FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

金融相場から業績相場へ 書評『相場サイクルの見分け方』

コロナ禍で株価が上昇した背景として「金融相場」という表現が使われます。また、それから状況は変化して、現在は「業績相場」だとも言われます。これらは一体何で、それぞれの相場サイクルでは、いったい何に注目したらいいのでしょうか?

 

株式相場の状況を「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」というう4つの局面に分類し、それぞれのタイミングで注目すべき点を解説したのが、この『相場サイクルの見分け方』です。本書が刊行されたのはバブル真っ最中の1990年。

 

バブル崩壊後は金融緩和などが効果なく、こうした相場サイクルがささやかれることが減りましたが、コロナ禍において再び注目されようとしています。 

 金融相場

”不景気の株高”。これが金融相場です。不景気で株価が下がり続け、政府は金融・財政両面から景気対策を行い始めます。金利を引き下げ、そして住宅投資を増やしたり、橋や道路などの公共投資を拡大します。コロナ禍においては、ロックダウンに伴う補助金がこれにあたりました。景気対策というよりも、雇用維持、企業の存続維持という観点が強かったと思いますが、急激にマネーが市場に流れ込みました。

 

その結果、あふれたマネーは株に流れ込み、株高を演出したわけですが、このような金融相場ではどんな特徴があるのでしょうか。

金融相場の特徴は、まず市場出来高に顕著に現れる。(略)まず東証一部市場の出来高が日経平均の上昇と連動して急増し始める。 

では金融相場ではどんな銘柄が上がるのでしょうか。まず、金利引き下げなどの金融政策は、金利敏感株、わけても銀行・証券などの金融関連株にとっては、資金調達コストが下がることによる、貸付金との利幅の拡大と、市場の出来高急増に伴う手数料増加が追い風になります。

 

同時に財投関連株も人気を集めます。政府が公共支出を拡大させて投資を行うわけです。すると、それに関連する建設・土木、道路、しゅんせつ、橋梁、プレハブメーカー、大手不動産会社やマンション業社などが次々と循環物色されるといいます。

 

次に金利低下局面で買われるのが、公共サービス関連株、電力・ガス、電鉄、空運、放送などです。営業利益の70〜80%が支払い金利という公共株にとって金利低下のメリットは大きいといえます。

 

ただし、株価水準の高い値がさの中・小型株は人気圏外におかれます。特に工作機械やハイテクなどの設備投資関連企業は日経平均に逆行して下がるといいます。

 

金融相場で注目されるのは、財務体質の強いトップ企業です。経済環境が悪いこともあり、そうしたところに人気が集中します。

業績相場 

金融相場では景気は不透明のままです。そんな中、「業績相場は懐疑の中で育ち」始めます。国内経済指標のうち出荷が伸びて在庫が減少し始め、継いで生産が前年対比でプラスに転じます。ただし、まだ企業業績はこの段階では立ち直っていません。金融相場が「理想買い」なのに対し業績相場は「現実買い」です。企業業績の回復が確認されるまでは1年程度のタイムラグがあるといいます。

 

金融相場は、景気の回復と金利の下げ止まりで終わりを告げます。業績相場では、どんな銘柄が物色されるのでしょうか。前半は素材産業、後半は加工産業に変化していくといいます。

 

景気の拡大が長期化すると、最終需要の力強さから素材産業が先行きに自信を持ち大型の設備投資に踏み切ります。ここでは、産業用機械、精密工作機械、ロボット、自動倉庫、工業計器、事務機など、加工企業からの受注が急増します。そのため、当初は素材産業が大きく増益し、投資を受けて後半は加工産業の増益率が上回ってきます。

 

ただし、買われる素材産業においては、トップ企業ではなく三番手企業に注目すべきだと筆者はいいます。景気変動の影響を受けやすく、景気が悪くなるとすぐに業績が悪化するようなサイクリカルストック銘柄が買われるのです。

このような企業を限界供給的な企業という。景気拡大が長期化し始めると、信頼のおける業界のトップ企業に製品を発注しても引き合いが殺到しているため納期が遅れてしまう。そこでこの際は少々信頼性に欠ける点はあっても、二流、三流の製品を入れたり発注したりすることになる。

前半の素材産業から、加工産業の二流三流企業への切り替わりのタイミングは、金利の引き上げがきっかえになります。

逆金融相場

業績が絶好調であっても、金融の引き締め政策が実行されると、素材産業などで外部借入の大きい企業は、同様に借金の多い電力株などとともに下落します。こうした流れで、高値状態まで上がった株価はほぼ全面安の状態になるわけです。

 

しかしまだ景気は絶好調、企業収益は増収増益予想。そのため、株価が大幅に値下がりすると割安感が生じます。特に、株価の急騰で買いそびれていた投資家にとっては買いチャンス。その結果、二番天井が形成されます。

