昨年秋に、ボルボのEVに乗り換えました。69kWhという大容量バッテリーを搭載しながらB+セグメントというコンパクトさが特徴。数カ月乗ってみたので、EVにまつわる賛否両論の言説について評価していきたいと思います。
神話1 EVは長距離移動に向かない
まずやっぱりこれですね。「EVは長距離移動に向かない」のは本当か。ぼくのEX30はUltora Twin Motorなのでスペック上の航続距離はWLTCモードで535kmです。この数字を鵜呑みにすると、片道200kmくらいの行程は余裕そうじゃないですか。
ところが実際のところ、バッテリー100%まで充電しても車載モニタ上の走行距離は400km程度。そして実際には400kmは走れません。350kmくらいがいいところ。スペック表の7割弱というのが実際です。ガソリン車の燃費もカタログ値とは大きく違いますが、EVの場合、旅行プランなどにも影響するので困りものですね。
肌感的には、電費を悪化させる要因は次の2つです。
- 暖房
- 高速走行
暖房は如実に電費を悪化させます。真冬にヒーター全開にすると、ガソリン車とは違い、すぐに温風が出てくるという利点はありますが、電気消費も激しい。EX30はヒートポンプ式なので、消費電力は1〜3kW程度と思われますが、1時間使えば1〜3kWhの消費、5時間で5〜15kWhです。69kWhのバッテリーに対しての影響は小さくありません。
そのため電気を節約したいとときは100W程度(0.1kW)程度しか消費しないシートヒーターを多用することになります。まぁこれは眠くなるくらいあったかくて気持ちいいです。
それから高速走行は電費が悪化します。ガソリン車は中低速の効率が悪いため高速道路の一定速度走行で燃費が改善しますが、モーターの効率は速度域によらずほぼ一定。逆に、速度の2乗に比例して増大する空気抵抗が、ダイレクトに電費を悪化させます。
下記は典型的なEVの速度と電費の関係です。極低速域では補機の消費電力の比率が上がり電費は低下。最も効率がよくなるのは時速50km前後だと言われています。そこからは空気抵抗の増大によって急速に電費は悪化。時速100kmで50km時の半分くらいまで落ち込むイメージです。

そしてもう一つ、上り坂での電力消費が大変厳しい。シンプルな話で計算で出せるわけですが、海抜0mから標高1000mまで登るのに、効率85%くらいと仮定して3.0kWh/トンを消費します。2トンのEVなら6.0kWhを消費する。EX30でいえば上昇分だけでバッテリーの10%を使うわけです。
ただ、登った分は下りの回生ブレーキで回収できます。これがEVのいいところ。実際、山から下るときは麓まで数十キロ走っても、まったくバッテリー残量が減りません。とはいっても回収効率は20-70%程度といわれていて、山を昇り降りするロスはけっこうあるのです。
こうした特性が問題になるのは、冬のスキーでした。首都圏から片道200〜400kmくらい距離があって、高速道路走行がメインで、暖房をたきながら標高1000mくらいの山を登る。はっきりいって、EVにとって最悪の条件が揃い踏みです。最初にEVでスキーに行ったときはヒヤヒヤものでした。何しろ、行きに途中のSAで充電を挟んだにもかかわらず、スキー場到着時には残量が10%程度になっていたのですから。
下りは残量が減ることなく高速道路のICまでたどり着けたので大丈夫でしたが、正直ヒヤヒヤしていました。
そんなわけで、EVで長距離走行するなら、特に冬、山へ行くなら、いろいろ厳しいと思ったほうがいいです。WLTC535kmだから、「200kmのスキー場往復は余裕だね」というのは大きな勘違いでした。