FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ふるさと納税を「したくない」心理

先日、ちきりんのVoicyで、ふるさと納税について3回連続で話をしていました。そうそう、と思うところしきりで、何かというと、「ふるさと納税に否定的な人」ってけっこういるよね、という話です。

ふるさと納税の利用率は10.8%

SNSの株クラとかにいると、ふるさと納税をやるのはマストで、やらないのは情弱だ!くらいの発言を見ることがしばしばですが、実際に周りの人に話を聞くと、「ふるさと納税やってません」という人がけっこういるものです。

 

総務省調査によると、ふるさと納税件数と額は急速に増加していて、2020年度で3488万件、6724億円にのぼっています。それぞれ対年前で約1.5倍とけっこうな伸び率です。これによって、2021年の課税から控除された人数は552万人にのぼります。

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けっこうな人数ではありますが、実は比率としてはそれほど多くはありません。個人の住民税の納税義務者は約5100万人なので、ふるさと納税の利用率は10.8%に過ぎないのです。

 

実に10人に1人しか利用していないふるさと納税。ではその理由はなんなのでしょうか?

なぜふるさと納税を利用しないのか

ちきりんは、ふるさと納税を行わない人がいる理由として、いくつか挙げています。

  1. そもそも知らない
  2. 単に面倒
  3. お礼の品を受け取るのが面倒
  4. ふるさと納税の趣旨に賛同できない

(1)と(2)は意外と多いでしょう。特に、ふるさと納税は当初確定申告が必須だったので、面倒さのハードルはかなり高いものでした。その後、ワンストップ納税制度が始まって確定申告不要でも利用可能になりましたが、これを「知らない」という人も多いと思います。

 

(3)は意外な盲点です。が、実はぼくの家庭でも同じことを言われていました。どういうことかというと、ふるさと納税のお礼の品は、通販とは違い、いつ届くかを指定できないのです。そのため、一人暮らしだったり留守がちだったりすると、うまく受け取れない可能性があります。こうなると生鮮食品などはなかなか頼みにくいというわけです。

 

 ぼくの例でいうと、同時期に冷凍系の品物が集中してやってきて、冷凍庫に入らないという事件がたびたび起こっています。厳密な日付指定ができないのは、単に自治体側のサービスレベルがそこに達していないということだと思いますが、これが足を引っ張っています。

 

そして最大の問題は(4)です。

ふるさと納税の影響

ふるさと納税は、自分が住む自治体から、指定した自治体に住民税の一部の納め先を変更する制度です。このとき、ぜひ指定を受けたい自治体が「お礼の品」を提供することで納税誘致を図りました。本来は、自分の生まれ育ったふるさとなどに納税先を変更できる制度だったのですが、このお礼の品によって、あたかも「2000円だけで、お礼の品が毎年もらえる制度」と捉えられるようになってしまったわけです。

 

このことで、さまざまな弊害も生まれています。高額納税者が多い港区、世田谷区では、ふるさと納税制度によって5%近い税収減になっているといいます。

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一方で、これらのお金がお礼の品を出してふるさと納税を受け入れた自治体にそのまま回るかというと、必ずしもそうではありません。その3割はお礼の品自体にいくからです。

 

このことで、さまざまな不合理が発生します。例えばお礼の品に選定された企業は、売上が倍増し、7割、8割がふるさと納税がらみになるのだそうです。まさにふるさと納税バブルです。となると、地場企業にとっては良いものを作るとかうまいマーケティングをするのではなく、役所に働きかけて自分のところの品物をふるさと納税に採用してもらうことが最も売上増に効果的となってしまいます。これは「歪み」だと、ちきりんは指摘しています。

ふるさと納税の趣旨に賛同できない

こうした点もあってか、ふるさと納税制度自体に反対という人は、実はけっこういます。制度自体を知っていて、面倒だとも思っていないが、制度自体に反対なので使わないというのです。

 

ぼくの周りでも、「あんなのはダメな制度だ」と言っている社長とかがたまにいます。考え方がいろいろですが、お得な制度で、合法的に節税でき、経済合理的にはやらなきゃ損でも、フェアではない、倫理的におかしい、自治体財政を破壊すると考える人もけっこう多いということです。

 

実は、自分が住んでいる自治体にふるさと納税を行うこともできます。これは行っても行わなくても税金の払い先は同じなのですが、違う点が2つあります。1つは、お礼の品はもらえないということ。そして2つ目は税金の使い道を指定できるという点です。

 

ふるさと納税をするとき、使い道の選択肢が出てきます。これは単なるアンケートではなく、実際にこの選択に応じて集めたお金が使われるということになっています。趣旨に賛同できないので、自分の住んでいる自治体に納税はする。ただし、その使い道は指定したい。そういう人もけっこう増えているようです。

 

下記は港区のふるさと納税制度。「返礼品によらず、寄付者自身が寄付の使い道を選び、区の取り組みを応援する制度」としています。

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ふるさと納税の倫理性

まぁマクロな観点で見た場合、ふるさと納税は当初の趣旨から外れた制度になってしまったことは間違いないでしょう。ただ、こういう制度が存在して、運用されているという現実を踏まえると、それは国民がふるさと納税の意義を認めたということでもあります。

 

つまり、住民税というのは住んでいるところに払うのが当たり前なのではなく、各自治体が知恵を出して競争して、国民に選んでもらうものだという価値観への転換です。お礼の品などでうまく国民の関心をひけた自治体は凄まじい額の寄付金を集めましたし、それができていない、ある意味知恵を出せないところは減少に苦しんでいます。

 

アダムスミス的な、神の見えざる手観に従えば、こういう制度の存続が是ならば、各自が自分の損得に基づいて行動すれば、自然と適切な均衡点に達するという見方もできます。それが自由経済のあり方の基本です。

 

税金という概念に自由経済が馴染むのかという大きな問題はありますが、それを国民は是としたというのがふるさと納税なんじゃないかと思っています。

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