FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ノンリコースローンの不動産投資のメリット、デメリット

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不動産融資の手法の一つに、「ノンリコースローン」というものがあります。これは、融資を受けた不動産以外に返済義務がないというローンになります。普通は不動産経営に失敗すると、自分の資産から持ち出しで借りたローンを返済しなくてはならないのですが、ノンリコースローンの場合、不動産を差し出せばチャラになるというものです。

例えば、不動産を対象とした場合、返済の原資は対象となる不動産の産み出すキャッシュフローのみを返済原資に限定する。銀行などの貸し手も、借り手に対し、対象の不動産以外の財産をもって返済することを要求できず、不動産運用終了後の不動産売却額が返済金額を下回っていても、それ以上は借り手に請求できない。

ノンリコースローン - Wikipedia

ノンリコースローンの不動産の説明を聞いてきた

日本ではめずらしいノンリコースローンですが、これを扱った投資用マンションの物件があるということで、話を聞いてきました。

 

こちら、首都圏の新築軽量鉄骨のマンションで、話を聞いたのは7戸✕4階建ての大型物件。価格は2億円を超えます。このうち、土地と物件価格の85%をノンリコースローンで融資が出るというものでした。自己資金は15%+諸経費になります。

 

ただし新築ということもあり、それほど有利な物件ではありません。表面利回りは7.4%。ざっと計算すると、5年後の税引前IRRは8.9%、税引後で5.2%です。

 

そしてノンリコースローンだけに、金利は2.5%(5年固定)の35年。ん? 安い金利とは思いませんが、そこまでバカ高ではないですね。鉄骨の耐用年数34年を越える返済期間というのも悪くないです。軽量鉄骨ですが、1F部分だけ鉄の厚みを増やすことで34年にしているそうです。

ノンリコースローンならではのいろいろな条件が

しかし話をいろいろ聞いてみると、さまざまな条件がありました。まず、販売会社が提供するサブリース契約(10%)が必須です。また、火災保険なども金融機関指定のものが必須となります。火災10年、地震5年で計100万超です。賃料の3%を、将来の修繕積立金として別口座に強制的に積み立てる必要もあります。

 

法人での投資も可能ですが、その場合、新設法人か他になんの事業もやっていない法人でないとダメということで、太陽光発電の法人は使えません*1

 

契約締結時に金融機関に払う保証手数料も、通常は10万円くらいのようですが、こちらは融資額の2%。400万円を超える値段になっています。

 

そして当初5年間は、ローン解約時に非常に高額な手数料がかかります。譲渡税が安くなる5年を越えたら、ほぼノーコストで解約はできるようですが、実質的に5年間は持ち続けるという仕組みです。

いったいどんなときにノンリコース?

気になるのは、どんなときにノンリコースとなるかです。つまり、不動産を差し入れることで融資をチャラにできるのはどんなときかですね。こちら、実は借主側の都合ではまったくノンリコースにならないんだそうです。

 

唯一、ノンリコースとなるのは、家賃収入(こちらは保証)からサブリース費用(10%)を除き、修繕積立費用を引いた額が、3ヶ月間マイナスになったときです。つまり、賃貸経営として破綻している状況だと、物件は召し上げられ、ローン残債もチャラとなるわけです。

 

正直、この物件は新築であり、サブリース付きということで周辺相場に比べてもけっこう家賃を抑えたものになっています。それでも35年と期間が長いため、初年度からちゃんとキャッシュフローが出るようになっていて、これがマイナスになるという状況は、自殺者が出たとか火災で全焼してしまったとか、そういうことくらいしか思いつきません。

 

ちなみに火災で全焼した場合はというと、火災保険から建物代は全額出るようですが、「ノンリコースは多分適用にならない」という話でした。ふーむ。

ポイントは5年後の出口戦略

ちょっと気になるリスクはいくつかありますが、少なくとも、当初5年は下手の打ちようがないくらいガチガチです。サブリース前提でキャッシュフローも出るので、まぁ5年は間違いなく想定通りのリターンを生むのでしょう。

 

問題は5年後以降の出口です。

 

新築ですから5年後に売るときは中古です。新築プレミアムで入居していた人も、築5年となると家賃が下がるでしょう。そしていくらで売却できるのか。中古の物件の場合、どのくらいの利回りが出るのかで買い手は考えます。この物件近辺の場合、相場は利回り7.5%程度です。割り戻して売却価格を見ると……*2

 

あらら。これまでに得たキャッシュフローを足し上げても、赤字です。これは厳しい。

 

最初の5年は計画どおりにいくが、残った物件はすぐに売るのは難しい状況ということですね。ブレークイーブンポイントを越えた額で売れるには、少なくとも10年の保有が必要だというのが、ざっくりとした試算でした。ちなみに10年持つと、税引前IRRで10.1%、税引後で6.8%とダメダメではないところまできます。

ノンリコースローンの最大のメリットはなにか?

いったいノンリコースローンのメリットってなんだ? と思ったのですが、ここで、「属性ではなく物件に対して融資する」という基本的な考え方がポイントだということに気づきました。

 

つまり、属性が悪くても買える。これがノンリコースローンのメリットだということです。年収が低い、職業が安定していない、すでに多くの融資を受けていて与信枠がない。こんな場合でも、頭金となる15%の現金さえ用意できれば買えてしまうということです。

 

なるほど、直近の不動産融資の渋さを考えると、欲しいのに融資が引けなくて買えないという人もたくさんいます。そういう人にとっては、キャシュさえあれば85%の融資が引けるこのローンはなかなか面白いものになるのでしょう。

 

なかなか不動産の世界は面白いものです。

 

www.kuzyofire.com

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*1:とはえ一回ローンを組んでしまえば、他の事業もOKということらしいです。いやはや役所的

*2:年間家賃収入が150万円の場合、投資家が表面7.5%の利回りを期待するならば、150万/0.075で2億円ということになります。