FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

すべての道は金融に続く テスラ保険とECより儲かる決済収益

先日、面白いブログを読みました。「ECと統合したFintechでは物販より決済のほうが大きくなる」というものです。一方で、Tesalのイーロン・マスク氏は「今後、自動車事業のバリューの30~40%が保険事業になるだろう」と話しています。金融が第2のデジタル化を迎える中で、さまざまな事業のメインの収益源になろうとしているのかもしれません。

EC利益よりも決済利益のほうが大きくなる

ブログの中で、海外投資家のGaurav Gupta氏は、次のように話しています。

先日IPOした投資先のレストランテックスタートアップ「Toast」は、主にレジ向けPOSソフトウェアからスタートしましたが、収益のかなりの割合が、ここ2、3年で決済とFintechとなっています。このようなバーティカル型SaaS企業は、ますます増えてきています。

グローバルで見たときにFintechとECの融合の最たる事例は、南米のMarcado Libreです。これは南米におけるAmazonや楽天のような存在です。驚くべきことに、Mercado Libraは現在、物販による収益より決済による収益の方が多いのです。Marcado LibraはEC機能を備えたFintech企業と考えた方がいいかもしれませんね。その逆ではなく。

EC・Fintech統合後は物販より決済のほう大きくなる―、海外ファンドが日本のスタートアップに投資するワケ(2) | Coral Capital

どういうことか? ECというのは、仕入れた値段よりも高く売ることで利益を上げるビジネスです。しかし競争が激しく、常に価格低下圧力がかかります。地理的な制約のないECでは、店舗小売りよりもそれが大きく、利益は数パーセント出るかどうかという感じです。

 

一方の決済は、大きく2つの収益源からなります。1つは決済手数料。これは店舗側から3%程度を徴収するもので、実はこれだけみても小売りの利益よりも利益率が高い。さらに、ECのようにリアルなモノを配送する必要がなく、電子データの移転だけで済むので、変動費が低く、スケールすれば利益が増します。

 

2つ目がローンです。今お金を持っていない人にも買い物ができるようにし、その代わりに金利を付けて回収するというビジネスです。一般的に決済収益というのは、この2つで成り立っています。

 

そしてローンビジネスの利益率は高い。法律で上限金利は設定されていますが、それでも15%程度の金利を課すことができます。自動車ローンなどでも5%前後の金利が付くことがままあります。お金を一定期間貸し付けるだけでこれだけ利益が出るのですから、確かに悪くありません。

 

つまり、ECでは仕入れ値+配送費+オペレーションコストの利益が出ない構造として、それを自社の決済プラットフォームを使ってもらうことで、一部の顧客にローンを使ってもらい、そこを収益源とするというものでしょう。

すでに自動車がこの構造

実は、一見モノを売るビジネスに見えながら、利益の多くを金融で稼いでいるという事業はほかにもあります。有名なところだと自動車ビジネスがそうです。21年3月期のトヨタの決算を見てみましょう。

  • 自動車事業 売上24兆6500億 営業利益1兆6071億 営業利益率6.5%
  • 金融事業  売上2兆1622億 営業利益4955億 営業利益率22.9%

なるほど、クルマを作って売るという自動車事業で営業利益率6.5%は素晴らしいですね。でも、クルマを売るときにセットで提供するディーラーカーローンの利益は凄まじい。営業利益率は20%を超えています。

 

これが、ECにおいても、モノを売るのではなく決済のほうで利益が上がる構造になるということです。

自動車事業のバリューの30~40%が保険事業に

もう一つ、Teslaは10月から自動車保険ビジネスを米テキサス州で始めました。Tesla車に組み込まれた各種センサーを用いて安全運転スコアを計測し、そのスコアによって大幅に保険料を変動させるのが特徴です。一般的な自動車保険で使われる年齢や性別、事故歴といったデータは使いません。完全に「今、どんな運転をしているか」で保険料を決めるというのです。

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日本でも計測器を付けてそのデータを元に保険料を割り引くテレマティクス保険は出ていますが、これはオマケの域を出ていません。Teslaのように、それをメインにはしていないのです。

 

国内の4輪車の生産金額規模は年間17兆円程度。この5%が営業利益だとしても、8500億円に過ぎません。一方で、国内の自動車保険の市場規模は、任意保険と自賠責で5兆円ほどあります。ちなみに、損保トップの東京海上日動の保険料収入は2兆2613億円、経常利益は1572億円、経常利益率は6.9%です。保険事業というのが、けっこう美味しいビジネスだということが分かります。

 

保険会社のビジネスの根幹は、顧客獲得のための営業と、適正な事故率を見積もる能力にかかっています。Teslaのような自動車メーカーならば、自車を購入した人に保険を勧めればいいわけですから追加の営業コストは小さく、そしてセンサーを活用することで事故率を適正にはじき出すことができます。利幅が大きく取れるのも道理でしょう。

金融単体では利益下方圧力がかかるが、組み込み型で市場拡大

というわけで、ECなどの物販においても自動車のような高額耐久消費財においても、ローンや保険といった金融を組み込むことで、本業以上に利益を出せる可能性があるわけです。そしてこれを後押ししているのが、昨今ブームの組み込み型金融(エンベデッドファイナンス)です。

 

従来、ローンは銀行が提供するもので、保険は保険会社が提供するものでした。ところが、各金融事業者は金融機能をパーツ化して他社に提供し、他社はそれをサイトや商品に組み込む動きを見せています。

 

金融業界には継続してコスト低下の圧力がかかっており、そのため他分野への進出を進めています。特にECはローンや保険と相性がよく、Zホールディングスなどはその分野への取り組みを進めています。そしてもちろん、クレカを軸にECを絡めたポイント戦略を実行している楽天もそうですね。

 

もしかしたら、モノやサービスは限りなく原価で提供され、企業側は利益を金融で上げるという時代がくるのかもしれません。ちょうど、コンテンツ産業の多くが広告で利益を上げるフリーミアム化したように、ECにおいても金融が広告の代わりになる時代が到来しつつあります。

 

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