急落後三〜4カ月以内に最初の高値に挑戦するかのような勢いで戻ってくる反騰相場を株式市場では二番天井と呼んでおり、米国流にはダブル・トップという。(略)この二番天井の出現で、株式相場は強気相場の終わりを確認することになる。 

 

この逆金融相場では、いまだ景気が好調ということもあり、濃淡がつきます。日経平均が先の高値を抜けないにもかかわらず、中小小型株の指数は高値を更新しながら活況となります。

小型資本企業の活況の一因は、財務内容に優れ、成長力の高い企業が金利上昇により、かえって受取利息が増えるというように、金融の引き締め状態にも強みを発揮するという利点を持っているからである。それに株式市場に流入する資金が細るため、発行株数が多く時価総額の大きな銘柄を押し上げるパワーが失われていることも見落とせまい。

逆業績相場 

逆金融相場での金融引き締めに加え、外部からのショック材料が重なると、いきなり吹雪が吹き荒れます。これは景気後退期であり、逆業績相場へのパターンは一定ではないといいます。

 

ただし、

どのようなタイプの逆業績相場においても、これだけはという共通点がある。それは、逆業績相場の最終局面に近づけば近づくほど、株価の割高感が強まることである。

こうした逆業績相場で買うべき銘柄は業界トップの文字通り優良銘柄だといいます。

「優良株」と呼ばれる銘柄は、平時の投資対象としてはあまり妙味のある株式ではない。なぜなら、その名の通り優秀な企業として、株価はそれなりの評価を受けてしまっているからである。しかし、株式相場の大底圏における優良株は「株価が高水準にある」というそれだけの材料でも売られている。つまり、玉石混交ですべての株式は投資家から見放されているからだ。

さらに最も妙味のあるグループとしては、金融関連株と財投関連株、次に電力・ガス、電鉄、不動産、それに薬品だといいます。

相場サイクルのイメージ

この「金融相場」から「業績相場」、そして「逆金融相場」「逆業績相場」へという流れは、相場サイクルの基本的な考え方といえると思います。もちろん、このようにきれいに4つのサイクルが順にやってくることは少なく、あくまで概念的なモデルではあるのですが、ここからはいろいろなことを学ぶことができます。

 

株式銘柄選びの手法というと、PERやPBRなどのさまざまな指標でスクリーニングして……という方法がよく紹介されますが、いまが相場サイクルのどこに位置しているのかによって、数字の持つ意味が大きく変わることが分かると思います。

 

理由はさまざまですが、コロナ禍は明らかな金融相場の始まりでした。しかし、ロックダウンとのセットということから、上昇した銘柄はここで書いたのとはちょっと違います。また1990年当時との違いでいうと、ハイテク株の意味合いが必ずしも設備投資を伴うものだけではなくなっていることにも注意です。

 

GAFAに代表されるようなIT企業は、多くがキャッシュリッチであり、必ずしも金利低下の恩恵を大きく受けるわけではありません。また、GoogleとFacebookにおいては設備投資はデータセンターくらいで、そこへの先行投資を景気や業績で調整しているようにも見えません。

 

また、コロナ禍で一時的に金融相場に移行したものの、大きな流れを見ると米国経済が長い拡大が続いており、長期で業績相場が継続中だという見方もできます。そして金利はいまのところ、上がる気配を見せていません。

 

おそらく世界経済の次のターニングポイントは、エコノミストの多くが言うとおり、各国中銀の金融緩和政策の転換、まずはテーパリングがいつからになるかなのでしょう。このときに「逆金融相場」に突入するのかどうかが問われることになるのだと思っています。

 

ちなみにこうした、サイクルに基づいて揺れるという相場観は、レイ・ダリオ、ハワード・マークスなど多くの尊敬すべき投資家が持っているものです。インデックス投資家の中にはランダムウォークによる確率しか考慮に入れない人もいるのですが、歴史的なデータが確率論よりも収束していることを見ても、また人間の心理(センチメント)から見ても、ある種のサイクルがあることは間違いないでしょう。

投資手法

僕自身は長期投資家であり、かつ個別銘柄の循環物色なども行わないため、相場サイクルによって買うべき銘柄をチェックするというような行動は行いません。ただし、マルチアセットのアロケーション比率を決めるにあたっては、この4つくらいのサイクルを意識するようにはしています。

 

例えばコロナ禍における金融相場では、その終わりが見えたかなと判断した2020年末くらいに金利が下がりきったと判断して国債をすべて処分しました。これらの国債は、コロナショックで大きく上昇してくれており、株式の下落のクッションになってくれました。

 

いまはインフレ懸念が以前にも増してクローズアップされています。インフレ懸念とはすなわち金利上昇リスク。逆金融相場に移行した際に、どのようなアロケーションにするべきかは、ぼちぼち考えていきたいと思っています。

 

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