FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

Chrome売却回避で急上昇のGoogle でもまだ割安な理由


反トラスト法(独占禁止法)訴訟で、GoogleがWebブラウザChromeの売却を求められていた件で、ワシントンの連邦地裁判事が売却不要という判断を下しました。これに反応し、Google親会社のAlphabetの株価は大きく反応。8%ほど急騰しています。

 

でもまだこの株価は割安。それはなぜでしょうか。Alphabetが持つ強さと矛盾を読み解いてみましょう。

Chromeブラウザ売却回避

9月2日、ワシントンの連邦地裁判事がChromeの売却不要という判断を下しました。この結果、Alphabetの株価は急騰。瞬時に8%ほど上昇したあともジリジリと上がっています。

www.bloomberg.co.jp

ちなみに、併せてAppleの株価も上昇していますが、これは同時に検索エンジンのデフォルト設定を他社に販売する権利も認められたことによるもの。GoogleはiPhoneのデフォルト検索エンジンとなっていますが、これによりAppleに年間訳200億ドル=約3兆円を支払っているとされています。

 

ちなみにAppleのサービス売上は年間1000億ドル規模なので、このGoogleからの逆ライセンス料の大きさが分かります。このディールが継続すれば3兆円の売上も継続するわけで、これに反応してAppleの株価が上がったわけです。

割安のAlphabet

10%近く株価が上昇したとはいえ、実はまだAlphabet株は割安です。1株あたり利益EPSに対して株価が何倍で取引されているのかを示すPERは、割高割安のシンプルな指標として知られています。それを見ると、Alphabet株のPERは株価が上昇しても25倍程度でM7の中で最も低くなっています。

M7の中でダントツの高いPERなのがTesla。これはEVではなくOptimusなど将来のロボティクス事業の価値を反映しています。NVIDIAの株価が割高とよく言われますが、現時点のPERでも48倍。来期の高成長を見込むと、他とさして変わらないPERだといえるのがNVIDIAです。

 

MicrosoftとAmazonのPERの高さは、AI文脈でいうと、AzureとAWSのAI需要の高さだと言えるでしょう。AIはお金の流れでいうと、それを活用しようとする企業がお金をクラウド事業者(Amazon、Microsoft、Google)に支払い、クラウド事業者がNVIDIAにお金を払ってGPUを買うという構造にあるからです。

Alphabetの立ち位置

ではこれらM7の中で、Alphabetはどんな立ち位置にあるのでしょうか。

 

まず、AIチップでいうとNVIDIA一強ですが、GoogleはAIチップTPU(Tensor Processing Unit)を展開していて、特に推論特化ということで、ユニークなポジションを得ています。AIチップというと、AMDのほかスタートアップもいろいろと出てきていますが、NVIDIAに次ぐ第2位は?というとGoogleということになるでしょう。最近では、OpenAIがGoogleのTPUを採用する(Google Cloud経由で利用)というニュースもあり、TPUは良い立ち位置にあります。

 

AIチップを動かすクラウドでは、OpenAIと組んだMicrosoft、Anthropicを中心にオープンソースも利用できるAWS、Geminiを中心としたGoogle Cloudと、3つのクラウドがしのぎを削っています。ここでもGoogleはいいポジションについています。

そしてAIモデル――という点では、現在、OpenAI、Google、Anthropicの3強といえます。そのほかオープンウエイトのMeta(Llama)、アリババ(Qwen)なども高性能ですが、性能でいうとOpenAIとGoogleのGeminiがトップ争いをし、さらにコーディング領域でAnthropicのClaudeがトップシェアにあります。またイーロン・マスクのxAIが開発したGrokなどもトップレベルにあります。

LLM Arena Leaderboard

そしてAIを使ったチャットアプリケーションでは、OpenAIのChatGPTが代名詞といえるほどの圧倒的な認知を誇ります。ただ、Geminiは企業を中心に利用が進み、2番手につけているといえそうです。

 

というわけで、AIチップ、クラウド、AIモデル、チャットアプリと、AIにはさまざまなレイヤーがありますが、いずれのレイヤーでも2位前後に食い込んでいるのがGoogleです。まさに全方位。モデルの評価は用途や人によっていろいろですが、個人的にはGeminiの評価は高く、ジェネラルな用途ではGPT-5より上だと感じています。

なぜAlphabetの株価は安い?

ではAI戦線においてフルラインナップを揃え、それぞれでトップ争いをできるスペックを持つGoogleの株価が安いのはなぜでしょうか? それは一重に、AIの進展がGoogleのメインビジネスである検索を破壊する可能性があるからです。

 

検索する代わりにAIに聞いた――そんな経験をしたり周りから聞いたことのある人は多いでしょう。冒頭に延べたGoogleの独占禁止法裁判において、Appleのサービス担当副社長であるEddy Cue氏は「(Appleの)SafariでのGoogle検索数が史上初めて減少した」と延べました。22年の歴史の中で減少は初めて。これを受けて、Alphabetの株価は8%も急落しました。

www.theverge.com

ネット全体ではGoogleの検索数は伸びており、直近クオーターの検索広告クリック数は前年同期で2%増加したことを明らかにしています。ただ増加はしているものの、これは指標公開以来、最も低い伸び率でした。

 

このように、AIが進展するほど検索というGoogleのビジネスのコアは破壊される。投資家はこれを恐れており、だからこそAlphabet株は低評価なわけです。

AIが破壊するのはデバイスかサービスか

これは古典的なイノベーションのジレンマで、新技術を推進するほど自社のコアビジネスが破壊されるというのがAI開発にあたります。実際、ChatGPT登場前のGoogleは、自社で開発したTransformer技術を世に出すことをしなかったり、AI研究の先端にいながらも推進には積極的ではありませんでした。これはこのようなビジネス面を考えると当然だともいえるでしょう。

 

ただChatGPTがブレイクしたあとの、コードレッド状態のGoogleの追い上げは凄まじいものがあります。Gemini 2.5Proはある意味最強だとぼくは評価していますし、先日公開された画像生成AIであるnano-bananaは、他のすべてを時代遅れにするほどの性能を持っています。

 

実のところ、AIが破壊するのは検索だけではありません。Appleのビジネスの根幹であるスマホもAIが破壊する可能性の高いものです。しかし、コアビジネスを破壊する可能性のあるAIにおいてもトップレベルで走っているGoogleに対し、AppleのAIに関する出遅れは相当な危機感を感じたほうがいいでしょう。Androidが着々とAIを統合し、実際に使われるものになっている中、Appleはまだ効果的なAIの実装ができていません。

そんなわけで、イノベーションのジレンマにありながらも果敢に攻めるGoogleは、ぼくは最終的にはAI競争でも勝利を収めると考えています。特に法人向けのAIについては、ChatGPT Enterpriseがいい線を行っているなか、Geminiの利用も広がっています。本来、ここで強かったのはMicrosoftなのですが、どうにもCoPilotをちゃんと使っている法人は(少なくとも日本では)聞きません。ここもトップ争いをしているのはGoogleだと見ています。

 

大きなリスクはあるものの、この背景を見るとAlphabetのPER水準は割安だとぼくは考えます。また、ポストスマホデバイスであるスマートグラスでトップを走るMetaも、将来のポテンシャルという意味では割安かもしれません。そんなふうにぼくは見ています。

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