FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

法人で証券口座開設 メリットとデメリット、そして税制

これまで個人での株式取引をやってきましたが、そういえばせっかく法人を持っているので、法人名義での株式取引を検討しています。そもそも、法人の銀行口座には現金が眠ったままでいます。いわゆる運転資金ですね。

 

きっちりと将来の入金や出金を管理すれば、ギリギリのやりくりも可能でしょうが、それはさすがにたいへんなので、そこそこ多めの金額を入れているわけです。そして余ったからといって、それをぼくが勝手に引き出して使うことはできません*1

 

この余裕資金をうまく活用できないかというのが今回の発想です。

個人と別に法人名義で取引するメリット

なぜわざわざこんなことをするかというと、法人ならではのメリットがあるからです。

  • 株式投資に関する経費が認められる
  • FXなどのデリバティブと損益通算可能
  • 損益通算可能期間が個人の3年に対して法人は9年程度と長い
  • 受取配当金の20%が益金不算入
  • 個人とは別名義になるため、別途株主優待がもらえる
  • FXでは個人適用のレバレッジ25倍規制がない

一方でデメリットもあります。

  • 税率が分離課税20.315%ではなく、法人税(実効税率約30%)になる
  • 決算がたいへん
  • 投資事業を行っていると、融資を受ける際にネガティブな感じ

これだけ見ると、税率がアップするデメリットが大きく見えますね。しかも、法人で得た利益は、個人に戻すときにさらに個人側で所得税が発生するというデメリットもあります。しかし、やりようによってはメリットもありそうです。

受取配当金の20%が益金不算入とは?

ちょっと面白いのが、配当金に対する税制です。まず、個人の配当は源泉所得税15.315%+住民税5%ですが、法人の場合は次のようになります。

  • 上場株式  源泉所得税 15.315%
  • 非上場株式 源泉所得税 20.42%

そもそも配当源泉税率が低いわけです。もっとも、源泉税で完結する個人とは違い、最終的に支払う税額は法人税率になります。源泉所得税は、それを前払いしているだけなので、別にお得というわけではありませんね。

 

さらに、法人が受け取った配当金は全額収入として法人税の対象になるわけではなく、一部を「不算入」できるというものです。10万円の配当があったら、収入は8万円で計算していいということです。

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受取配当等の益金不算入制度の改正 - EY Japan

10万円の20.315%なら2万315円の税払いですね。ところが8万円の法人税なら、約2万4000円となります。税率は1.5倍の差があったのですが、18%ほど法人のほうが高いくらいになるわけです。しかも、経費を引けることを考えると、もっと差は縮まります。

 

ちなみに益金不算入にならないものもあります。

  • (2)益金不算入の対象とならないもの
  • 外国法人からの配当(外国子会社を除きます)
  • 協同組合等の事業分量分配金
  • 基金利息
  • 保険会社等の契約者配当金
  • 証券投資信託の収益の分配(特定株式投資信託を除きます。)
  • 公社債投資信託の収益の分配
  • 不動産投資信託の収益の分配(いわゆるJ-REITです)

不合理をなくす・・・受取配当金が益金に算入されないワケ | 中小企業の税金と会計 | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

 

さらに、クロス取引をすることを考えてみましょう。

  • 現物を保有 配当の8割が収入(20%益金不算入のため)
  • 信用売保有 配当相当額を支払い、損金

すると、あれれ、キャッシュ的にはプラスマイナスゼロなのに、配当額の2割の損金を作り出すことができます。うーん。こんなシンプルな抜け穴は、きっと塞がれているんでしょうね。ただ、ちょっと検索した限りでは明確な答えがありませんでした。今度税理士に聞いてみようと思います。

 

ちなみに、含み損が出ている現物株式を売却して、同時に買い戻す、いわゆる損出しのクロス取引については、税務上売買をなかったものとして扱うという通達がでています。こういう抜け穴を使う会社が以前あったということなんでしょうね。

www.zaimupartners.jp

そもそもなぜ益金不算入なのか?

