FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

今の株式相場の読み解き方 金融緩和の行く末から

オミクロン株の流行懸念で株式市場はそこそこ下落しました。これを「コロナが再び流行るから下落」と言ってしまうのは簡単ですが、その裏側ではもう少し込み入った理屈の連鎖があります。今回はそこを読み解いてみます。

金融緩和がもたらした株高

まずコロナ後に株価がどうしてここまで上昇しているのか? の背景から。コロナ禍によるロックダウンへの対策として、世界各国はさまざまな対応策を採りました。それは失業給付金であり一律の給付金であり、こういった直接給付によって家計の口座には現金が積み上がりました。

 

銀行口座にはお金があるが、旅行にも外食にもいけない。そんな状況でお金が向かったのが金融市場です。溢れた金によって株式が変われ、株価は上昇しました。これが1つ。

 

併せて、各国中央銀行は、金融緩和策を採りました。1つは金利の引き下げです。金利が下がるということは債券価格は上昇し割高になります。ここまで下がった金利は、今後さらに下がるというよりも上昇する可能性が大きい。つまり債券の利回りは小さくなっているだけでなく、今後値下がりの可能性もあります。そこで債券を売って、株式が買われました。

 

金利が低いということは、企業にとって借り入れが有利になるだけでなく、将来利益の割引率が下がることも意味します。つまり、将来成長してたくさん稼ぐことが期待されるいわゆるグロース企業の評価額が高まりました。グロース企業の多くはコロナ禍で需要が高まったネット関連企業であり、このこともグロース株高につながりなした。

 

2つ目の金融緩和策が量的緩和(QE)です。これは、中央銀行自体が株や国債、社債などを買い入れるというもの。資産価格下落による金融危機を防ぐだけでなく、金利引き下げと同じように景気刺激策となります。

 

このように、「給付金」「利下げ」「量的緩和」によって、コロナ禍直後の株高は起こったわけです。

正常化を目指す道のり

これらの施策は当然財政を圧迫します。リーマンショック後がそうであったように、どこかで反転して増税、利上げ、量的緩和の削減を行わなくてはいけません。

 

ここで押さえておきたいのが、中央銀行のミッションです。中央銀行の本質的な役割は2つあって、インフレの抑制と、雇用の維持です。つまり、いずれの政策も、デフレを避け、コロナで失われた雇用を回復するために行われたわけです。

 

そのため、中央銀行の政策が反転するきっかけは、インフレ率と雇用の状況になります。米国の経済指標でインフレ率と雇用統計が常に注目されるのはこのためです。

 

1つ目、インフレ率は大きく回復し、それどころか10月は6.2%とかなり高い水準になりました。もっとも、これは昨年対比なので、コロナで落ち込んだところからの反動でもあります。焦点は、今後のインフレ率がどうなるかです。

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雇用のほうは、コロナ禍での落ち込みから順調に回復しつつありますが、まだコロナ前の水準には至っていません。

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経済正常化で市場はさらに上昇へ 米雇用統計から読み解くコロナ後の回復シナリオ | TRILL【トリル】

12月3日に出た雇用統計では、少し不可思議な数値となりました。雇用増大数(グラフ上)は減速し、伸びはわずかでした。一方で、失業率(グラフ下)は失業率がさらに低下し4.2%となりました。

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これらの数字の見方はともかくとして、次が中央銀行の根本的な方針です。

  • インフレが続くようなら利上げを早く行う
  • 雇用が回復するようなら利上げを早く行う

米FRBの政策の行方

ここまでをまとめると、ざっくり下記のようになります。

  • 今回の株高は、中央銀行による金融緩和がもたらした過剰流動性相場
  • 利上げと量的緩和は、インフレと雇用の状況で実施
  • 利上げと量的緩和削減が起きれば、株式相場は逆回転

量的緩和については、すでに11月15日からテーパリングを開始しました。これは買い入れる額を縮小する取り組みです。このテーパリングがいつ行われるかが市場の焦点でしたが、11月にスタートが確定した時点で、注目は利上げに移っていました。

 

さて、利上げです。インフレが高まるようなら利上げが必要です。ただし直近のインフレは昨年の反動であり、2022年に入れば次第にインフレが落ち着くというのが大方の見方でした。

 

ところが、11月30日に行われたFRBパウエル議長の議会証言です。

  • インフレ上昇リスクは拡大している
  • インフレが「一過性」との表現を削除するのが妥当な時期が来た
  • 労働参加率が横ばいで推移していることは非常に意外
  • 労働力参加率が横ばいになっている理由の大部分は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)
  • 労働力参加率の回復には時間がかかる
  • 高インフレの可能性が完全雇用回復に向けたリスク
  • インフレ率上昇の脅威は高まっている
  • 来年中にインフレ率は低下するというのが基本シナリオ
  • インフレがより長期化するリスクは高まっている
  • インフレ率上昇の定着を避けるべくあらゆる手段を行使する
  • 来年半ばまでは高インフレが続くと予想
  • 〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の議会証言要旨 | ロイター

つまり、インフレは一過性ではなく長期化する可能性があり、対策が必要だという趣旨が読み取れます。ただし市場では、早期利上げではなくテーパリングの加速を見ているようです。

どうなるインフレ?

このように、今後の株式市場の行方は、インフレをどう見るかが最大の焦点です。ではインフレはどうなるのか?

 

まず現在のインフレがなぜ発生しているかというと、典型的なコストプッシュインフレです。つまり、原材料の価格が上昇したことによるインフレです。景気がよくて需要が増え、それによってインフレになるのがデマンドプルで、こちらは問題ないインフレ。しかし、景気がいまいちなのにコスト増大でインフレになるコストプッシュインフレは、景気後退とインフレが同時にやってくるスタグフレーションの恐怖があります。

 

ではなぜ原材料価格が高騰しているのか。もちろん原油高はありますが、同時に新興国でのコロナ禍拡大によるサプライチェーンの混乱が背景にあります。半導体不足が叫ばれて久しいですが、最近は「東南アジアで作っている部品が入ってこない」という悲鳴が各所から出ています。東南アジアでコロナが収まらないため、工場が休止になり、部品が製造できないのです。

 

オミクロン株が蔓延すると、これがさらに拡大する可能性があります。欧州と米国の感染者数が多いのは変わりませんが、秋に入ってからオセアニアの感染者数が急拡大しています。

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人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移【世界・国別】

下記のグラフでもベトナムの感染増加ペースは急拡大していますね。

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チャートで見る世界の感染状況 新型コロナウイルス:日本経済新聞

 

翻って、米国でも足下のコロナ感染者数は再び増加ペースに転換しました。もしコロナ感染が再び拡大するなら、経済活動を止めなくてはならず、併せて金融緩和も必要になるかもしれません。一方で、インフレは着々と進行しており、これが一過性でないなら早期退治のために金融引き締めが必要です。

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いやはや、難しい状況に入りました。この難しさを反映して、株式市場も乱高下している……。そんなふうに見ています。

 

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