2020年から、資産の運用を5つのセグメントに分けて把握していきます。株式セグメント、債券セグメント、ヘッジセグメント、オルタナティブセグメント、リアルアセットです。続いてヘッジセグメントの運用方針について、記載しておこうと思います。
目的および基本的性格
モダンポートフォリオ理論によれば、互いに相関がない、または逆相関の資産を組みわわせてポートフォリオを組むことで、リターンを減らさずにリスクを減少させられます。これは資産運用に関わる数少ないフリーランチです。
メインの資産を株式と債券と考えた場合、それらと逆相関に近い値動きをする資産を組み合わせることで、リスクの減少を狙います。また、株式も債券もインフレリスクに弱いという特徴があります。さらに、運営予定の太陽光発電はFIT制度により売り上げリスクがなく、コストも安定しているという投資対象ですが、唯一、売り上げ額が固定であるため、インフレリスクに対応できません。
これらのリスクをヘッジすることが目的です。そのため、ヘッジセグメント自体で想定する期待リターンは0%です。
ただし、暗号資産は金などと比べてもまだ時価総額が小さく、今後のユースケースに広がりとともに、評価が高まっていくと見られます。多くの人が、ブロックチェーンはインターネットに匹敵する発明だと考えており、ブロックチェーンの起源であり王であるBitcoinのポテンシャルは大きいと考えています。
投資対象
主に金地金(インゴット)と暗号資産へ投資します。いずれも現物を基本としますが、今後の状況によっては金ETFや暗号資産連動型ETF(もし出てくれば)なども検討します。
インフレ対策としては、土地や不動産も選択肢になりますが、流動性が低く、固定資産税もかかります。インカムを生んでくれますが、メンテナンスが必要であり、ヘッジ資産というよりも、事業資産の意味あいのほうが強いでしょう。
ヘッジ目的のため、暗号資産の中心はBitcoinとします。ただし、万が一Bitcoinにセキュリティ上の課題が出て暴落した場合に備え、時価総額加重平均に近いかたちで他のアルトコインも保有します。
運用方針
基本的にバイ&ホールドです。ただし、金/暗号資産ともにインカムを産まない資産であるため、比率が2倍以上になった場合は、順次売却し、リバランスを行います。
ただし売却益については、金が総合課税*1、暗号資産が雑所得課税という厳しい税制なので、あまり一気に売却すると税金が多くなります。金の控除枠、雑所得の確定申告不要枠も意識します。
運用口座
金は三菱マテリアルへの預け入れ、暗号資産は各種取引所、ならびにコールドウォレットに保管します。
投資のリスク
金は単体ではインカムを産まない資産のため、時間の経過に伴うキャピタルゲインも期待できません。唯一あるのが、インフレによって通貨価値が毀損した場合に上昇する点です。インフレ懸念がなければ、無駄な資産となる可能性があります。
暗号資産も性格としては金と同様です。ただし、歴史が浅いため、投機に用いられることも多く、価格の乱高下が続いています。本来持つであろう価値よりも低い水準で数年間とどまるリスクがあります。また、暗号をベースとした資産のため、量子コンピュータなどによる暗号が破られるリスク、51%攻撃などによりコンセンサスアルゴリズム自体が崩れるリスク、ハードフォークなどによって複数のコインが乱立し、結局のところ価値に上限がなくなってしまい信任を失うリスクがあります。
投資資産
現在、総資産に対するヘッジセグメントの比率は6.1%となっています。うち、35%が暗号資産、65%が金地金です。
この比率は適切なのでしょうか? 「日本の投資家にとっての 金の最適保有比率」というレポートには、ヒストリカルデータを用いた最適ポートフォリオとして、リターン/ボラティリティが5%/5%の場合は金を2.8%、7%/10%の場合は金を5.4%組み込むのが最適なポートフォリオだと分析しています。
また、ポートフォリオに金を組み込むことの多いロボアドバイザーでは、WealthNaviがリスク許容度に応じて5%〜9.2%、金を組み込みます。
金投資の専門家で推進する立場の人でも、ポートフォリオに金の占める割合は多くても10〜15%と言っています。さらに金よりも暗号資産のほうがボラティリティが大きいため、少額でヘッジ機能を果たすことができます。これを考えると、6%というのは十分な比率だといえると考えています。
金と暗号資産の株式との相関は?
ヘッジを機能させるために重要なのが、株式に対して金/暗号資産の相関がないこと。できれば負の相関を持つことです。2017年末のBitcoin急騰直前からのドル建て価格推移を、Bitcoin、金、S&P500について見てみました。
あまりにBitcoinの値動きが激しすぎて、どんな関係があるのか全く分かりません。Digital Asset Dateが示した、18年6月から19年8月までの、Bitcoin価格と、金およびS&P500との相関係数の推移が次のグラフです(Here’s what bitcoin’s relationship with the stock market and gold looks like over the past 90 days - MarketWatch)。
黃線のBitcoinは4000ドルから1万ドルの間で動きましたが、その間、金との相関係数は−30%から+25%の間で変化してきたことが分かります。またS&P500との相関は、18年末に高まり25%までいったものの、19年の春からは大きく減少し、-30%となっています。
では、19年8月の30日間を取った相関はどうでしょうか。SFOXによる「Correlation between crypto and traditional assets | Source: SFOX」が下記の表です。
まぁちょうど負の相関が出たタイミングで記事にしている感もありますが、見事にBitcoinが株式と負の相関を出しています。そして、Bitcoinとアルトコインの相関は高いままです。
実際のところ、Bitcoinについては市場の評価がまだ固まっておらず、投機的な資産としての意味合いと、ヘッジ資産としての意味合いで揺れ動いているようにも見えます。
暗号資産のポートフォリオ
現在の暗号資産のポートフォリオは下記の通りです。78%をBitcoinが占めており、続いてEthereumが14%となっています。申し訳程度に、LiteCoin2%、Ripple2.7%、BinanceCoin2.4%が入っている感じです。
CoinMarketCapによると、暗号資産全体の時価総額に占める各コインの過去2年間の状況は下記のようになっています。一時期はアルトコインが全体の7割近くに達していましたが、次第にBitcoinドミナンスが拡大してきているのが分かります。
とはいえ、Bitcoinは68%、続いてEthereumが7.5%、Rippleが4.3%、Thetherが2%、BitconCash2%、Litecoin1.4%、EOS1.3%、BinanceCoin1.1%という具合です。ぼくの現在のポートフォリオと比較すると、
- Bitcon 強気
- Ethereum 2倍の強気
- Ripple 弱気
- Thether 保有せず
- BitconCash 保有せず
- Litecoin 強気
- EOS 保有せず
- BinanceCoin 2倍の強気
といったところでしょうか。まぁ1%なのか2%なのかは誤差のようなものですが。
なぜREITを組み込まないのか
ちなみに、流動性を気にするならリアルな不動産ではなく、REITを組み込むという手があります。なぜこのポートフォリオに組み込んでいないのでしょうか。
実は、家族の資産のポートフォリオは日米のREITを中心に構成しており、その総額がぼくの総資産の10%近くに達しています。家計全体の資産で見た場合、REITの比率は実は大きすぎるくらいになっており、そのため敢えて自分のポートフォリオからは外しているわけです。
*1:5年以上保持で、50万円控除、対象額半減にはなります