現金で資産を買う通常の投資に対して、借り入れを加えて投資金額をふくらませることを「レバレッジをかける」と言います。一般的には、借り入れ=悪、危険、というイメージで話されることが普通ですが、果たして本当でしょうか?
- レバレッジはなぜ危険か?
- ロスカットのない投資先もある
- レバレッジをかけ過ぎなければいい
- そもそもなぜレバレッジをかけるのか
- CFDでは指数に自由なレバレッジで投資可能
- 配当(相当額)もレバレッジに応じて増大
- ただし金利と管理費に注意
- NISAなどの投資金額を実質的に増加させる
- 米国ではマージントレードが普通
- レバレッジも使いどころ
レバレッジはなぜ危険か?
なぜレバレッジが危険なのかといえば、リスクが増加するからです。上下20%動く資産なら、2倍のレバレッジをかけると上下の動き=リスクも2倍。上下40%相当になります。リスクが高まるということは、これまた一般的には「危険」とされるので、確かにレバレッジは危ないというのも一理あります。
例えば、1ドル100円として、1万ドル買ったとします。約100万円相当です。国内の個人向けFXでは25倍のレバレッジが可能なので、必要証拠金は4万円になります。ここで、為替が4%下がって円高になったとします。96円になるということです。すると、4%の25倍→100%が失われ、投資した全資産を失うことになります。
しかもレバレッジをかけた投資では、ロスカットがつきものです。これは、資産価値が下落して、最低限必要な金額=証拠金を下回ると、自動的に決済され、損失が確定するという仕組みです。
上記の例でいうと、必要証拠金4万円に加えてさらに4万円を置いておきます。合計8万円ですね。ところが為替が4%下がると4万円分の価値が失われます。残りは4万円です。この必要証拠金の額を下回るとロスカットされ強制決済となります*1。
ロスカットされるということは、ほとんどの投資額を失うということなので、それは危険だよね、ということです。
ロスカットのない投資先もある
しかし実はロスカットが存在しない投資先もあります。不動産が代表的です。頭金に加えて借り入れを行い、レバレッジをかけて投資をするのが不動産では一般的です。
ところが、不動産価格が下落して、頭金の額を下回っても、つまり債務超過になっても、不動産はロスカットされないのです。いずれ不動産価格が戻ってくるまで、じっくりと待つことが可能です。これが、ほかの投資と違って不動産にレバレッジがかけやすい理由の一つになっています。
レバレッジをかけ過ぎなければいい
こう見てみると、レバレッジ自体が危険なのではなく、レバレッジのかけすぎが危ないということが分かります。例えば、FXでレバレッジ1倍で運用した場合、それは外貨預金とリスクは変わりません。レバレッジ2倍(証拠金比率1250%)の運用でも、まず危険はないでしょう。ドルが60円になって初めてロスカットとなるからです。
レバレッジ3倍というのは、ドル円100円で1万ドル買うとしたら、33.3万円の証拠金で取引を行うということです。必要証拠金はこの場合4万円なので、証拠金比率は約832%になります。
このくらいなら、そこまで危険な取引ではないですね。
そもそもなぜレバレッジをかけるのか
では、そもそもなぜレバレッジをかけるのでしょう? それはレバレッジがリスクを増大させたのと同じように、リターンも増加させるからです。レバレッジ3倍ならば、得られるリターンも3倍になります。
米S&P500指数に3倍のレバレッジをかけたSPXLとS&P500のグラフを並べてみます。S&P500の増減が、ほぼ3倍の動きになっていることが分かります。
株式は長期的に6〜7%程度のリターンに収斂すると言われていますが、レバレッジ3倍の銘柄を使えば、このリターンも3倍になるわけです。
CFDでは指数に自由なレバレッジで投資可能
SPXLはETFですが、日本ではCFDを使うことで指数に自由にレバレッジをかけることができます。例えば、NYダウは直近26,341ドル=2,932,016円です。これを1単位として、82,470円の証拠金で取引ができます。レバレッジは約35倍になります。