さてそもそもなぜ配当の一部は益金不算入なのでしょうか? このヒントは、益金不算入の比率が、持ち株比率によって違うことに見て取れます。

  • 完全子会社(持株比率100%) 全額不算入
  • 関連法人(持株比率33%超)  全額−負債利子を不算入
  • その他(持株比率5%〜33%) 50%不算入
  • 非支配目的株式(5%以下)  20%不算入

つまり配当を出す会社の株式を100%持っていたら、全額不算入となるということです。どういうことか。

 

事業をやっているA社にホールディングスカンパニーB社を作って100%株を持ったとします。最終的な個人株主から見ると、ホールディングスがなければ配当を全額受け取れますが、間にB社を作ると、B社に配当が支払われた時点で課税され、さらにB社が配当を出したときにも課税されることになってしまいます。いわゆる二重課税です。これはおかしいので、A社からB社への配当は益金不算入となるわけです。

 

持株比率が薄まるにつれて、不算入できる比率が減りますが、ものすごく小さくなっても20%は不算入にできるということになっています。

 

ちなみに、こういうロジックなので、全額不算入に関しては配当基準期間の最初から最後まで株を保有していることが条件になります。

優待クロスにはもってこいかも

いずれにしても、法人名義で優待クロスというのは面白い方法な感じがします。法人の数だけ名義を作れるので、100株ずつ複数名義の取得が可能です。譲渡損益についてはクロスなので生まれませんし、売買手数料の分だけ損金になり税金を押し下げます。

 

問題は法人がいただいた優待が収入にあたるのかどうか。個人の場合、自家消費すれば無税ですが、売却などをして現金化した場合、雑所得扱いになるという考え方が基本のようです。では法人の場合はどうなのでしょう。

 

24-2 法人が株主等に対してその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても、法人の利益の有無にかかわらず供与することとしている次に掲げるようなもの(これらのものに代えて他の物品又は金銭の交付を受けることができることとなっている場合における当該物品又は金銭を含む。)は、法人が剰余金又は利益の処分として取り扱わない限り、配当等(法第24条第1項に規定する配当等をいう。以下同じ。)には含まれないものとする。(平19課個2-11、課資3-1、課法9-5、課審4-26改正)

(1) 旅客運送業を営む法人が自己の交通機関を利用させるために交付する株主優待乗車券等
(2) 映画、演劇等の興行業を営む法人が自己の興行場等において上映する映画の鑑賞等をさせるために交付する株主優待入場券等
(3) ホテル、旅館業等を営む法人が自己の施設を利用させるために交付する株主優待施設利用券等
(4) 法人が自己の製品等の値引販売を行うことにより供与する利益
(5) 法人が創業記念、増資記念等に際して交付する記念品
(注) 上記に掲げる配当等に含まれない経済的な利益で個人である株主等が受けるものは、法第35条第1項《雑所得》に規定する雑所得に該当し、配当控除の対象とはならない

法第23条《利子所得》関係|国税庁

 うーん。個人を対象にした優待は雑所得になると明確に書いてありますが、法人が受け取ったものをどう計算するのかは分かりませんね。保守的な税理士ならば、金銭換算できるものはしなさいというかもしれませんが、それは決算上、どうやって売り上げに計上したらいいのでしょう? 領収書とかないし。やっぱり金券ショップで売ったりしない限り、収入に入れないという感じなんでしょうか。

 

今回は法人の証券に関する税制ということで、いろいろ不確定な話がいろいろありました。それぞれあとで税理士に相談してみることにします。

 

先日、楽天証券で法人口座を作った記事を書きましたが、意図はこんな感じです。ただし、信用口座は紙での申請になるので、まだ行っていません。

www.kuzyofire.com

*1:できなくはないですが、法人口座から個人に出金があったら、役員への貸付にあたってしまうかと思うので。