FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

「暴落回避」の効果と「急騰に乗れない」損失

今回のようなコロナショックでは、パンデミックの兆しが見えた時点で、うまく損切りしてポジションを整理した人たちがいます。ぼくが見ていたTwitterのタイムラインでも、何パーセントかの人は、うまく逃げおおせたようです。しかし、そうした人は、その後の反発にうまく乗れたでしょうか?

34%下落から、28%上昇

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このグラフは、直近6ヶ月のS&P500の推移です。2月19日には、3386ドルを付けましたが、コロナ蔓延と共に下落。3月23日の2237ドルまで、約34%下落しました。ここまで約1カ月。

 

途中で「これはヤバイ」と分かり、うまく損切りしてポジションを仕舞えた人はさすがですね。2月末に小さな底がありますが、この前後で「すべて売却」した人をけっこう見かけました。このときに売っていれば、高値から10%ほどの下落で済んだことになります。

 

その後、3月9日週のパニック状態を経て、3月23日までどんどん落ちていきます。この時期になると、「早く逃げろー」という声は全く聞かれず、ぼくも含めて持ち続けている人は、「どこまで下がるんだろね、あはは。面白くなってきた」という、半ば異世界を見ているようなムードでした。「いまはバーゲンセールだから買い」という声も少し少なくなってきた印象で、「買い買い言っている人が増えたら、二番底が……」という人もいたのが印象に残っています。

 

3月23日からは、株価は反発し、現在まで約28%上昇しています。とはいっても高値からは15%のマイナス。このまま戻るのか、もう一段下がって二番底へ向かうのか、皆目見当がつきません。

いったん売ったポジションを買い戻すのは難しい

うまく逃げられた人にヒアリングしたわけではないのですが、うまく損切りできたとして、今度は底のタイミングで全部買い戻したかといえば、そんなことはないでしょう。どこが本当の底か分からない中で、徐々に、銘柄を選びながら買い戻していると推察します。

 

3000ドル近辺で損切りした人は、そろそろ当時と同じくらいにポジションを戻せているでしょうか。すでにS&P500は2880ドルを超えていますが、今ならまだ安く買い戻せますね。

急落回避より急騰に乗ることの重要性

株では暴落をうまく回避したり、傷が浅いうちに損切りすることの重要性が言われます。ただし、それが本当に効果を発揮するには、安くなったところで、元のレベルまで買い戻す必要があります。

 

チャールズ・エリスが「敗者のゲーム」で、年間の暴騰した日のパフォーマンスを記し、これに乗れないことが最大のデメリットだと書いていたのは有名です。

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※古い版のためグラフも古い。最新版ではデータもアップデートされています。

また1日単位ではなく、1年単位でも、実は同様のことがあるようです。「行動ファイナス入門」では、日本の1950〜2008年までのデータで、暴騰や暴落が、58年間の平均リターンにどのくらいの影響を与えたか、振り返っています。

  • 大暴騰の年(1952年)を逃すと、幾何平均リターンは7.7%から6.3%へ低下
  • 大暴落の年(2008年)を回避すると、幾何平均リターンは7.7%から8.7%へ上昇
  • 両方の年を回避すると、7.7%から7.3%に減少

意外でしょうか?株価はじっくりと上昇し、いきなり大きく下落するイメージがありますが、ある程度の期間で見ると、上昇幅のほうが大きくなるから、こんな結果になるわけです。

暴落を回避するよりも、暴騰を逃すほうが投資成果には悪影響を与える。

行動ファイナンス入門 なぜ、「最適な戦略」が間違うのか?

 つまり、暴落を回避できるタイミングをうまく見計らっただけでは不十分で、併せて暴騰タイミングを見極めないといけません。ダブルで最適なタイミングを見つける必要があるわけです。

投資は結局エクスポージャが重要 

さてこれらからいったい何が言えるでしょうか? チャールズ・エリスが「投資ではそこにいることが重要だ」と述べているように、資産を市場リスクにさらし続けることです。このリスクにさらされている資産のことを、投資エクスポージャといいます。

 

適切なタイミングで売ったり買ったりできる天才は別として、ほとんどの人はタイミングなんて図ることはできません。それを前提とすると、投資の最終的なリターンは、エクスポージャの量に比例します。

 

エクスポージャは、一時的な投資額ではないことに注意が必要です。100万円を1年間リスクにさらすのを、「100万円年」とした場合、100万円を10年投資し続ければ1000万円年ですし、1000万円を1年だけ投資しても1000万円年です。

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この図のように、100万円のブロックを長期に並べるか、短期に積み上げるかの違いで、重要なのは面積だということです。実際には、長期で投資すると複利効果が働くため、リターンは長期のほうが大きくなりますが、それは株式の期待リターンがプラスだから起こることになります。これは以前、「時間分散の本当の意味」として書いたことです。

 

いかに市場に居続けるか。タイミングを図ることはできないということを前提とすれば、これを最も簡単に実現する方法は、バイ&ホールドです。だから、金融理論では「売ってはいけない」と言われるわけです。

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