FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

AIは過大評価どころではない 今後10年間の状況認識

この数年はAIブームです。特に株式市場では「AIにあらずんば会社にあらず」ってくらい、AI銘柄の評価が高まっています。この状態に対して「投資家はバブルを煽っている。AIなんてExcelにも及ばない」と評価する人もいます。ぼくは、AIはインターネットを超える、人類存続を左右するほどのイノベーションだと見ています。

 

AIは世界に何をもたらすのか?「SITUATIONAL AWARENESS The Decade Ahead」(今後10年間の状況認識)と題したエッセイを簡単に読み解きながら、これからのAIの行く末を占ってみたいと思います。

AIは過大評価?

藤沢数希氏が、AIについて次のようにポストしていました。

ざっくりと世界経済に与えるインパクトを表すと、エクセル=100、ワード=60、Google検索=120、Google翻訳=10ぐらいだとすると、生成AIはいまのところ15ぐらい。これが2、3年で25ぐらいにはなるかも。しかし、投資家は250ぐらいと思ってる。

まぁ著名人だからといって、世の中に起きていることを正確に評価するのは大変難しいことです。逆に、既存のパラダイムの下で一定の成功を収めた人ほど、新たな変化を正しく評価できないことも多々あります。

 

上記の言い方は、字面だけ見るとなるほどと思うところもあります。ExcelやWordは、世界各国の企業はもちろん、学校でもライセンスを買って導入していて、とんでもない売上をあげています。

 

これらがもたらしたイノベーションもすごい内容ですね。コンピュータとはプログラムすることで大量の演算を可能にする道具ですが、プログラミング言語を書かなくても素人がビジネスで必要な計算を可能にしたのがExcel(を代表とするスプレッドシート)だからです。

 

ただ、これらは所詮コンピュータというイノベーションのユースケースの一つに過ぎません。できることは基本的に計算であり、そのユーザーインタフェースを改善したものがExcelだともいえます。プログラムは、基本的にはExcelの上位互換なのです。

 

一方で、生成AIはビジネス的には全然成功しているとは言えません。下記のグラフで示したとおり、ChatGPTは2億人近いユーザーを急速に獲得しましたが、その後伸び悩んでいます。

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生成AIはカンブリア紀にある

生成AIに転機が訪れたのは画像生成のオープンソース、StableDiffuisonが登場した2022年夏です。これは過激な、世界を一変させるテクノロジーだと思ったものです。このとき、すでにGPT-3はリリースされていて、PlayGroundでぼくも使ってみてはいました。

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次のブレイクスルーは、2022年12月のChatGPTです。エンジンはGPT-3ですが、そこに人間の価値基準に沿うような強化学習(RLHF)を施し、チャットUIをまとったことで新たなユースケースとしてブレイクしたのです。

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翌年2023年3月には、GPT-4が登場し、いつの間にか「AIは人間よりも賢い」ことが当たり前の時代に突入しました。

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この頃、AIブームが最高に加熱します。ブームの加熱とはAIを使ったビジネスが世に浸透するというのではなく、AIの活用競争が始まるということです。ここからどんなAIが世に出てくるかは全く分かりません。数多くのAI企業が切磋琢磨して競争する結果、世界を一変するようなとんでもないプロダクトが出てくるのです。

 

現在は、AIにとって、いろいろな生物が爆発的に登場したカンブリア紀にあたり、ここから進化の結果生き残ったものが、世の中を制覇していくのです。

 

そのため、現時点で実際に売上が上がるのは、AIの研究開発に必須のGPUを提供する企業です。そう、まさにNVIDIAです。

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つまり、今の段階で「AIしょぼい」というのは、ドットコム・バブルのさなかに「インターネット企業なんて見掛け倒しだ」というと同じです。確かに多くのドットコム企業は中身がないものでしたし、インターネット用に大量の海底ケーブルが敷設され、バブルの崩壊とともにその価格も暴落しました。でも、あのバブルがあったからこそ、その後のインターネットが花開く萌芽となったのです。

 

AIもまさに同じ段階にあります。この時点でAIを過小評価するのは時期尚早。というより、イノベーションに対して見る目がないなぁと思います。

AIはインターネットどころではない!

