FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

独学で学ぶということ

何かを学ぼうと思ったとき、学校に行ったりするだけでなくネットやSNS、YouTubeなどでも学べるようになりました。でも、ぼくが好きなのはやっぱり書籍です。単に好き嫌いの問題でもありますが、時間当たりの密度でいえば書籍が最も濃密。内容も致命的なものは少なく、古典から最新状況を反映したものまでさまざまそろっています。

 

過去の独学領域を振り返ると共に、どんな書籍が役立ったのか、振り返ってみました。

20代前半——コンピュータとインターネット

ぼくは今40代ですが、この20年ちょっとはまさにコンピュータとインターネットの時代でした。PC/AT互換機が普及し、パソコン通信からインターネットまで一気に世界が変わっていきました。

 

実用書も多い中、ぼくが好きだったのはコンピュータの思想。そう、当時は「コンピュータは世界をどう変えるのか?」ってことが、真面目に議論されていたのです。現在のWebのあり方に大きく影響を与えたといわれる、ヴァネヴァー・ブッシュのメメックスに関する論文「AS WE MAY THINK」なんかが載っているのが、下記の『思想としてのパソコン』です。

当時はまだUNIXのワークステーションでないとインターネットへの接続が難しい時代で、Webページ(ホームページ)を作って、言葉遊びをするプログラムをPerlで書いて公開していたりしました。当時のヤフーの手動ディレクトリに「Cool!」付きで掲載されたときはうれしかったな。

20代半ば——ハードウェア

働き始めてからは仕事がらみでコンピュータのハードウェアにのめり込みました。当時はCPUはじめ、すごい勢いで進化が進む時代で、半年も経てば時代が変わるくらい様変わりしていたものです。当時、Intelと仕事をしなくてはならくて、米国出張のときに必死で読み込んだのが下記の本でした。

いわゆるマイクロアーキテクチャとは何なのか、演算器が何をやっているのか、パイプライン段数がなぜクロック増加につながるのか、なんてことを知りました。なんというかゴリゴリの教科書ですね。当時はNetBurstアーキテクチャのPentium4が出たところで、世の中はひたすら高クロック戦争。当時は10GHzへの到達が予定されていたんですよね。

 

この時、Intelの博物館にマルチコア(100コア)CPUについて書かれた論文があって、なるほど、こんな進化の方向もあるのね、と思ったことを思い出します。

20代後半——ケータイ

CPUやGPUを中心としていた興味の対象が、周辺領域に大きく広がったのがこの頃。当時、Javaが動くケータイ、iモードの503iシリーズが登場し、この頃からケータイの急速な進化が始まります。パソコンの進化を早回しで見るように、ケータイ内部の部品も一気に高度化しました。

 

通信チップの中で組み込みソフトウェアが動いていたものが、アプリケーションプロセッサとして分離していきます。ここではArmベースのCPUが、パソコンのCPUの進化の歴史をなぞるようにさまざまな機能を盛り込んでいきます。音源チップは、FM音源からPCM音源へと進化し、ディスプレイは安価なSTN液晶からTFT液晶へと変わりました。TFTの中身も、次第に低温ポリシリコンなんかが使われていき、解像度の向上と発色の良さを競っていきました。15万画素から500万画素オーバーまで一気に進化したカメラもそうですね。センサーもCMOSからCCDへ、そして再びCMOSへと進化し、レンズの枚数も増加。手ぶれ補正とか、まぁありとあらゆるものが組み込まれました。

 

当時のハードウェアについては、実は書籍を読んだ記憶がありません。組み込みメインで、あまりにニッチだったせいか、書籍化はされなかったのでしょう。代わりに興味を引いたのが、iモードのビジネスモデルでした。iモードといえば、松永真理の『iモード事件』が有名ですが、ぼくが感心したのは事業責任者をやっていた夏野剛の『iモード・ストラテジー』のほうです。ザ・MBAという感じの内容で、松下幸之助や稲盛和夫の経営論とは全く違う現代風の内容が心に響いたものです。

Iモード・ストラテジー

Iモード・ストラテジー

  • 作者:夏野 剛
  • 日経BPコンサルティング
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20代——物理学

もともとSFが好きで、星新一、小松左京、筒井康隆を皮切りに、海外SFではアシモフ、クラーク、ハインラインと、まぁ定番を読んできたのですが、中学生くらいからはハードSFにはまり、『竜の卵』とか『リングワールド』とか『中性子星』とかを愛読していました。となると、当然物理学自体にも興味がわくわけで、タイムマシンとか相対性理論とか量子力学とかの一般向け書籍をむさぼるように読みつつ、最終的にやっぱり宇宙論にたどり着くわけです。

 

宇宙論といえば、コンパクトかつ平易に読める傑作が『ビッグバン宇宙論』。創世神話からプトレマイオス、コペルニクス、ケプラーと来て、アインシュタイン、そして最新の状況へと、歴史をたどりながら、宇宙論について学べる本です。

