年末恒例の読書報告です。2022年は40冊とけっこう読んだ本が少ない年でしたが、23年も46冊と、かなり読書数が減りました。年内最後のブログ投稿は、旅行中ということもあって予約投稿にて♪
- たぶんゲームとマンガ
- 読んだ本のざっとした紹介
- 「日本一わかりやすい ひとり社長の節税」
- 『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』
- 『教養としての社会保障』
- 『孤独の宰相』
- はじめての
たぶんゲームとマンガ
たぶん読書冊数が減ったのは、ゲームとマンガが理由です。ゲームというのはスプラ3で、マンガというのは昨今流行りの縦型スクロールマンガ。それにけっこうハマりました。Kindleでもマンガをけっこう読みましたが、冊数にはそれらはカウントしていません。
読んだ本のざっとした紹介
そういえば、2023年は年初に「おすすめ本紹介シリーズ」をやりました。ただその後の書評は少なめです。
そのほかに特に投資関係に近い本として下記の書評を書きました。
それ以外に読んだ本から、何冊かミニレビューをお届けします。
「日本一わかりやすい ひとり社長の節税」
まずはこちら。YouTuber税理士が書いた「日本一わかりやすい ひとり社長の節税」です。これ、一人社長に特化しているところが素晴らしい。さらにYouTuberなだけあって、しっかり内容を噛み砕いて書かれています。普通の税理士が書いた教科書のような内容とは違うところが、本書の売りです。
この本は年初くらいに買ったのですが、完全FIRE後の節税設計においていろいろと参考になりました。今年はサラリーマンから、法人経営者+個人事業主へと変化し、税金の取り扱いが大きく変わったので、投資というよりもそこに意識をフォーカスしてきました。それにフィットした一冊です。
『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』
続いてはビル・ゲイツの『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』です。まさに地球温暖化に気づいたビジネスマンが、何ができるか? と考えられる一冊です。
まず数字で考えようとビル・ゲイツはいいます。二酸化炭素換算の温室効果ガスの年間排出量は510億トンです。優れたビジネスマンの常として、この数字をどれだけ減らせるかで考えることが重要。ビル・ゲイツは温暖化対策技術を開発する企業に投資を行っていますが、少なくとも1%の削減が見込めないところには資金を供給しないといいます。
さて下記が510億トンの内訳です。
- ものを作る(セメント、鋼鉄、プラスティック) 31%
- 電気を使う 27%
- ものを育てる(植物・動物) 19%
- 移動する(飛行機、自動車、船) 16%
- 冷やしたり温めたりする(冷暖房・冷蔵) 7%
これを見ると、再生可能エネルギーがどれだけ温暖化に貢献できるか、EVがどれだけの意味があるのかというのが具体的に見えてきます。
また世界でどれだけの電力が必要とされているかも、数字で把握することが重要です。
- 世界 5000ギガワット
- アメリカ 1000ギガワット
- 中規模都市 1ギガワット
- 小さな町 1メガワット
- 平均的米国家庭1キロワット
地球温暖化の話は、「少しの取り組みでもみんなが関心を持つことが重要」という感情論の話がけっこう出回っています。確かにこれは間違いではありません。特に著名人が関心を寄せることで、周りの多くの人が感化されれば、その効果は大きくなるからです。
でも、本質的には限られたリソース時間で取り組むプロジェクトなのだから、最も費用対効果が大きいことに注力すべきです。それは取り組みを数字で把握することであり、投資に見合う効果があるかを計測することです。そうでないと、「地球環境にいいことしたね」という満足感だけが残って、実際の効果が生まれないからです。
あなたにできる最も効果的なことは、自分自身の炭素排出を減らすことではない。みんなが炭素ゼロの代替物を望んでいて、それにお金を払う意思があるというシグナルを市場に送ることだ。普通よりも高いお金を出して電気自動車、ヒートポンプ、植物由来のハンバーガーを買うときには、「これには市場があります。買います」と言っているわけだ。それなりの数の人が同じシグナルを送ったら、企業はそれに反応する。
また、「ジオエンジニアリング」という言葉も知りました。これは要するに科学的な気候改変です。
直径わずか数十万分の一ミリメートルの非常に細かい粒子を大気の上層にまく方法だ。科学者は、こうした粒子が太陽光を散乱させて気温を下げることを知っている。
(略)
太陽光を一パーセント減らすには、地球の一〇パーセントを覆う雲を一〇パーセント白色化すればいいだけだ。
これがいかに危険な取り組みかは、ちょっと考えればよく分かります。ただ、温室効果ガスゼロ(ビル・ゲイツはこれが必須だと考えています)どころか、増加を食い止めることさえ難しい現状を見ると、ジオエンジニアリングしか残された手段はないのかも……とさえも感じるのです。
『教養としての社会保障』
続いて『教養としての社会保障』。こちらは厚生労働省のエリート官僚が、社会保障はどうあるべきかという個人的な提言も含んで、日本の社会保障を解説した一冊です。
昨今、社会保障は大きな問題であり続けています。そりゃそうです。年間の国家予算が約100兆円なのに対し、年間社会保障費給付は138兆円(2021年)。2025年には150兆円となる見込みだからです。
この本で印象的だったのは、日本の経済を活性化させるためには社会保障の充実が重要だという論を展開していることです。日本の富のほとんどは、現在高齢者が保有しています。これを子育て世代に移転できたら日本経済は活発化します。ただ、それを増税で富の移転を行うのは難しいのは誰でも分かります。ではどうするか。
筆者は、高齢者が使い切れないほどのお金を貯め込むのは、将来の医療と年金に対する不安があるから……だといいます。この社会保障への不安が解消されれば、お金は現役世代にめぐり、経済は活性化するだろうと。はてな?と思うところもなくはありませんが、論としては一定の納得感もある話でした。
『孤独の宰相』
今になって復活待望論も出てくる菅義偉元首相。その生い立ちから総理の座を降りるまでを、総理番だった記者が振り返ります。
僕が感じた菅義偉とは、日本のグランドデザインを描く人というよりも、日本の細かな課題についてヒアリングして、スピーディーに解決策を実現していく実務家だったというものです。だから菅氏の功績には、そのときには一見困った人を助けたように見えて、後でいろいろなバランスを崩してしまう取り組みばかりです。例えば携帯料金引き下げ、例えばふるさと納税。いま菅氏が主張しているライドシェアも同じような匂いがします。
はじめての
こちらは文芸。4人の直木賞作家が「はじめての」をテーマに短編小説を書き、それをYOASOBIが歌にするというものです。
この中で、最も心に響いたのが宮部みゆきの『色違いのトランプ』。YOASOBIの曲は「セブンティーン」です。
この中で、主人公はなんとテロリストなんですよ。そしてなんというか、比較的テロリストに好意的に描いている。人物としても魅力的だし、ストーリーとしてもこういう政府に対しては、テロしか対応する手段がないようにも感じられる。
同時多発テロの頃、テロリストというのは悪の権化でしたが、昨今のイスラエル・ハラスの戦いを見ていると、テロしか為す術がない人が、世界にはいるんだなぁということを徒然と思ったりします。そういえば韓国では、日本支配と戦うテロリストは英雄だったとか。伊藤博文を暗殺した安重根とか。
考えてみれば、日本はテロによる被害とは無縁の国でした。そしてちょっと著名人が煽れば、テロリスト志望者がどんどん出てきてもおかしくないなという恐怖が一つ。もう一つが、独裁国家みたいなどうしようもない国に対して、国民が立ち上がるとしたら結局テロしかないのかもしれないという諦めにも似た気持ち。そんなことをふわふわと感じる短編でした。