第一回、第二回と、投資に関する基本的な考えをまとめてきました。第3回は、「でもお前、言ってることとやってることが違うじゃん」と思われがちな点について、まとめておきます。
なぜ仮想通貨を持つのか
まっとうな投資家にとって仮想通貨というのは投資対象外です。多くの人が思っているのは次のようなことではないでしょうか
- ほとんどが詐欺だ
- インカムゲインもないし、ファンダメンタルズ的にも価値がない
- 投資しろと煽っている人は、アフィリエイトかポジショントーク
これらはまったくそのとおりだと思います。ファンダメンタルズ的に価値がないよね? ということは下記でも書きました。
それでも僕が仮想通貨を持つのは、3つの理由があります。1つは、アセットクラスの分散によるリスクの減少です。自己紹介と投資哲学(2)でも書いたように、現代ポートフォリオ理論は、値動きが連動しない複数の資産を持つことで、リターンを減らすことなくリスクが減ることを示しています。
ちょっとおもしろい例があったので、引用してみましょう。
教授:「今あなたは米国企業社に分散して投資をしているとしよう。運用資金の総額は変えずに投資先を500社から501社に増やすとして、ジンバブエ航空の株式を新たに購入するとする。ジンバブエ航空が実在するかどうか知らないが、ひとまず実在するということにしよう。さてジンバブエ航空に投資をすることで、投資全体のリスクは上がるだろうか、下がるだろうか」
MBA学生:「投資のリスクは当然、上がります」教授:「どうしてだね?」
MBA学生:「ジンバブエ航空への投資は高いリスクがあるからです」
教授:「君はわかっていないようだね。いいかね、ジンバブエ航空の業績は、アメリカ経済の景気とはほぼ無関係だと言ってよいだろう。ジンバブエ航空は、ジンバブエという独裁国家の政策の影響を大きく受けるからだ。こう仮定した場合、ジンバブエ航空に投資をすることによって、投資全体のリスクは上がるだろうか、下がるだろうか」
MBA学生:「リスクは上がります。ジンバブエの政治リスクも加わりますし」
教授:(首を振りながら)「いいかね。米国企業500社への投資に、ジンバブエ航空への投資を加えたら、リスクは下がる。これらの株価の動きが無関係だと仮定すれ ば、リスクが打ち消され合い、全体のリスクは下がる。これが分散効果だ」
元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法
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これは、どんなリスキーな資産であっても、それが独立した値動きをする限り、ポートフォリオに組み込むことで、全体のリスクを下げるということを示しています。
では株式がメインだとして、ほかの資産は何にするのがいいのでしょう? 株と連動さえしていなければ何でもいいというのが答えです。債券や不動産証券にも投資をしていますが、分散の一貫として仮想通貨を少し持っています。
2つ目は、日本円暴落時への備えです。藤巻議員が「ドルと仮想通貨を持っておけ」とたびたび述べていることは下記の書評でもまとめました。ぼくの資産の半分はドルですが、さらに通貨を分散するなら仮想通貨です。
現在の通貨はいずれも金融当局が自由に増減できる仕組みになっていて、発行限度が定められていません。これは、人為的なミスで通貨の大暴落が起きる可能性があるということを示しています。一方で、Bitcoinにはアルゴリズム的に発行量の上限が決まっており、最大で2100万枚となっています。現在、約1762万枚が採掘されており、ここから半減期と呼ばれる採掘量が半分になるタイミングが2020年頃と言われています。
そして3つ目は、技術的な可能性とBitcoinが内包する思想への共感です。Bitcoinが生み出したブロックチェーンがたいへんな可能性をもつ技術だというのが1つ。そして、通貨を国家の手綱から解き放ち、民主的なものにしようという考え方に共感しています。暗号化界隈で初期に言われていたものですね。
インデックスではなく個別株をかなり持っているのはなぜか?
インデックス投資家だというのに、GoogleだとかAmazonだとかの株をけっこうもっているじゃないか! という疑問もあると思います。たしかにインデックス資産と同じくらい、こうした個別株資産がありますね。
www.kuzyofire.comでもこれはもともと趣味的に始めた投資でした。投資額も実は少額です。ところが、想定を超えた値上がりによって大きくなったのでした。
個別株でも、基本スタンスは長期投資です。その企業の経営方針に賛同して、長期的に伸びていくだろうと思ったところしか買っていないからです。以前、P/LやBSの分析に基づいて、対して賛同してもいない会社の株を買ったことがありましたら、結局短期間で手放してしまいました。
GoogleやAmazon、Facebookの株を手放すのは、長期的な成長に確信が持てなくなったときだと思います。ただし、あまりに比率が高くなってしまっているので、定期的に売却は行っていきます。
FX、VIXとかオプションとかCFDとか怪しげなものをやっている
もう一つ、ぼくはFXを使ったスワップアービトラージや、VIXへのCFD投資、銀オプションなど、ちょっと変わったデリバティブにもトライしています。インデックス投資家がなんで? と思うかもしれません。
これは完全に趣味です。インデックス投資は理論的には正解だと思うので、メインの投資ですが、一方で放ったらかしでつまらない投資でもあります。
- 金融の仕組みが面白いので実践で体験したい
- インデックスを売買したくなったときに、少額でデリバティブのやり取りをする
こんな目的でやっています。心に置いているのは、こうしたデリバティブは基本的にゼロサムゲームです。つまり期待値は良くてゼロ、基本的にマイナスになります。
面白いけれど、大きなダメージを受けるような投資をしてはダメということですね。異業者FXアービトラージはおそらく期待値プラスですし、オプションを使ったカバードコールはαがある、という研究もあるので、そうしたことを実践して検討するのが狙いです。
実際、オルタナティブセグメントへの投資は、総資産の5%以内にするように決めており、ここでいろんなトライをするということになります。
こんなわけで、インデックス投資家と名乗りながら、インデックス+個別株のグロース+オルタナティブと資産は別れています。結果、ポートフォリオはこうなってしまっているというわけです。