ではAIは人類に何をもたらすのでしょうか? 下記は元OpenAIのLeopold Aschenbrennerが5月に書いたコラムです。

situational-awareness.ai

GPT-4による翻訳がこちら。

状況認識:今後の10年
レオポルド・アッシェンブレンナー、2024年6月

未来はサンフランシスコで最初に見えます。

昨年以来、街の話題は100億ドルの計算クラスタから1000億ドル、1兆ドルのクラスタへと移り変わりました。6か月ごとに経営計画のゼロが一つ増えています。舞台裏では、今後10年間に利用可能なすべての電力契約、入手可能なすべての電圧変圧器を確保するための激しい争奪戦が展開されています。アメリカの大企業は、長らく見られなかったアメリカの産業力の大規模動員に何兆ドルもの資金を投じる準備をしています。2020年代の終わりには、アメリカの電力生産は数十パーセント増加し、ペンシルベニア州のシェール油田からネバダ州の太陽光発電所に至るまで、何億ものGPUが稼働していることでしょう。

人工汎用知能(AGI)の競争が始まっています。私たちは考え、推論することができる機械を構築しています。2025年/26年には、これらの機械は多くの大学卒業生を凌駕します。10年の終わりには、あなたや私よりも賢くなっているでしょう。私たちは文字通りの意味での超知能を手に入れることになります。その途中で、半世紀ぶりに見ることのできる国家安全保障の力が解放され、やがて「プロジェクト」が始動します。幸運ならば、私たちは中国共産党との全面的な競争に出るでしょう。不運ならば、全面戦争になるでしょう。

現在、AIについては多くの人が話していますが、何が起ころうとしているのかをわずかにしか理解していない人がほとんどです。Nvidiaのアナリストたちは、2024年がピークに近いかもしれないとまだ考えています。主流の評論家たちは「次の単語を予測するだけ」という意図的な盲目を続けています。彼らはハイプといつものビジネスしか見ておらず、せいぜいインターネット規模の技術変革が起こるかもしれないと思っています。

間もなく、世界は目を覚ますでしょう。しかし今のところ、状況を認識しているのはサンフランシスコとAI研究所にいる数百人の人々だけです。運命の不思議な力によって、私は彼らの中に身を置くことになりました。数年前、これらの人々は狂っていると嘲笑されていましたが、トレンドラインを信じることで、過去数年のAIの進歩を正確に予測することができました。彼らが次の数年についても正しいかどうかはまだ分かりませんが、彼らは非常に賢い人々です。私が今まで出会った中で最も賢い人々であり、この技術を構築しているのは彼らです。彼らが歴史の奇妙な脚注になるか、あるいはシラードやオッペンハイマーやテラーのように歴史に名を残すかはまだ分かりません。彼らが未来をほぼ正確に見ているのであれば、私たちは壮大な冒険に乗り出すことになります。

私たちが見ているものをお話ししましょう。

端的にいえば、今「AIなんてバブルだ」と言っている人たちは、現在のGPT-4の性能を評価してそういっています。そして「AIはインターネットを超えるイノベーションだ」と言っている人たちは、GPT-2からGPT-4へと向かう進化の中で、計算量の増加が一貫して知性の向上につながってきたというトレンドを見ています。

2027年までには、GPT-2からGPT-4へ至る規模のジャンプが再び起こると著者は予想しています。GPT-2からGPT-4に代わり、AIは未就学児から賢い高校生レベルになりました。同じ規模のジャンプが起きたとき、それは博士や最高の専門家を凌駕するレベルになるでしょう。

