FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

Google、国内金融サービス参入の狙いは何か

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Googleがpringを買収して、国内金融サービスへ参入することが話題になっています。では、これで何がどう変わる可能性があるのか。考えてみます。

pring買収は資金移動業登録を買った?

金融サービスと一言でいっても、いろんな種類があります。世間一般で「金融」といえば、下記の3つを指します。この3つは、銀行の3大業務とも呼ばれ、銀行が中心で行っているものです。

  1. 預金
  2. 融資
  3. 為替(送金)

このうち、1つ目の「預金」はまさに銀行の専売特許で、銀行だけに特権的に認められています。人々からお金を預かるという、よくある感じの業務ですが、まさにこれが銀行の根幹なわけです。

 

2番目の「融資」は要するにお金を貸すことです。これは「ノンバンク」という言葉もあるように、貸金業の登録を受ければ、貸金業法の規制の下で人にお金を貸すことができます。なぜノンバンクというかといえば、貸すお金を預金で集めることができないので、銀行から借りて、それに追加の利率を付けてほかの人に貸す形になるからです。

 

融資には、この人に貸していいかをチェックする「与信」に基づいて、お金を貸すわけですが、ノンバンクはこの「与信」を専門にやっているというわけです。もちろん、貸したあとは返済してもらう必要もあるので、回収業務というのもあります。

 

この融資に近い内容に、分割払いを使った割賦販売もあります。これは、モノを買った人の支払いを建て替えて、分割で返済してもらう業務で、割賦販売法で規制されます。

 

3つ目の「為替」(送金)は、銀行以外に資金移動業者が行えるものです。資金決済法で規制されています。今回のpringは資金移動業の登録を済ませており、Googleはこの登録を買ったという見方があります。資金移動業の登録ハードルはそれほど高くありませんが、現在審査に1年くらいの時間がかかっている模様だからです。

資金移動業ができること

実は、PayPayなどのコード決済業者も、やっていることは資金移動業です。モノやサービスの購入の対価として、利用者のおカネを販売側の口座に移動する事業だからです。

 

資金移動業は基本的に、銀行口座/クレジットカード→資金移動業者→ユーザーが決済→店舗の銀行口座という流れでおカネを移動させます。この時のポイントは2つです。

 

1つは、資金移動業者におカネを入れるには、何かしら既存の金融機関との接続が必要だということです。PayPayなどでいえば、銀行口座からチャージしたり、クレジットカードからチャージ(事前またはリアルタイム)することになりますが、銀行口座からの入金には、資金移動業者と銀行の個別契約が必要になります。

 

pringは現在、メガバンク、ネット銀行はじめ53行との接続を完了しており、これもpring買収によって時間を買った点の1つと見られています。

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2つ目のポイントは、いったんチャージした資金は資金移動業者のところに滞留することです。銀行以外に預金は認められていませんが、ユーザーから見れば預金と同じようにおカネを預けておくことができるようになっています。

 

もっとも、そうすると銀行の独占業務がなくなってしまうわけで、資金決済法では2つの方法でこれを回避しました。1つは、資金移動業者の累計を3つに分け、長期間の資金滞留を禁止したことです。

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決済法制の改正とビジネスへの影響

もう1つは、資金移動業と貸金業の両方を営む事業者が、資金移動業として預かった資金を貸し付けに活用するために防止する措置を、制度上求めるというワーキンググループからの提言です。

 

なぜ預金が銀行の独占業務となっているかというと、預かったお金を背景に貸し出しを行うことで、信用創造が可能になるからです。これは国家以外に銀行だけが、無からおカネを生み出せるということで、これを制限するために預金を制限していると考えられます。

 

ところが資金移動業者が預かったお金をもとに貸し出しを行えば、実質的に預金同様に信用創造が可能になってしまう。だからこれを禁止しようというわけです。

Googleの狙いは?

ここまで資金移動業者ができることを見てきましたが、では資金移動業者はどうやって収益を上げるのでしょうか。

 

1つは資金移動に伴う手数料です。これは単純な送金でいえば送金手数料になりますし、店舗の決済としての送金ならば決済手数料になります。ただし現在PayPayなどの決済手数料は無料キャンペーン中。10月1日から有料の予定ですが、楽天Payが3.24%なのを見ると、ものすごくもうかるというビジネスでもありません。クレジットカードを介して支払いが行われた場合、この料率からクレジットカードの決済手数料を支払うことにもなるからです。

 

2つ目は、割賦販売法に基づく後払いや分割払サービスの提供によって儲ける方法です。これは昨日の記事で解説しましたが、それなりに利益率の高いビジネスになるでしょう。

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3つ目は何か。おそらくこれが、Googleがこの領域に乗り出す最大の理由です。それはトランザクションに伴うデータの取得です。誰が、いつ、どこで何を買ったか。この情報は、ものすごい価値を秘めた情報であることは、ちょっと想像すれば分かります。

 

現在も、コード決済各社はこの情報を元に店舗にマーケティングデータを提供しており、ここから店舗の広告出稿につなげています。また、三井住友銀行は電通と組んで金融データを元にした広告配信を行うSMBCデジタルマーケティングを設立しました。金融データは、「Webで何を見たか」とは比べものにならないくらい、個人の重要な情報を含んでいて、ここから10年、このデータをどう活用するかがマーケティングのキモになるでしょう。

 

そんなわけで、Googleがpring買収で金融領域に参入してきたとき、決済手数料を稼ぎたいとか少額融資を行って金利を稼ぎたいとか、そんな普通の金融ビジネスを行いたいということよりも、広告に活用できる金融ビッグデータを取得したいという狙いのほうが大きいのではないでしょうか。

 

また店舗でのコード決済にはあまり強くないpringは、逆に個人間送金や法人から個人への送金に強みを持っています。Googleは、これをAndroidに組み込むことで、個人間送金という一見地味な部分を押さえ、おカネの流れをキーに、リアルなソーシャルグラフを把握しようとしている可能性もあります。誰だと誰がどんなリアルな関係にあるのかを最も押さえているのはLINEとFacebookですが、ここに割り込む切り口として送金を考えている可能性もあります。

 

昔から、AppleやGoogle、Amazon、Facebookが銀行業務に参入してきたら、金融は大変革するんじゃないか? と言われていました。今回のGoolge参入で、GAFA銀行への第一歩が開かれたともいえるかもしれません。どんなサービスが出てくるのかに注目です。

 

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