前回は債券ってなんだっけ?ということを見てみました。長々と書きましたが、金利と債券価格は表裏一体にあるということでした。今回は、もう一つの重要な要素であるデュレーションについて。金利感応度などと呼ばれますが、どういうことでしょうか。
債券のパフォーマンスを決めるデュレーション
金利によって債券価格は決まりますが、もう一つ重要なのが、満期までの期間です。 同じ2%の金利のままで、満期まで10年のものと20年のものを比べてみましょう。
このように、同じ利率(ここでは割引率)ならば、長期であるほど現在価値が小さくなります。それはそうですね。元本が返ってくるタイミングがより先になるので、割引が大きくなるからです。
では10年満期の債券と20年満期の債券で、利率(割引率)が変わったらどうなるでしょうか?当然利率が2%から4%に上がったら債券価格は下落します。ところが、どのくらい下落するかは満期までの期間によって異なり、期間が長いほうが大きく下落するのです。
逆に、利率4%が2%に上がったときは逆のことが起きます。期間が長いほうが価格が大きく上昇するのです。
利回りの変化が価格に及ぼす影響は債券残存期間によって変わる
債券の満期までの期間、つまり残存期間によって利率変化が債券価格に及ぼす影響が変わることを確認しました。グラフにすると、下記のようになります。
※第1回 デュレーションとは (その3) - デュレーションってなんだろう | シグマインベストメントスクール
この影響度、感応度をデュレーションといいます。基本的には、利率=金利が1%変わったときに、債券価格が何%変化するかを表しています。正確にはデュレーションにはいろいろな計算方法があるのですが(上記のサイトに計算方法が載っています)、債券ETFでは複数の残存期間の債券を組み合わせるので、それぞれの債券のキャッシュフローを割引債として考えて、その割引債の時価加重平均満期を計算することが多いようです。これをマコーレー・デュレーションといい、平均満期(平均残存期間)なので、単位は年で表されます。
価格変動は直線ではなく曲線なので、正確に計算するには微分して傾きを求める必要がありますが、ざっくりと、
- デュレーションの単位は年で、平均満期期間を表す
- デュレーションが10年の場合、金利が1%動くと債券価格は10%動く
と考えればいいでしょう。
デュレーションとは株でいうリスク(ボラティリティ)
このように、債券価格は金利の変動で動く、そして残存期間が長いほど変動への感応度(デュレーション)が大きくなります。これはいってみれば、株式でいうリスク(ボラティリティ)と同じですね。
下記は、デュレーションの違いによって価格の変動率がどう変わるかを示したものです(配当再投資なし)。いずれも米国債に投資する債券ETFですが、残存期間の違いによってこれだけ値動きが変わります。
- SHV 短期債券 デュレーション1.87年 ボラティリティσ 0.36%
- IEF 中長期債券 デュレーション7.69年 ボラティリティσ 6.44%
- TLT 超長期債券 デュレーション18.84年 ボラティリティσ 14.15%
ひと目でわかるように、デュレーションが小さいほどボラティリティ(いわゆるリスク)が小さく、デュレーションが大きいほどボラティリティが大きくなることが分かります。デュレーションの大小によってハイリスクかローリスクかが変わるわけです。
株式では、市場平均に対してどのくらいの変動率を持つかをベータ(β)という数値で表しますが、デュレーションはこれに近いものだと考えてもいいと思います。注意点としては、高いベータ株式だからといって必ずしも高いリターンを持つわけではないように、デュレーションが大きいからといって必ずしもリターンが高くなるわけではありません。金利の変化がどのくらい債券価格に影響を及ぼすのかの値だということには注意が必要でしょう。