最近、多くの人がAGIを単に優れたチャットボットなどとして下方定義しているように思える。私が言いたいのは、私や私の友人の仕事を完全に自動化できるAIシステムであり、AIの研究者やエンジニアの仕事を完全にこなせるものだ。

もう一つ、AIの進化はコードの進化ではないという点に注目です。それは演算量に依存し、AIが進化するというのはイコールそれだけ膨大な演算量(と消費電力)が必要だということです。

 

つまり2028年には現在の100倍のデータセンターがAIの学習用に稼働し、2030年にはさらに100倍になります。それは1兆ドル以上のコストがかかり、消費する電力は米国の電力生産の20%以上に達するのです。

つまりGPU需要も高まり続けます。

Nvidiaは昨年、データセンターの売上が年間約140億ドルから 年間約900億ドルへと爆発的に増加し、世界に衝撃を与えた。しかし、それはまだほんの始まりに過ぎない。

NVIDIAのデータセンター向け売上は、このペースのまま拡大を続けるというのが著者の見立てです。

 

ではAIへのこれだけの投資は報われるのでしょうか? つまりAI自体から収益は上げられるのでしょうか? 著者は2026年半ばにはAIからの収益が1000億ドル=15兆円に達すると予想するのです。

 企業は、経済的リターンが正当化されると期待される場合、大規模なAI投資を行うでしょう。
 レポートによると、OpenAIは2023年8月に年間収益10億ドル、2024年2月に年間収益20億ドルを達成したそうです。これは約6ヶ月ごとに倍増していることになります。この傾向が続けば、次世代モデルの大幅な急増を価格に反映させなくても、2024年末から2025年初頭までに年間収益は約100億ドルに達するでしょう。ある推定では、マイクロソフトはすでに約50億ドルのAI収益の増加を達成しているそうです。
 これまでのところ、AI投資を10倍に拡大するたびに、必要なリターンが得られているようです。GPT-3.5はChatGPTブームを引き起こしました。GPT-4クラスターの推定コスト5億ドルは、マイクロソフトとOpenAIの報告された数十億ドルの年間収益で回収されたでしょう(上記の計算を参照)。そして、数十億ドル規模の「2024年クラス」の学習クラスターは、マイクロソフト/OpenAIのAI収益が100億ドル以上の年間収益を達成し続ければ、容易に回収できるでしょう。このブームは投資主導型です。大量のGPUを発注してからクラスターを構築し、モデルを構築して展開するまでには時間がかかり、今日計画されているクラスターは数年先のものです。しかし、前回のGPU発注に対するリターンが引き続き実現されれば、投資は急増し続け(収益を上回り)、次の10倍の投資が引き続き回収できるという賭けに、さらに多くの資本を投入することになるでしょう。
 私が考えるAI収益の重要なマイルストーンは、大手テック企業(Google、Microsoft、Metaなど)がAI(製品とAPI)から1,000億ドルの年間収益を達成するのはいつかということです。これらの企業は現在、1,000億ドルから3,000億ドルの収益を上げていますが、1,000億ドルになれば、事業の非常に大きな部分を占めるようになります。6ヶ月ごとに倍増するというナイーブな外挿では、2025年初頭に100億ドルの収益に達すると仮定すると、2026年半ばにこれが起こることを示唆しています。

あまりに夢見がちな予想だと思いますか? そう思う人は、これまでの半導体の歴史を牽引してきたムーアの法則を思い出し、AIがすでに同様のトレンドに乗っていることを確認してみるといいでしょう。

 

そしてAIがエクスポネンシャルに進化を始めると、もはや人類にはそれを止める力はありません。市場経済は、AIに投資することが最適だという資源配分を行うのです。これはすでにカーツワイル博士によって20年以上前に予言されていました。

ぼくはシンギュラリティを楽しみにしている一人なので、このAIの進化真っ只中にいられることを本当に嬉しく思っています。