10月2日のISM製造業指数悪化で、米国株が下落しましたね。指標が原因というよりも、伸び切ったゴムが反転する材料をみんな探している感じです。このあとまた何か悪材料が出れば、大きく下落する可能性もあるなぁという感じです。
米国株に引きずられて日本株もなかなか2万2000円を超えられず、ジリジリと動いています。このあとの素直な伸びが期待できない中、高配当株へのシフトを考えているのですが、どんなポートフォリオにするかのヒントになるのが「ダウの犬」戦略です。
ダウの犬戦略とは?
ダウの犬とは英語で「dogs of the Dow」。ダウ組入銘柄から、単純に配当利回りが高い10銘柄を選び、そこに投資するというものです。
提唱者は微妙に不明ですが、マイケル・B・オヒギンズが1991年にその名も「Beating the Dow」という書籍を出しています。翻訳版もKindleで読むことができますが、ぼくは未読です。
コンセプトは逆張りです。配当利回りが低いということは株価が低く、出遅れているということです。多くの場合、株価の低い銘柄は業績不振などのリスクがありますが、これをダウ組入銘柄というフィルターをかけることで、巨大な安定企業から選ぼうという戦略になります。
現在の米国ダウの犬銘柄は、下記の10銘柄になるようです。
- IBM IBM 5.52%
- XOM エクソンモービル 4.81%
- VZ ベライゾン 4.29%
- CVX シェブロン 4.12%
- PFE ファイザー 3.3%
- KO コカ・コーラ 3.29%
- JPM JPモルガン 3.28%
- PG プロクター&ギャンブル 3.12%
- CSCO シスコ 3.05%
- MRK メルク 2.88%
日本版のダウの犬
同じようなコンセプトで日本株を選定したらどうでしょうか? 単純には比較できませんが、日本株は米国以上に株価が低迷しており、配当利回りがたいへん高くなっています。
このコンセプトは、楽天証券のオウンドメディアでも紹介されていました。
やり方はこうです。まずTOPIX Core30銘柄を見ます。東証一部から時価総額や流動性の高い30銘柄をピックアップしたもので、東証が算出しています。毎年10月に見直しされ、2019年の発表は今月の10月30日の予定です。
この30銘柄から、単純に配当利回り上位10社をピックアップしてみましょう。19年の配当予想が発表されているものといないものがありますので、現在の株価を元に19年見込みと18年実績で計算してみます。カッコ内は18年実績に基づく計算です)
- 2914 JT 6.54% (6.37%)
- 7751 キヤノン 5.60%(5.60%)
- 8316 三井住友銀行 4.95%(4.95%)
- 4502 武田薬品 4.95%(4.95%)
- 8058 三菱商事 4.77%(4.77%)
- 8306 三菱UFJ 4.66%(4.10%)
- 8031 三井物産 4.64%(4.64%)
- 8411 みずほ 4.61%(4.61%)
- 9437 NTTドコモ 4.29%(3.93%)
- 7267 ホンダ 4.97%(4.03%)
11位以降は、KDDIやNTT、パナソニック、東京海上、トヨタ、アステラスなどが並びます。なお、ファナックは18年に配当を大きく増やしましたが、19年度は大きく配当を下げるようです。
いずれも米国のダウの犬に比べても、素晴らしい利回りです。ここから銘柄をピックアップしようというものです。
上位の企業:JT
JTは大きく売り込まれている銘柄ですね。喫煙に対する風当たりは強く、過去4年下げ続けています。しかし継続して増配してきており、2012年の年間配当68円に対して、2019年の予想配当は154円と2倍以上になっています。
売上も、一株あたり利益であるEPSも安定していますが、配当は増加しています。つまり配当性向が高まっている形です。業績は安定しているが、株価は下落を続けています。つまり、タバコ業界の今後をどう見るかというのがポイントになりそうです。
