2020年のトピックの1つは、Bitcoinの躍進です。2017年の12月に付けた高値、231万円を超えて、12月17日は一時240万円を超えました。ドル建てでも2万3000ドルを超えるなど、3年前を彷彿とさせる上昇を見せました。
さて「怪しい」「本質的価値がない」「投資資産ではない」とずっと言われてきたBitcoinであり仮想通貨ですが、今年の変化は、デジタル・ゴールドとしてインフレヘッジ目的の資産として、企業や機関投資家が買いに回ったことでしょう。
では、このBitcoinや仮想通貨は、現在どのくらいの規模に拡大しているのでしょうか。
Bitcoinの時価総額は44兆円に
下記がBitcoinの時価総額のチャートです。実質的に資産としてのBitcoinは2017年から始まったことが分かります。そして17年末のバブルでいったんのピークを付け、下落したのち、再び上昇。現在は約44兆円まで時価総額が拡大しました。
※ビットコイン(BTC)価格・チャート・時価総額 | CoinMarketCap
Bitcoin価格と時価総額が一致しないのは、Bitcoinにはマイニングによって新たなコインが生み出され、じわじわとインフレが進むからです。現時点で18,574,037BTCが採掘されており、10分に1回のブロック生成で6.25BTCが生み出されます。年間にすると約52560ブロックが生み出され、328,500BTCが追加されます。つまり、インフレ率にすると1.7%というわけです。
このマイニング報酬は4年に一回半減するようアルゴリズムで定められており、2024年にはインフレ率も半減します。どんどんインフレ率が下がっていくというわけです。そして、21,000,000でBitcoinの量は増加しなくなります。すでに88.5%が掘り出されたというわけです。
Bitcoinの時価総額は大きいのか?
では44兆円というBitcoinの時価総額は、他の資産に比べてどうなのでしょうか? リアルなゴールド(金)や、株式市場、また個別の株式と比較してみましょう。
19万7576トンが存在するというゴールド(金)の時価総額が1281兆円で圧倒的です。一方で、東証一部の時価総額は661兆円。Bitcoinの約15倍にあたります。
個別株に目を向けると、Appleの210兆円は別格として、Facebook(80兆円)、アリババ(72兆円)、Tesla(63兆円)あたりになると、Bitcoinの時価総額に近くなってきます。個別株との比較をもう少しクローズアップして見てみましょう。
すでにBitcoinの時価総額は、台湾のTSMCを超えており、国内株式のトップであるトヨタ(25兆円)やソフトバンクG(17兆円)よりも遥かに大きいことが分かります。
Bitcoinを何と比較するべきか
それではBitcoinは何と比較するべきなのでしょうか? 通貨だと考えれば、ドルや円との比較になるかもしれません。ドルのマネーサプライ(M2)は2020年11月時点で、19兆ドル=1957兆円です。円のマネーストック(M3)は1467兆円です。わずか44兆円しかないBitcoinは、まだまだ太刀打ちできないものだということが分かります。
一方で、Bitcoinを「デジタルな金」だと考えると、金の時価総額である1281兆円がベンチマークとして考えられます、Bitcoin価格が今から30倍の6000万円まで上がると主張する人の根拠の一つが、そうすると金の時価総額に並ぶということです。
Bitcoinは価値を産まない財なのか?
以前から「Bitcoinは価値を産まない財」だと言われてきました。企業の株式が利益配分としての配当などを生むのに対して、Bitcoinは何も産まないというわけです。
比較対象がゴールド(金)であればそのとおりです。ゴールドは、保管コストこそかかるものの、保有していると勝手に増えていったりはしません。
ではドルなどの通貨も同様に何も産まないのでしょうか? いや銀行に預ければ金利が得られる。そのとおりですね。金利からインフレ率を引いたものが、実質的にその通貨を保有している価値になります。
Bitcoinのような暗号資産の面白いところは、ゴールドのような低インフレの特徴を持ちつつ、通貨のように流動性に対する需要から、金利が発生することです。簡単に送金することのできないゴールドとは違い、Bitcoinは世界中に低コストで瞬時に送金可能です。結果、ドルなどの通貨と同様に、「借りたい」という需要があり、結果、金利が付きます。
金利はかなりの変動がありますが、Bitcoinの場合で少なくとも3〜8%程度はあると考えられます。大手レンディングサービスのBlockFiでは3〜6%となっており、インフレ率1.7%と比較すると、しっかりと価値を生んでいることが分かります。これはおそらく世の中に送金の利便性や流動性を提供していることに対する価値なのでしょう。
2017年も12月に最高値を付けた後、何度か大きな上下を繰り返し、年が明けての暴落となりました。Bitcoinには、その適正価値を測るための指標が基本的になく、そのために急騰したり、暴落したりします。しかし、長期目線で見れば、デジタル・ゴールド、そして発行量がコントロールされた国のくびきから離れた通貨として、価値を増していくものだと考えています。
唯一、価値がゼロになるとしたら、ブロックチェーンのセキュリティが破られたときでしょうか。しかし、誕生から10年稼働し続けているという実績は思いものがありますし、価値が増すにつれてさらに優秀な人達が開発に関わるようになるでしょう。2021年にむけてまた価格が100万円くらいまで落ちることもあり得るとは思いますが、10年、20年単位で成長を期待して、ストロングホールドです。
ただし、ポートフォリオに占める比率が高くなりすぎたら、リバランスのために一部売却の可能性はあります。