20代——数学

機械などハードウェアと共に好きなのが抽象的な世界です。その筆頭といえば、数学。といっても専門書を読むのではなく、ポピュラーサイエンス的な数学読み物ばかりではありますが、世の中にはこんな知的好奇心を刺激するものがあるんだ!と知るだけでも、この世界は楽しいものです。

 

先のサイモン・シンは、出世作が『フェルマーの最終定理』とその翌年の『暗号解読』。「3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない」というシンプルな定理が、いかに証明されたかについてまとめたこの本は、まさに数学の面白さを凝縮しています。

 

そして素人数学愛好家の心を離さないのは、やはり数論です。その女王はやはり素数。次の素数はいつ現れるか? といういわゆる素数分布の問題は昔から数学者の頭を悩ませてきました。そして、これに関係するのがリーマン予想です。「リーマンゼータ関数の零点が、負の偶数と、実部が 1/2 の複素数に限られるという予想」というもので、はっきりいって、こっちは何のことやら字面では全く分かりませんが、素数って何よ? というところから始めて、歴史をたどりながらリーマン予想の解説と、最新動向まで追ったのが、『素数の音楽』です。

30代前半——投資理論

30代は投資を始めたこともあって、投資理論の本をたくさん読みました。いろいろな名著に会いましたが、やっぱり総合的に素晴らしいと感じるのは『ウォール街のランダムウォーカー』。投資理論系の本については、下記の記事でもまとめているし、ウォール街のランダムウォーカーについては、12版を再読して随時記事にしているので、割愛します。

www.kuzyofire.com

ウォール街のランダムウォーカーの再読記事。

30代後半——経営論

30代後半には役員に就任したこともあり、マジメに経営関係の本を読みました。経営関係の本は難しくて、多くは2つに大別されます。1つは偉大と呼ばれた経営者が自らの経営に関する考え方を記したもの。もう1つは、ヒアリングや調査を元に成功した経営手法を紹介するものです。

 

前者はよくベストセラーになりますが、どこまで参考になるかは分かりません。業界の年表としては面白いのですが、その経営手法が本当に正しかったのか、効果があったのかはやっぱり分からないのです。2つ目は、『ビジョナリーカンパニー』に代表されるものですが、こちらも当時の流行を追いかけることになることが多く、普遍的な内容とは言えないことがあります。

 

そんな中で、これは良かったという本を3冊ほど。一つはドラッカーの『マネジメント』です。この本は、経営に携わる人の共通的な教養という側面があって、お互いに会話するためのコトバを提供してくれます。「企業の目的は顧客の創造である」といった、マネジメントとは何かの共通理解をもたらしてくれます。

2つ目は『キャズム』。ハイテク企業の経営は、これまでの経営とは違うところが1つあって、その大きな点がどうやってキャズムを超えるか? ということです。こちらと『イノベーションのジレンマ』が、大きく成長する、イノベーションを起こす上での古典的バイブルといえるでしょう。投資においても、特にグロース企業に投資するなら、この視点は抜かしてはいけません。

3冊目は、経営論とはちょっと違うかもしれないのですが、『コンテナ物語』。すごい発明をして、それが広まると世界が一変する——なんてことを思いがちですが、実は「規格の共通化」が、海運を変え、陸運を変え、それが輸送コストを劇的に落とし、これによって輸出入が増加し、いわゆるグローバル経済を作り上げたという本です。一言では言い表せない、さまざまな示唆に富む本です。

40代——経済

昔から経済にはボンヤリと興味があったのですが、まとまって学び始めたのは40代に入ってから。経済の本って、時流を解説するものが多くて、なんとなくボンヤリとは分かっても、やっぱり体系的に学ばないとその本質がつかめず、考え方のベースができません。『マンキュー経済学』みたいな教科書にも手を出したのですが、あまりにオーソドックス過ぎてツライ。そんな中、出会ったのが『現代経済学の直観的方法』です。

この筆者、経済学のセンセイではなく物理学出身の在野の研究者なのですが、だからこそというか、経済の本質がよく分かる。もちろん、俗流経済学の面もあって、頭から鵜呑みにはできないのですが、一つの視座を与えてくれる本でした。

 

あとは良く読んだ経済学の著者としてポール・クルーグマン。彼は主流派の一人ではありますが、やっぱり偏りはあって、いやはや経済学というのはどの視点から見るかで全然光景が違うんだな、というのを感じさせます。大部ですが『21世紀の資本』も気づきの多い本。「r>g」だけを解説した本だと思っているならもったいないですね。

40代——金融

経済と並んで2010年くらいから感心を寄せているのが金融です。既存の金融の仕組みだけでなく、ブレイクスルーの兆しとなる仮想通貨にもっぱら関心を寄せています。金融というと、何やら難しそうな響きの言葉なのですが、要は「借金をするシステム」のことを指します。

 

