか、FRBがどこまで利下げをするだとか、経済やマーケットの動きについ、一喜一憂してしまいます。

 

単純に経済とマーケットは面白いんですね。0.5%の金利変化が、債券価格にも影響するし、株価にも波及するし、為替にもインパクトを与えます。なぜこんな影響が連鎖するのかを読み解くのは、自然科学と同様に、たいへん興味をそそるものです。

 

ただし、こと投資家という観点にたてば、実はスタンスはシンプルです。

経済成長の中身を分解する

長期分散投資というスタンスに立つと、それが利益をもたらす根幹は世界経済の成長です。もちろん、世界経済の成長=全企業の利益成長という前提はあります。経済が成長することで、その主たる担い手である企業の利益も成長していくという流れです。

 

そして経済成長を分解して説明するソローモデルでは、下記の3つが要因だと言われています。

  1. 資本
  2. 労働
  3. 技術革新

このうち、「労働」については世界人口が増加しているのだから、全体で見ればプラス要因です。「技術革新」についてはさまざまな計測方法があり、もともとのソローモデルでも、「資本と労働要因に寄らないそのほかの要因」という言い方をしているので、明確な定義はありません。

 

それでも、同じ資本と労働でも、長期的には明らかに生産量は増加しているので、これは技術革新が着実に進んでいると考えるのが普通でしょう。

 

ところが、「資本」の部分は複雑です。政策とは別に、資本とは生産物から消費されずに残ったものが再度投資に回されたものを指すからです。貯蓄率といったりもしますね。

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※参議院 経済のプリズム内「投資、資本と経済成長~経済成長モデルが示唆する関連性~ 」より

 このモデルをシンプルに読むと、消費量が一定であれば、生産が増えれば将来に回る資本が増えるし、生産が減れば資本が減ると読むことができます。ここでいう資本とは、資本ストックのことなので、過去からの蓄積すべてを指します。そのため、単年度でものすごい影響があるわけではないでしょうが、連鎖していくわけです。

 

この資本を円滑に供給するために、金融の意義があります。式に沿って言えば、労働と技術があるところに適切な資本を供給することで、適切な生産が行えるというわけです。

信用創造が金融の本質

資本を必要なところに供給するのが金融だと考えると、不要な人から必要な人にお金を届けるイメージを持ちがちです。確かにそれもありますが、大事な要素が信用創造です。

 

つまり、不要な人から預かった100万円を元にして、10倍の1000万円を貸し出すことを、金融機関(銀行)はやっているわけです。現在のマネーは「信用」に基づいていますから、銀行は新たに900万円を創造してしまいました。これが「信用創造」です。

 

これを行うと、余ったマネーの何倍ものお金を資本として提供できます。好景気のときは、この信用創造が行いやすく、ガンガン資本が提供されます。結果、生産も伸びて、さらに経済が拡大する。こんな正のフィードバックが働くわけです。

 

ところが、信用創造には別の面もあります。借りたお金は返さなければならないという点です。1000万円の借り手は、将来返済しなくてはなりません。つまり、新たに創造された900万円は、ないところから生み出されたわけではなく、信用創造という手法を使って、未来から現在に持ってこられたものなのです。

 

これが意味することは、信用創造による経済拡大は永遠には続かないということです。未来の経済は無限大の大きさではなく、伸び率から逆算して一定の大きさです。未来に返し得る額よりも、借金が増えると、今度は信用創造で膨らんだ経済が逆回転を始めます。

 

この信用(英語でCredit)の拡大と縮小のサイクルを、ヘッジファンドのレイ・ダリオは「債務サイクル」と呼んでいます。

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長期分散投資では、ノイズの影響を除外して考える

経済の話をいくつか書いてきたのは、つまり経済には上がったり下がったりする仕組みが内包されているということを示したかったからです。債務サイクルによる上下動を長期に渡って引いて見れば、労働と技術の向上に伴って、経済全体が増加しているのが見えてきます。

 

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直線のように経済自体は拡大しますが、そこに債務サイクルが入ってくることで、実際は曲線のように波打つというわけです。レイ・ダリオは、大きな波を信用レバレッジの増大と減少のサイクル(75〜100年)、小さな波を短期的な事業の債務サイクル(5〜8年)と呼んでいます。

 

景気動向を気にして投資をするというのは、この債務サイクルを意識するのと同じですね。いってみればノイズです。これをノイズだと思い切ってしまえば、投資にあたって景気も気になりませんし、伴う株価の上下も気にならなくなります。

でも長期では我々はみんな死んでいる

しかし一つ気にしなくてはいけない点もあります。ケインズは、「長期的には我々はみな死んでいる」という言葉を残しました。ケインズの意図はともかく、長期投資においても、これは重要な点です。

 

レイ・ダリオがいうように、大きな波が75〜100年のサイクルで来るなら、長期投資といっても上がるころには死んでいる可能性があるからです。しかも、世界経済はさまざまなショックを乗り越えながらも、ずっと拡大を続けてきました。

 

そして、今、各国政府はお金をジャブジャブばらまき、金利は世界中で過去ないほど落ち込んでいます。つまり、信用創造でいうと末期に近づいており、それでも縮小させないために、どんどん信用創造をやりやすくなるよう政策を進めていると解釈できます。

 

これが意味するのは、「ずっとは保たない」ということですね。リーマンショックどころではない、信用レバレッジのサイクルが逆回転を始める。そのうち。ということだと思います。

 

問題は、それが自分が何歳のときか? です。死ぬ間際なら問題ないでしょう。でも、老後生活に入った瞬間なら目も当てられません。だからといって、早く投資から降りてしまうと、まだまだ拡大を続けるかもしれない波に乗れないことになります。

 

ポイントは、大きな波が75〜100年のサイクルならば、たかだか過去100年程度のデータを元に、「長期投資なら確実に資産が増える」と思い込まないことでしょう。そして、たしかに200年とか300年の長期ならば確実に資産が増えるでしょうが、そのとき自分は死んでいるということです。

 

ではどうするか? 教科書的にいえば現金の比率をしっかり保つということでしょうし、レイ・ダリオ風にいえば金(ゴールド)を持ってヘッジするということ。そして、不動産などの実物資産を組み入れておくということじゃないかと思っています。

 

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