時価総額第2位の仮想通貨、Ethereumが大きな節目を迎えようとしています。長い時間をかけて進められてきたPoSへの移行、通称The Mergeが9月19日前後に行われる予定です。これによって、大量の電力と機器を必要としたマイニングを必要とするPoWから、保有だけでOKになるPoSに移行する計画です。
ところが、マイナーたちは当然これを良しとせず、Ethereumは本流のPoSだけでなく、PoWバージョンへのハードフォークが起こることが想定されています。
いまはなきEthereum2.0
このPoSへの移行は、以前はEthereum2.0と呼ばれていました。2018年頃に描かれたロードマップです。ところが、Ethereum2.0への移行には数年かかることが判明。期間の長さから、PoWチェーンの研究が改めて進行します。
結果、PoSへの移行に向けては、まずPoSで稼働するチェーンを開発して稼働させるところからスタートしました。これがビーコンチェーンです。Eth2チェーンとも呼ばれます。ただし、ビーコンチェーンにはETHの送金やスマートコントラクトは処理できません。そのため、既存のPoWで動くEthereumのチェーン(Eth1チェーン)が併存して動いています。
ビーコンチェーンはPoSなので、32ETH以上を預ける(ロック)することで、将来的に報酬が得られる形です。
そして、このビーコンチェーン(Eth2)と既存Ethereumチェーン(Eth1)を、統合するのがThe Mergeとなります。
※【レッスン⑥】ビーコンチェーンとシャーディング | 【PoL(ポル)】仮想通貨・ブロックチェーンを基礎から学習するならPoL(ポル)
そして、Ethereum財団は正式にThe Mergeのスケジュールを発表しました。9月10日から20日というのが、その計画です。具体的には、ターミナル合計難易度(TTD)によって決定し、現在の予測では9月15日のUTC7:29、つまり日本時間の16:29の見込みです。
ETHPoWの誕生
さてこのThe Mergeは、Eth1上のトークンからEth2チェーン上のトークンに、Ethereumが変わることを意味します。つまり、ハードフォークなわけです。これまでも、メジャーな仮想通貨はハードフォークを繰り返し、そのたびにトークンは分裂してきました。
BitcoinがBitcoin Cashはじめ複数のトークンに分岐したのは話題になりましたし、Ethereumも、2016年に起きたハッキングThe DAO事件を契機にハードフォークが発生し、Ethereum Classicが誕生しています。
今回も、PoSを維持したい勢力がハードフォークトークンを残す模様で、EHTPoWと呼ばれています。ほぼ全てのメジャーな取引所は、Eth2のトークンをETHとして扱い、ETHPoWについては付与するのかしないのかも含めて、対応がまちまちです。
CoinPostは国内外の取引所のETHPoWの対応状況をまとめています。
ちなみに、このETHPoWはIOUという形ですでに先物が取引されており、価格は約51ドル。Ethereumは2100ドルあたりなので、期待値は低いものの本家の2.5%程度の価値がついています。
この価格がどうなるかは分かりませんが、50ドル程度の価値を維持する可能性もあります。
ETHPoWをノーリスクで手に入れる
ETHPoWを手に入れる方法は簡単で、Ethereumを買って、手元のウォレットで保有するか、ETHPoW付与を約束している取引所に預けることになります。そうすれば、9/15と見込まれるThe Mergeの後、ETHとETHPoWの両方が手に入ることになります。
多くの取引所ユーザーは、ETHPoWを手に入れられない可能性が高いため、ちょっとしたボーナスという感じですね。
ちなみに、このETHPoWをノーリスクで手に入れることもできます。Ethereumの現物を書い、Ethereumの先物を売る(ショート)すればいいのです。いわゆる両建てです。
現物に対してはETHPoWが付与されますが、先物をショートしてもETHPoWを支払う必要はありません。というわけで、このポジションを取れば、ETH価格は完全にヘッジされており、ETHPoWトークンだけを得られるというわけです。2100ドルの投資に対して、50ドルのリターンですから悪くありません。
しかし、世の中そんなうまい話が転がっているとは限りません。8月頭に、ETHの先物は将来価格が現在価格よりも安いバックワーデーションとなりました。通常、ETHの先物は原油などと同様、先高のコンタンゴです。原油など保管コストがかかるわけでもない仮想通貨が、なぜコンタンゴとなるのかはよく分かりませんが、そうなることが多いからそうなっているという感じかもしれません。
ではなぜバックワーデーションになったか? それはこのETHPoWをノーリスクで得ようという投資家が、大量のETH先物をショートした結果、値が下がったと推測されます。
そんなわけで、ETHの先物はちょっと面白い状況です。先物と現物(スポット)の価格差が2%程度ならば、先物をショートすればETHPoWをノーリスクでゲットできます。50ドルの価格を保っているなら、すぐさま売れば、それが利益ですね。さらに、ETHPoWの先物を併せて売ってしまえるなら、この時点で利益は確定です。9/15にETHPoWの現物は手に入るので、値動きは実質的にヘッジされています。
もちろん、The Mergeが失敗する可能性もありますし、ETHPoWがハードフォークしない可能性もあります。まぁその場合、売ったETHPoWの価値がゼロになるので、それがそのまま利益になるわけですけど。
というわけで、BitMEXのアカウントなどを持っているなら、ETHPoWの先物をチェックしてみるのも面白いかもしれません。いずれにせよ、EthereumのPoS移行は、本当に大イベントですね。