借金によって、現在お金がない人でもお金を集めて事業にチャレンジにできるようになり、個人であればお金を貯めなくても家や車を買えるようになる。国であれば、現在お金がなくても借金をすることで、公的な支出が可能になるわけです。

 

この借金は、一定の期間と利息を約束して全額を返還する債務(Debt)もあれば、無期限で利息の約束もない代わりに、上手くいった場合のリターンは青天井で、使い道に口を出すこともできる資本(Equity)に大きく分かれます。投資家の観点でいえば、債務としてお金を貸し出す社債や国債もあれば、株式という形でお金を出す方法もあって、それぞれリスクとリターンが異なるわけです。

 

この金融をスムーズに行うことが、資本主義の根幹であり、経済発展を驚異的に早めたポイントだったといわれています。そして金融には、リスクを正確に測る方法が重要であり、またスムーズにお金を移動させる手段も重要です。リスクを正確に測るために、企業は四半期決算を行い結果を公表しますし、企業監査や取締役会で、経営者が株主や債権者をだましていないかチェックしているわけです。

 

お金を移動させるほうは、金融の世界では早くから電子化が進んでいたので、実態としてのお札や株券をやりとりすることなく、データの書換でだいたいなんでも済むようになっています。しかし、それでもシステムの手続きにはまだまだ紙が残っていて、人が手作業で行っています。さらに、送金には複数の銀行が関与し、銀行というのは預かったものを貸出に回してしまうので、お金が本当に安全に保管されているのかは銀行を信頼するしかありませんでした。

 

この「銀行への信頼」を必要とせず、アルゴリズムへの信頼だけで、送金や手続きが可能になったのが仮想通貨です。当初は、ブロックチェーンの仕組みというテクノロジーに関心が集まったものの、金融の世界においても大きな革新であることを教えてくれたのが、下記の野口悠紀雄氏の本でした。

仮想通貨革命

仮想通貨革命

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40台——政治

これまでぼくは「小さな政府」と「各人の自由」を信奉するリバタリアンだったのですが、これに対して考えるきっかけとなったのがコロナ禍です。

 

コロナの封じ込めにおいては、政府が強権を発揮して外出を禁止したり、経済活動の一時停止を命じることが最も簡単な方法です。中国を筆頭に、世界各国はそれを実行しました。ところが、日本は法的整備が整っておらず、「自粛をお願いする」という日本語としておかしな対応しか取れませんでした。

 

結果的に現在コロナは収束していますが、このあと来るであろう第6波においてどう対応すべきかは、日本人として考えなくてはなりません。

 

そしてワクチンを米英から譲ってもらって確保せざるを得なかったことも衝撃でした。ロシアや中国など、先進各国は自国でワクチンを開発、製造しましたが、結局日本は外国製ワクチンに頼らざるを得ませんでした。こちらも結果的には他国を上回る接種率に達したわけですが、自国だけでワクチンを開発、製造できないという状況をどう考えるか。これは技術力なのか、それとも厚労省の課題なのか。

 

グローバル化した世界においては、各国は分業すればよく、必要なものは他国から買ってくればいいと素朴に考えていたのですが、なるほどコロナ禍のような準戦争状態においては、自国で用意できるかどうかは生死に関わるものだと感じたわけです。

 

同様の話がエネルギー政策にもいえます。東日本大震災で原発が停止し、火力で当座を凌ぐとともに、再エネを推進してきた日本ですが、FITは国民負担が大きいという理由からせっかくここまで増えた太陽光発電についても逆風の兆しがあります。

 

さらには北朝鮮、中国といった軍備を急拡大する国がすぐそばにあります。両国とも日本と政治的には友好国とはいえず、コロナ以上にこれらの国々とどう向き合っていくかは大きな課題です。また、COP26で世界が脱炭素に向かう中、日本のエネルギー政策をどうしていくのかも、考える必要があります。

 

こうしたことを考えると、少子高齢化や財政問題といった経済政策や、LGBT夫婦別姓などの人権問題は政党間の論点になりにくく、憲法改正や原発などに国民の関心が向くのもよく分かります。それでも、コロナ禍でタガが外れた財政規律を、どこでどう戻していくのかは、個人的には長期の日本がどうあるかにかかわる重要な問題だと考えるわけです。

 

経済政策はともかくとして、国がどういう役割を果たすべきかについては、自分の考えをアップデートしていかなくてはなりません。リバタリアンとしても、国防については国家の役割を否定する人はまずいないでしょう。テクニカルには憲法改正に反対する人でも、自衛隊はいらないとは言わないでしょう。エネルギーや食料の自給体制についても、真剣に考えなくてはいけないなと思ったわけです。

 

そんなわけで、今更ながら政治に関心が向いてきたわけですが、それを理解できる良書にはまだ出会えていません。下記が、日本の政治家がどういう行動原理で動いているのかを知る上で、なかなか面白かったのですが、もっと本質的なことを知るにはどんな本がいいか。どなたか教えてください。