自民党総裁選挙は前評判を覆し、まさかの高市早苗氏が総裁となりました。これまでの石破政権の政策を引き継ぐを見られた小泉氏に対し、いろいろ変えてくる方向の高市氏。前評判は小泉氏有利だったため、サプライズとみなした市場は大きく反応しました。さて、経済にはどんな影響があり、投資家は何に気をつければいいのでしょうか。
サナエノミスクのポイント
高市氏の経済政策はサナエノミスクと呼ばれます。そのポイントは3つ。
- 積極的な財政政策
- 緩和的な金融政策
- 経済安全保障を中核とする成長戦略
積極的な財政政策とは、要するに国債を発行し借金をして政府支出を増やすということ。2%の物価安定目標が達成されるまで基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を一時的に凍結するというものです。
緩和的な金融政策としては、金融引き締めに反対しています。過去には日銀の利上げに対して「愚か」と評したこともあり、政策金利を上げず、金融緩和を続ける意向です。
経済安全保障を中核とする成長戦略は、高市氏の政策の核心です。AI、半導体、ペロブスカイト・全固体電池、デジタル、量子、核融合、合成生物学・バイオ等、経済安全保障分野への積極投資を掲げています。ここは、成長分野を市場に委ねるという考え方ではなく、政府が公的資源やリソースを積極投入することで「勝ち組」を養成しようというスタンスです。
緩和政策期待で日経平均は暴騰
政府が各分野に積極支出し、かつ金利を抑えて緩和を進めるということは、株高につながります。AI、半導体、ペロブスカイト・全固体電池、デジタル、量子、核融合、合成生物学・バイオ関係は、ダイレクトに高市銘柄として買われる形。
日経平均は週明け月曜日から大いに買われました。4万5600円→4万7600円と2000円高まで上がり、さらに場中も上昇、本日7日も4万3800円まで上昇しました。

金利はスティープ化
一方、金利はというと、まず日銀の利上げが遠のくという見方から、2年債利回りは下落。一方で、積極財政による円の信任低下、将来の財政にツケを残すということで長期金利は上昇しました。つまり、イールドカーブは角度が立ったスティープ化しました。

為替は円安に
緩和的な政策ということで、日米金利差の縮小ペースが落ちるということから、為替も円が売られ、円安に。久しぶりに150円を超えました。そして7日も円の下落が継続しています。

短期的なインフレ対策
サナエノミスクのインフレへの考え方は、コストプッシュインフレとデマンドプルインフレを分けて対応するというものです。現在、日本は世界の中でもけっこうなインフレ状態にありますが、これは輸入品の値上がりによるコストプッシュインフレだというのがサナエノミスクとしての見方。一方で、需要の増加による望ましいという意味でのデマンドプルインフレにはまだ至っていないという考え方です。
そのため、コストプッシュインフレへの短期的な対応策として、国民負担を軽減する策を採ります。
- ガソリン減税
- 中小企業、農林水産業支援 地方向け交付金拡充で対応
- 医療介護サービスの賃上げ 診療報酬や介護報酬を早期に引き上げ、賃上げを支援
また内需はまだ弱く、持続的なインフレに至っていないというスタンスから、日銀には緩和継続を求めると見られています。
ただし、金融緩和&積極財政というのは、アベノミクスがそうであったように自然と円安となり、それによってさらにコストプッシュインフレが強化される流れになります。さらに国債発行によって債務残高はさらに積み上がり、財政的には将来にツケを残すことになるでしょう。
短期的にはバブル
このように、金利は抑え込まれ、為替は円高、株価は上がりと、投資家にとってはアベノミクスの再来というような政策がサナエノミスクだといえそうです。
一方で、ただし、金融緩和&積極財政というのは、アベノミクスがそうであったように自然と円安となり、それによってさらにコストプッシュインフレが強化される流れになります。このインフレへの対策として、さらに補助金と減税が行われるわけですが、それはさらに日本の財政を痛めつけ、円安と長期金利上昇へとつながるという、悪しきループに陥る可能性があります。
さらに国債発行によって債務残高はさらに積み上がり、財政的には将来にツケを残すことになりそうです。