FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

Teslaより低いBitcoinのボラティリティ デジタルゴールドへの変容

ビットコイン価格が絶好調です。3月にコロナショックで50万円台まで低下したのちじわじわと上昇。10月半ばからは、2017年のバブル期を思わせるような上昇を見せて、日本円で190万円を超えてきました。ドル建てでは1万8000ドルを超えてきており、それぞれバブル期の価格に近づいています。

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しかし、17年のバブル期と今回の上昇には大きく異る点があります。ボラティリティです。

仮想通貨は変動が激しいと思われてきたが 

暴騰も暴落も、仮想通貨なら当たり前。ぼくも含めてそんなふうに思っていた人が多いと思います。特に17年の暴騰と暴落は、10月の40万円台からわずか2カ月で220万円まで急騰し、その後、2月には100万円を割るという激しいものでした。このときのイメージは、「Bitcoin、怖い」というものだったと思います。

 

ところが、この価格変動=ボラティリティが、近年急低下してきています。下記は5年間のBitcoin、30日HV(ヒストリカルボラティリティ)の推移です。これを見ると、17年の暴騰の際には50前後から上昇していき、暴落のタイミングでは120を超える期間が続きました。

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その後、乱高下を繰り返しながら、30HVは70近辺で推移してきましたが、徐々にボラティリティは低下。コロナショックのタイミングでこそ急上昇しましたが、直近の価格急上昇に伴っては、50を下回るレベルまで落ち込んでいます。

 

この水準は、なんとTeslaを下回ります。Teslaはコロナショックで一時下落したタイミングから30HVは急上昇。9月には100に達しており、現時点でも60を超えています。つまり、いまやBitcoinのボラティリティはTeslaよりも小さいということです。

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ちなみに日経平均の30HVを見ても、コロナショック後しばらくは40で推移しており、これは現在のBitcoinとほぼ同レベルとなっています。

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価格が急騰しているのに、ボラティリティは歴史的にも低い水準にある。これが現在のBitcoinの状況です。

なぜボラティリティが低下したのか

ではなぜボラティリティが大きく低下したのでしょうか。テクニカル的な分析は不明ですが、これはBitcoinを購入している層が、17年とは大きく変化しているからではないかと想定しています。

 

端的にいえば、機関投資家と企業です。法規制や流動性の観点から、17年の仮想通貨相場は個人が演出したものでした。しかし、流動性の高い先物市場が徐々に整備され、欧米のファミリーオフィスを中心にBitcoinを買う動きが増えてきています。

 

ファミリーオフィスとしてのフィデリティは、初期からBitcoinに熱心でしたし、19年4月に登場したETP(上場取引型金融商品)ではBitcoinを購入することができます*1。米国ではBitcoinのETFは承認されていませんが、スイスではこの形で取引がされており、機関投資家のマネーが初めて仮想通貨に流れ込むことになりました。

 

米CMEに代表されるBitcoin先物も、機関投資家が売買する上で大きな影響をもたらしました。機関投資家にとって、買いたいときに買え、売りたいときに売れる流動性は最も重要です。ところが、現物主体の取引所では大きな売買は難しく、自らの取引が価格に影響してしまうこともしばしばです。そんな中で、流動性の高い先物市場は機関投資家にとっては重要であり、CMEのBitcoin先物は11月に入って取引高が急増しています。

 

また、米MicroStrategyやSquareが8月にBitcoinを大量に購入したことも話題になりました。10月には、ロンドン上場のMode Global Holdings PLCも、Bitcoinを大量購入する計画があると発表しています。

www.coindeskjapan.com

 

こうした企業や機関投資家がBitcoinを買う狙いは、トレードによる売買益ではありません。コロナ禍に伴う金融緩和でマネーが溢れ、将来的なインフレが懸念されるなか、現金を保有していては価値が大きく毀損する可能性があります。これを避ける、つまりインフレをヘッジするために、Bitcoinを買っています。

 

これまでは、こうした役割は金=ゴールドが担っていました。ところが金に代わるデジタル・ゴールドとして、Bitcoinに目を向ける動きが広まってきたというわけです。

 

彼らはBitcoinを購入はしますが、ちょっと値上がったからといって売却はしません。ジリジリと買い続けるわけで、価格もじわじわと上昇し、急変動は起きません。つまりボラティリティが低下しつつある。そのような背景があると見ています。

仮想通貨はBitcoinとその他に分かれる

現在のところ、デジタル・ゴールドとして捉えられているのはBitcoinだけです。これは、Bitcoinが仮想通貨の起源であるとともに最も長い年月運用されており、その間、根幹のブロックチェーンは数多のハッキングも寄せ付けず、安定して稼働を続けているということがあります。

 

さらに、17年バブル期には33%まで低下したBitcoinのドミナンス(仮想通貨全体に対するBitcoinの時価総額)は、現在64%まで回復しました。つまり、仮想通貨といえばその過半はBitcoinであり、代名詞がBitcoinなわけです。

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グローバルチャート | CoinMarketCap

古典的なPoWを採用する仮想通貨では、利用者が多いことがセキュリティの向上に繋がります。モナコインなどで起こった51%攻撃は、Bitcoinでも理論的には起こり得るわけですが、これだけの規模で利用者が多ければ、実行は相当困難になります。大きいことが強さであり安定性であるというのが、現在の仮想通貨の真実です。

 

その他の仮想通貨の中では、Ethereumが第2位として大きくリードしています。11%のドミナンスを持ち、3位以下を大きく引き離しています。そして、17年のICO、20年のDeFi、そしてこれから来るであろうNFTのいずれも、Ethereumプラットフォームで起きている出来事です。

 

Bitcoinが機能よりも安定や熟成を求められるのに対し、Ethereumはスマートコントラクトのオリジンであり、革新と進化を期待されています。同様の機能を持つパブリックチェーンのTRONやEOS、tezosなどのほか、プライベートチェーンのHyperledgerなどはEthereumの競合です。また、新たな技術を採用し、Ethereumの現在の最大の課題であるスケーラビリティの改善を狙う、PolkadotやCosmosなどもダークホースです。Ethereumがこれらとどう戦っていくのかは興味が尽きませんが、スマートコントラクトにおいても、歴史とそれに伴う多くの開発者は最重要の資産であり、Ethereum2.0への移行が進む限りにおいては、未来は期待できるのではないかと考えています。

成熟期に入ってきたBitcoin

そんなわけで、仮想通貨の未来を楽しみにするならEthereum、またはその競合チェーン。デジタル・ゴールドとして価値の保存を重視するならBitcoin。この2つが、現在、仮想通貨を保有するときの王道でしょう。

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*1:ETPとは、ETFとETNとETCの総称のことです。