3月の優待クロスでは、一般信用を使わずに制度信用にトライしようとする人もいるでしょう。しかし、最大の難所は制度信用につきものの逆日歩です。この逆日歩は無制限につくわけではなく、最大額が決まっています。この計算方法を。
逆日歩と最高逆日歩
制度信用は一般信用のように在庫がなくなることはないのですが、在庫が逼迫すると逆日歩が付くというデメリットがあります。「売りたい人」がたくさんいると、株式を持っている人から借りてくるコストが高くなるので、そのコストを逆日歩として負担してね、というものです。
問題は逆日歩がいくらになるかが事前に分からないこと。ただし、最高逆日歩といって最大額は分かるようになっています。
最大逆日歩の計算
最高逆日歩は株価によって決まり、日本証券金融株式会社(日証金)が計算法を公開しています。こちらのPDFです。
しかし、コンピュータ化以前に設けられた仕組みによくあるように、テーブル化されています。昔なら計算がたいへんだったので、この表に当てはめてみればすぐに分かってよかったのでしょうが、誰もが電卓を持ってExcelを使える昨今では、逆に不便ですね。
最高逆日歩計算式
しかし、この表を見るとルールがあることが分かります。
- 100円未満を切り上げた株価 ✕ 0.002
これが1株あたりの最高逆日歩になります。ただし、株価500円未満の場合、500円✕ 0.002=1円で固定です。
これは売買単位が100株の場合ですが、昨今ETFなどを除き単位は100株に統一されているので、ほぼこの計算でOKですね。
スプレッドシートで計算する
では、これをスプレッドシートで計算してみましょう。まず、株価はどこかから取得してきます。
続いて、その株価を100円未満切り上げます。切り上げはROUNDUP関数を使います。何桁で切り上げるかを指定できるので、
- ROUNDUP(株価, −2)
として100円未満を切り上げます。
次に、これに0.002を掛けます。この「0.002」は、日証金が公表している逆日歩倍率の中で、(2)の「権利落ち日の前営業日」4倍に相当します。優待クロスを制度信用で行うのは権利落ち日前日ですから、この4倍を使います。
さらに、「注意喚起」(3)が出た場合は4倍ではなく8倍になるので、その場合は0.002を0.004に換えて計算します。
これで1株あたり、1日あたりの最大逆日歩が出ました。ここに逆日歩付与日数を掛けます。2021年3月末は、逆日歩付与日数1日なので変わりませんが、3日とか5日の場合、3や5を掛けて、ポジションを閉じるまでの合計の最大逆日歩の合計が分かるようにします。
これで基本は完了ですが、もう一つ、「株価500円未満の場合1円固定」に対応する必要があります。株価を見て、500円未満なら、「1円」としてあげるのです。ここにはIF文を使います
実際にスプレッドシートに入れる数式は次のようになります。
- =IF ( 株価 > 500, ROUNDUP(株価, -2)✕ 0.002, 1)
これで1株あたり、1日あたりの最高逆日歩が出るということになります。
逆日歩の捉え方
念の為ですが、最高逆日歩は「どんなに株が品薄になっても、これ以上には高くならない」というストッパーのようなものです。実際に最高逆日歩までいくことはマレで、多くの場合、もっと少ない額で確定します。
なお先の計算式を見ると、0.002=0.2%だということが分かります。なので、株価の0.2%を計算すれば、ざっくり最高逆日歩のイメージもつきます。株価1000円銘柄なら、100株あたり最高で200円という感じですね。100株あたりで見れば、表面株価の20%が最高逆日歩というイメージです。
もちろん1日あたりだということには注意が必要ですが。