
仮想通貨が絶好調です。ビットコインは日本円で1800万、イーサリアムは70万円を超えて、それそれ過去最高値を更新中。ぼくは総資産のうちBTCが11%、ETHが7%ほどを占めているのですが、これだけのシェアがあると、相応の影響があります。
順調なBTC、急回復のETH
ビットコインはこのところ米国株式と歩調を合わせていて、2023年の底から2年半でだいたい10倍くらいに上昇しました。多少の調整はあったものの、ほぼ右肩上がりです。一方のイーサリアムは、2021年につけた高値をなかなか超えられないでいましたが、今回それを突破。過去最高値を更新中です。

ドル建てでみると、BTCは12万3500ドルに到達。ETHは4736ドルとなり、2021年末の4700ドルを抜きました。5年間の騰落で見ると、BTCが+930%、ETHが+990%。それぞれだいたい10倍になった計算です。
円建てでみると、この間円安が進んだこともあり、さらに好調です。BTCは1800万円超え、ETHは(一時)70万円を超えました。騰落で見ると、BTCが+1320%、ETHが+1400%。なかなかに刺激的ですね。

クリプトが社会に受け入れられ上昇するメカニズム
ではなぜビットコインやイーサリアムなどのクリプトがこれだけ上昇しているのでしょうか。当初、個人投資家が投機目的で触れることの多かった仮想通貨ですが、潮目が変わったのは企業や国家の向き合い方です。
2020年には米国の大企業がビットコインへの対応を改めて進めました。クリプトの決済ネットワークを使うのではなく、従来の決済ネットワークを使う形ですが、その支払ソースとしてクリプトが選択肢に入ってきたわけです。日本では法的な縛りもありほとんど普及していませんが、米国でECや寄付をするとき、支払い方法としてビットコインが含まれることは一般的です。このときのビットコイン価格は130万円くらいでした。
2021年にはエルサルバドルがビットコインを法定通貨化して世界に衝撃を与えました。テッキーのおもちゃと見られていた仮想通貨でしたが、曲がりなりにも国家が正面から向き合うようになった、エポックメイキングな出来事でした。
2024年にはついにビットコイン現物ETFが承認されました。これまで機関投資家にとってビットコインというのは投資するハードルが高かったのですが、これによりビットコインへの投資への門戸が開けました。一般投資家にとっても株式などと並ぶ投資対象と見られるようになり、大量の資金が流入。この頃のビットコイン価格が700万円くらいです。
2025年の仮想通貨は、トランプ大統領なしでは語れません。就任後、仮想通貨の米国戦略備蓄構想を発表したり、自らミームコインを販売したり、積極的な仮想通貨推しを進めます。昨今では、米個人向けDCである401kへの組み込みを認めるなど、仮想通貨の長期保有にお墨付きを与えるような法案が次々と可決されました。
さらにビットコイン戦略保有企業がBTC取得ペースを早めています。その代表が米マイクロストラテジー、日本だとメタプラネットなどです。各社は増資したり社債を発行し、その資金でBTCなどを購入しています。マイクロストラテジーはすでに628,791BTCを保有しており、これは発行済BTCの3.15%にも達しています。こうした企業の買い圧力も価格上昇に寄与しています。
注目のイーサリアム
こうした大きな流れの中で、出遅れていたイーサリアムにも光があたってきました。ビットコインと同時期にETFが承認されたイーサリアムですが、最近になって追い風が吹いています。
例えば、機関投資家のETFH需要がビットコイン(BTC)へのエクスポージャーを上回る局面が見られたことです。2025年8月のある2日間では、ETH関連ファンドに15.4億ドルが流入したのに対し、BTC現物ETFへの流入額は約2億4400万ドルにとどまりました 。これは、機関投資家が単なる「暗号資産」というカテゴリーではなく、イーサリアムの持つ独自の価値に戦略的に資金を配分していると考えられます。
次に注目されている未解放の触媒が、ETF内でのステーキングの承認です。アナリストは、これが実現すれば市場構造を劇的に変える可能性があると予測しています。現在のベーシス取引(現物と先物の価格差を利用した取引)から得られる年率7%程度の利回りに加え、約3%のステーキング利回りが上乗せされれば、レバレッジなしでも年率10%の利回りが期待できます 。
配当のようなものを持たないビットコインに対し、保有するだけでステーキング収益が得られるイーサリアムは、ETF承認直後から「インターネット債券」などとも呼ばれ、期待されていました。トランプ大統領のSECに対する姿勢を見ると、ETHに対する規制が強まる感じはなく、早晩ステーキングETFが実現しそうです。
また、ビットコイン戦略保有企業に続き、最近はシャープリンク・ゲーミング(SharpLink Gaming)などイーサリアム戦略保有企業も元気です。同社はイーサリアムの保有高を20億ドルまで増やすことを目標として資金調達を続けていて、今後の買い圧力はさらに高まると思われます。
Pectraアップデート
変わらないことが価値のビットコインとは違い、アグレッシブに改善・改良が続いているのもイーサリアムの特徴です。5月に行われた「Pectra」アップデートの成功も追い風です。
実はPectraアップデートは実はカストディや機関投資家にとってメリットをもたらしました。アップデートによって、1つのバリデーターが受け持つことができる有効残高の上限が、従来の32 ETHから2048 ETHへと大幅に引き上げらたのです。
これにより、大量のETHを保有する機関投資家やカストディは数百ものバリデーターノードを個別に運用する必要がなくなり、運用を簡素化できるようになりました。また、単一のバリデーター上でステーキング報酬を再投資する「真の複利運用」も可能になったのです。
こうした順次のアップデートにより、イーサリアムの分散型金融(DeFi)エコシステムにロックされた総価値(TVL)は、約921億4000万ドルに達しています。これはDeFiエコシステムのうち59.5%を占めていて、DeFiの中心でありつづけています。
Pectraアップデート後はTVLも上昇基調にあり、先日過去最高に近づいています。

このように、徐々に社会に受け入れれてきた仮想通貨。日本では来年にも分離課税20%化も予定されています。「あんなものは投資対象じゃない」とボロクソに言っていた人たちも、最近は「私は買わないけど……」くらいに表現が柔らかくなってきました。そして初期から信じて持ち付けてきた人は、かなりの資産額になっています。
ファンダメンタルズがない――ということは、どれだけ上昇しても上がりすぎとは言えないということです。ビットコインもイーサリアムも、ここからまだ10倍、20倍を目指せると踏んでいます。ただし、増えすぎてもアセットアロケーションが歪むので、税金的に無理のない範囲で売却を続ける予定です。