FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

水瀬さんの新著 『彼はそれを「賢者の投資術」といった』拝読

水瀬ケンイチさんの新著を献本いただきました。『彼はそれを「賢者の投資術」といった』は、インデックス投資全盛の現代における、個人投資家の最高の手引書だといえるものでした。

 

インデックス投資で最も難しいのは、相場の変調で何度も売ってしまいたくなったときに、どう踏みとどまって投資を継続するかです。というか、それ以外に難しいところはありません。

 

ではどうやって踏みとどまるか。そのヒントが、本書では水瀬さんの体験として赤裸々に語られています。インデックス投資を始めたばかりの人こそ、読んでほしい。そんな本でした。

貯金ゼロからのインデックス投資

本書の冒頭は、貯金ゼロの頃の水瀬さんの思い出から始まります。

 20代単身世帯の平均貯蓄額は約150万円から200万円程度という無情な文章が表示された。私は貯金ゼロ。しかも車二台分のカーローンも抱えている。背筋が一瞬寒くなるのを感じた。――ここから私水瀬ケンイチの25年にわたる資産形成の挑戦が幕を開けるのである。

今でこそ、2億円を超える資産を持つ水瀬さんですが、実はこんな時代もあったのですね。水瀬さんの本はほぼすべて読んでいて、過去の体験談も一通り読んだつもりでした。ただ、ここまで典型的な「貯金できない男」からスタートしたというのは、すごく親近感が湧きます。

 

何を隠そう、ぼくも20代はひどくて、給料は悪くなかったのにそれを全部使ってしまい、さらにはクレジットカードの支払い額が給与を超えてしまい、ボーナスで返すことを当てにしてキャッシングをして凌ぐというのが日常という生活を送っていました。それでも水瀬さんも言うように、「一応生活できているんだからいいか」という気分だったのです。

 

さてそこから投資しなくては!と思った水瀬さんの行動力がすごい。

 土日に図書館3〜4カ所を車ではしごして、金融経済の棚を片っ端から読んでいった。今の自分に必要なのは「手間がかからない投資法」だ。

この「その分野の入門書を10冊くらい一気に読む」というのは、ある分野に習熟するための第一歩としてとても効率的な方法です。僕も新分野を学びたいときはよくやります。ただベストプラクティスではあるのですが、けっこう大変。これをさらっとやってしまう水瀬さんは、まぁさすがですね。

暴落を疑似体験する

さてインデックス投資においては、テクニック不要、昔はともかく、今ならひたすらオルカンを買い付けるだけ――という、とてつもなく簡単でかつ実効性のある方法なのですが、一つだけ落とし穴があります。それは途中で辞めてしまいたくなるということです。

 

水瀬さんは、テクニカル分析、ファンダメンタルズ分析から入り、そこに納得できず大きな利益も出せず疲弊してインデックス投資にたどり着くという道をたどりました。こうした経験が、暴落時に、インデックス投資を止めて個別株などに移行することを戒める役割を果たしました。

 

また、リーマンショックを経験したことも大きな糧となりました。コロナショックが襲ったときも、

 ただ、この感じ、初めてではない。

 過去の経験からこういった危機的状況で、パニック売りをしてしまうことが最も損失を確定させる行動だと言うことを肌身で感じていたからだ。

と、リーマンショックを思い起こしながら、冷静な行動を取ってきました。

 

本書の価値の1つは、自分でリーマンショックを体験したことのない人でも、水瀬さんの経験を疑似体験することで、インデックス投資に必要な握力を身につけることにあります。

ロジックを身につける

もう一つはロジックです。インデックス投資は単に積立を続けるだけなので、理屈的には別にロジックを知る必要はありません。でも、ロジックを知ることで、続けられる、持ち続けられる、投資を継続できるという利点があるのです。

 なぜ長期投資が良いのか、なぜ分散投資が良いのか、なぜ投資タイミングを見計らうなくても良いのか、バイ&ホールドでも株価は上がるのか、最適な資産配分とはどのようなものかといった、インデックス投資に対する自分の中の疑問について本やWEBサイトを徹底的に調べて、投資セミナーにも参加して、インデックス投資のロジックを自分の中に腹落ちさせていった。

本書の後半では、この「インデックス投資を継続するための理論」について具体的な例を挙げながら、多数紹介されています。なかなかに「ほほー!」と思う内容がありませんか。

  • 緊急資金を持たない投資家は、市場暴落時に資金が必要となり、最悪のタイミングで投資を引き出す確率が3倍高くなる( JPモルガン・アセット・マネジメント)
  • 初心者投資家の約61%が市場のタイミングを図ることが投資成功のカギと考えているが、実際にはタイミングを図ることが長期的なリターンを損なう主要因となっている(チャールズ・シュワブ)
  • 多数のファンド保有することによる過剰分散がリスク調整後にリターンを低下させる可能性がある(ダートマス大学スクールオブビジネスのケネス・フレンチ教授)

インデックス投資が根付いたこの国で

もう一つ、初期からのインデックス投資家は、水瀬さんの投資歴を振り返りながら、日本の投資環境もすっかりよくなったね!と振り返るという楽しみ方もあります。僕自身、2007年あたりだったでしょうか、

 米国市場に上場されている海外ETF(IVV、EFA、EEM)などが、日本のネット証券でも売買できるようになった時は、「ついに日本のインデックス投資の夜明け!」とお祭り騒ぎだった

頃、水瀬さんのブログ『梅屋敷商店街のランダムウォーカー』の読者としてインデックス投資に足を踏み入れた一人です。その後も、新しいインデックス投資商品が出た、とかより低コストのインデックス投信が出た、など水瀬さんのブログから学ばせていただきました。

 

ほんの10数年前まで、投資といえば「どの銘柄がストップ高だったか」というような情報が価値を持つような世界だと思われていて、モダンポートフォリオ理論とか、最小分散ポートフォリオとか、そんな確率と期待値の世界ではなく、切った張ったのギャンブルに近いものだと思われていました。それが今や、投資といえばインデックスです。

 個別株トレードの派手な儲け話が飛び交う中で「市場平均と同じリターンで満足する」という考え方は、当時の日本ではほとんど理解されなかった。しかし今では「投資初心者はまずインデックスファンドから」と言うのが常識になりつつある。

このように日本でインデックス根付いた背景には、水瀬さんを筆頭とするインデックス投資家の方々による啓蒙活動、また金融業界への働きかけがあったと思っています。

 

最後に、本書のタイトル『彼はそれを「賢者の投資術」といった』の「彼」とは、経済評論家の故・山崎元さんのことです。業界から文句を言われながらも、投資家の立場に立って論理的に正しいことを言い続けた山崎さんも、今の日本の投資環境を形作る上で、大きな貢献をされました。本書は山崎さんへの追悼書でもあると思います。

 

www.kuzyofire.com

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