もしレバレッジ3倍にしたければ、100万円程度の証拠金を積んでおけばOKですね。自分で証拠金比率を調整できるのが、CFDの魅力です。
配当(相当額)もレバレッジに応じて増大
もう一つ、こうしたレバレッジ取引では、金利や配当金も出ます。そして、それもレバレッジ倍率に比例するのです。例えば、配当金が2%の投資先にレバレッジ3倍で投資すれば、6%の配当金になります。
つまり、配当金狙いだとしても、適切なレバレッジは効果があるということです。
ただし金利と管理費に注意
ただし、落とし穴が2つあります。それは金利と管理費です。レバレッジは裏側で借り入れをしているので、借り入れた金額に対して金利の支払いが必要になります。CFDの場合、日々「金利」という名前で支払うことになります。
NYダウのCFDの場合、配当相当額に金利相当額が拮抗しています。つまり、レバレッジをいくらかけても、配当の増加と同じように金利も増加するので、もらえるお金は増えないということです。
もちろん、これは米ドルの金利が高いからです。比較的金利の安い英ポンドなどでは、配当金の額が金利相当額を上回ります。英国の株式インデックスであるFTSE100はどうかというと、配当のほうが多い状況です。
そのため、レバレッジをうまく使えば、この差額分を増大させられるわけです。
もう一つの落とし穴が管理費です。SPXLはS&P500に3倍のレバレッジをかけたものです。S&P500は2%前後の配当金が期待されますが、SPXLの配当金は1%前後しかありません。これは経費率が1%近くと高く、金利と同様に配当金の増分を食ってしまうからでしょう。
NISAなどの投資金額を実質的に増加させる
こうした特徴を踏まえたうえで、レバレッジドETFの活用法の1つに、NISAにような投資金額が固定されている口座での利用があります。つまり、通常なら120万円しか買えないNISAですが、ここでレバレッジ3倍の商品を買えば、実質的に360万円分の運用ができるというわけです。
同じことを、山崎元氏も書いていて、投機的にレバレッジを使うのではなく、適切なレバレッジを活用するために使ってはどうか? そんな投資信託があってもいいとしています。
ちなみにシーゲル教授は『株式投資』の中で、保有期間別にオススメの株式比率を紹介しています。その中で、ある程度リスクを取っていい人へ推奨する株式比率はなんと100%を超えているのです。これはつまり、レバレッジを使え、ということですね。
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米国ではマージントレードが普通
日本では株式取引にレバレッジをかけたいと思ったら、信用取引の買いになります。ところが、信用取引は3倍程度のレバレッジが最大で、さらに返済期限がもうけられていえるため、どうしても短期の取引になりがちです。さらにこの低金利の日本なのに、信用取引の金利は2〜3%とものすごく高くなっています。
※SBI証券の例
ところが、米国の、例えばInteractiveBrokers証券では、現金取引のほかにマージン口座が用意されています。つまり証拠金取引ですね。その金利は、国際的に使用されるベンチマーク(フェデラルファンドやLIBORなど)に0.3%〜1.5%を追加したものになります。
米国はもともとの金利が2.5%程度と高いのでアレですが、市場金利に近いのは大きなメリットですね。以前、ベンチマーク金利が低かったときは、借り入れを行なって債券系の4%程度の配当があるETFを買うと、金利を支払っても2%程度のリターンが得られたという話でした。借り入れを行なっているので、投下資金に対してはたいへん大きなリターンになります。
レバレッジも使いどころ
こんなわけで、レバレッジに関するあれこれを書いてみました。レバレッジ=悪、危険、ではなく、倍率をコントロールしつつ、金利や経費率を見て利用すれば、うまい投資になる可能性があることが分かります。
短期のギャンブルにレバレッジを使うのではなく、資金効率の増大のための活用を目指したいところです。
*1:ロスカット水準100%の例です。商品や業者によってロスカット水準はけっこう違ったりします