JTは国内でのタバコのイメージが強いですが、実は売上の6割は海外タバコ。そして、タバコ事業はたいへん利益率が高いのが特徴です。海外タバコで28.7%、国内タバコでは33.2%に達しています。これが潤沢な資金の出本ですね。
ただし、では海外タバコが伸びているのかというと、そうでもありません。セグメントごとの売上推移は横ばいというか、徐々に減少という形です。
上位企業:キヤノン
キヤノンは業績悪化で営業利益が過去10年でも最低レベルまで落ち込んでいます。株価も大きく下落しました。ただし配当は例年並みを維持する予定で、そのために配当利回りが上がりました。株価は過去5年で最低水準です。
売上は、オフィス機器が5割弱、イメージングシステムが25%です。この2つは12%程度の利益率を持つ2本柱ですが、徐々に売上が減少しているのが厳しいですね。一方で2割に達しつつあるのが産業機器です。これは順調に売上を伸ばしていますが、利益率は8%程度。業績に貢献してくるにはもう少しかかりそうです。
上位銘柄:三井住友銀行
三井住友銀行の株価はそこまで大きく下落しているわけではありません。
業績も、売上は拡大していますが利益は厳しい状況です。19年度は利益4割減の見込みです。まさに低金利政策の影響を受け、また今後の金融業界への不安感から伸び悩んでいる形でしょう。
上位銘柄:武田薬品
武田薬品の株価は過去5年で最低水準です。
大型買収の結果、2020年3月期は、売上は5割増も、利益は赤字転落見込み。しかし配当は例年並みを維持する予定で、そのせいで利回りが増加しています。
赤字の原因は買収関連費用ということなので、一時的な要因。今後業績が持ち直すかは買収事業の成否によるのでしょう。
上位銘柄:三菱商事
三菱商事はコモディティへの投資がメインなので、コモディティ市場に影響を受けます。当期利益の水準も拡大しており、配当も順調に拡大しています。
三菱商事の売上構成は、金属資源の比率が大きいです。さらに天然ガス、石油、などが大きめです。特に金属資源の動向には注目です。
不正デリバティブ取引で345億円の損失というニュースが出ていましたが、まだ業績影響への精査は終わっていないようです。
上位銘柄:三菱UFJ
過去5年の三菱UFJ株価は軟調ですね。
それもそのはず。資金利益および顧客部門の純利益の推移はこうなっています。「底打ち」「マイナストレンドに歯止め」とありますが、悪く言えば低位安定。ここから利益を増やすには、もう一度売上を上昇させるかコストを削減するしかありません。
利益は、ジリジリ下降しつつも9000億円規模を維持しようとしています。
利益を確保する手法としては、コスト削減をメインにおいています。4万3000人程度いる人員を2023年度までに6000名削減です。店舗数も600数店舗から400店舗以下まで削減です。
一方で、株主還元は積極的に行っていく意向です。総還元額は横ばいなのに還元率が上昇しているのは、利益を生み出す力が落ちているということでもあります。
ちなみにCET1比率とは、バーゼル規制IIIで定められたもので、資本金、法定準備金、剰余金などのTier1資本が、リスクアセットの何パーセントあるかを示したものです。金融業界における自己資本比率のようなものですね。国内行の基準は4%ですが、三菱UFJのように海外営業を行う銀行では8%以上が求められます。
要は安定した資本がありますよ、という話です。
上位銘柄:三井物産
三井物産も日本を代表する商社です。直近の四半期では金属やエネルギー関連の売上が大きく、そこが伸びました。
ただし通期計画では、資源・エネルギー以外を伸ばす計画なんですね。
配当も高い規模を維持する見込みです。
指標比較
上位企業の指標を比較してみます。まずPERです。武田のPERが大きく下がってきているのに対し、キヤノンのPERは上昇しています。JTはジリジリと下がっています。キヤノン以外は12倍を切っており、日経平均PERの12.4倍を下回っています。
実績配当利回りでは、全体に上昇です。現在高配当株の各社ですが、JTも2年前は3%台だったのですね。ほぼ各社とも、過去5年間で最大の配当利回りです。
では次回は、どの企業をどんな比率でポートフォリオを組むかを考えてみます。