セミリタイア入門編も第3弾です。前回、前々回で、セミリタイアの魅力、そして必要な資産規模の見積もり方をまとめました。今回は、そのための資産の作り方を検討します。
必要な資産規模のおさらい
まずはセミリタイアに必要な資産規模のおさらいです。FIREのポイントは、資産からの収入で生きていける状態=経済的事由を達成することです。つまり、生活費が少なければ資産は小さくて済みます。そのため、前回の記事では、残り40年生きると仮定した場合、年間生活費の何倍の資産が必要かを計算しました。
4%での資産運用を前提として、リタイア後、40年生きるためには、現在の生活費の13.8倍が必要というのがざっくりとした計算になります*1。では、これだけの資産をどうやって作るかというのが今回のテーマです。
コツコツ積み立てる王道の場合
以前、1億円をターゲットにした場合の試算を紹介しました。サラリーマンになって20年後、42歳で1億円を達成するには、平均6%運用した場合で毎年270万円の積み立てが必要になります。この試算では、NISAの活用など税金については細かく見ていませんが、270万円を預貯金で貯めると5400万円になりますので、6%運用で1億円に達するというのはなんとなくイメージが湧きますね。
では、生活費の13.8倍の資産を作る場合の計算はどうなるでしょうか? 試算したのが下記です。
これは、貯蓄率が30%の場合、利回り5%で運用すると、生活費の13.8倍を作るのに19.7年が必要だと読み取ります。ここで注目したいのは、貯蓄率が上がれば上がるほど、13.8倍を貯めるのに必要な年月は急速に短くなるということです。
それはそうです。貯蓄が多いほうが早く資産は貯まりますし、貯蓄が多いということはその分生活費が相対的に小さいということだからです。
つまり、節約を重ねて早くから複利で投資すれば、比較的早期にセミリタイア可能な額に達せられるということです。生活費を抑えること。13.8倍を貯めるという意味では、これが非常に重要です。生活費が倍になってしまったら、必要な資産額も倍になるということを忘れてはいけません。
実際には計算はもっとややこしい
もちろん、上記の試算をそのまま鵜呑みにはできませんので注意してください。これは、収入がずっと変わらず、貯蓄比率もずっと同じだという前提で試算したものだからです。
実際には、給料は少しずつでも上がるでしょうし、結婚して家族を持って……となれば、どうしても生活費は上がります。仮に貯蓄比率を維持したとしても、生活費の絶対額が増加していれば、13.8倍に達するまでの時間は長くかかります。それだけ生活費の増加はクリティカルなのです。
かなり余裕を持ったプランとして、年収1000万円をモデルケースとして考えてみましょう。この場合の手取りはだいたい720万円くらいだと言われています。これを全部生活費に回すとすれば、13.8倍は9936万円、つまりだいたい1億円になります。セミリタイア後、年収1000万円クラスの生活を継続したいと思ったら、少なくとも1億円は必要だということです。
そしてこの1億円を貯めるには、下記の年数が必要です。20年で1億円に達するためには、だいたい年間300万円を積み立てて5%運用するということです。
年間720万円を生活費に使いつつ、300万円を貯めるには、手取りで約1000万円が必要。これは年収にすると1600万円クラスです。これはなかなか厳しいでしょう。現実的には生活費を420万円に抑えつつ、年間300万円を貯めるという戦略になります。もちろん、セミリタイア後も生活費は420万円でいいとなれば、必要な資産は6000万円程度になるので、年数か貯蓄額に余裕が出てきます。
アグレッシブな投機という手もあるが……
もちろん、コツコツ貯めるのではなく、一発当てる! という方法もあるにはあります。「サラリーマンが1億円貯める方法」で書いたように、投機的な手法もいくつかあります。実際、リタイアした人の話を聞くと、「個別株があたった」「起業が成功した」という話もよくあるものです。
ただし、これは生存者バイアスがかかっていることには注意です。つまり、たまたまうまく行った人が大儲けしてリタイアしているわけで、その陰には投機に失敗して財産を大きく減らしてしまった人もいるわけです。投機的な手法は基本的にゼロサムゲームのギャンブルに近く、資産を10倍にした人の陰には資産をゼロにしたり半減させてしまった人が何十人といることを忘れてはいけません。
重要なのは生活費を抑えること、しっかり投資を継続すること
いくつかの計算を見てきましたが、基本はシンプルです。できる限り生活費を抑えること。そして投資を継続すること。この2つに尽きます。
ただし、人生は楽しくいきてナンボです。苦しみを伴うような節約を続けるというのは本末転倒ですね。楽しんで節約するか、お金のかからない生き方に楽しさを見出すのが最良です。一方で、高い生活費を賄っても貯蓄できるほど稼ぐという選択肢もありますね。
基本的な資産構築方法がわかったところで、具体的に6%運用を実現するための投資方法に入っていきます。こちらの基本は「分散」です。