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SpaceXは実は3つの会社だった──史上最大IPOをどう評価するか

SpaceXが来週にも上場します。報道によると、ナスダックへのIPOで1株135ドルで750億ドルを調達する予定です。評価額は約1.8兆ドルです。では、SpaceXはどんな事業をやっている会社で、どう評価すればいいのでしょうか? 紐解いていきます。

日本の証券会社でSpaceXのIPOに申し込める

史上最大級のIPOとなるSpaceXのIPOは、1.8兆ドル規模というとんでもない大型上場です。現在の時価総額ランキングを見ると、トップのNVIDIAが5.39兆ドルですが、7位のTSMCは1.95兆ドル、8位のサウジアラムコは1.76兆ドルです。SpaceXが1.8兆ドルで上場したら、いきなり世界ランキング8位に躍り出ることになります(ちなみにTeslaは1.59兆ドルで、9位)。

 

このSpaceXのIPOは国内証券でも申込み可能になる見通しで、みずほ証券、楽天証券、SBI証券が発表しています。

国内でも上場にあたり、486ページにも及ぶ有価証券届出書が出ています。

SpaceXは実は3つの会社

SpaceXは実は3つの会社が合体したものだと考えると、内容をよく把握できます。

 

1つはコネクティビティ。つまりStarlinkです。衛星インターネット事業で、唯一の黒字事業です。2025年の売上は113.9億ドルで、対前年50%成長。営業利益は44億ドルで、利益率もいいですね。加入者は2026年3月末時点で約1030万人、164カ国地域に展開しています。ピッカピカの優良事業で将来性も抜群です。

 

2つ目はスペース、つまり打ち上げ事業です。NASAの打ち上げ受託などでも知られますが、実は外部顧客向けの打ち上げはほとんど伸びておらず、2025年の売上は41億ドル、対前年比で8%の伸びでしかありません。Falcon 9は165回打ち上げられましたが、外部顧客むけは43回で、実は4分の3近くが自社のStarlink配備に使われています。営業損失は6.57億ドルの赤字で、これはStarshipの研究開発に30億ドルを使ったから。打ち上げ事業は、ビジネスの状況だけでみるとStarlinkのためのコストセンターです。

 

3つ目がAIです。2026年2月に、SpaceXはxAIを買収しました。これはAIデータセンター、Grok、Xを含みます。このxAIは超絶大赤字で、2025年は60億ドル超の赤字。ハイパースケーラと並んでAIインフラ開発競争にも参入しているし、OpenAIやAnthropicと向こうを張って基盤AIの開発も行っているし、儲かる感じのあまりしないXもここに入っています。

ガンガン成長していて儲かっているStarlinkという優良事業に、それを支えるインフラながら火星行きのStarshipにガンガン金を使い、さらにAIインフラ+AI基盤モデルという超絶金を食う事業もセットになって、全体としては赤字というのがSpaceXです。

直近の成長率

さて2026年の1-3月の状況も見ておきましょう。各セグメントの成長感が分かるからです。

 

まず成長の主役はStarlinkです。YoYで+32%。素晴らしいですね。一方でロケット打ち上げのSpaceはYoYで減少。Starlink衛星の打ち上げは売上にカウントされないので、まさにインフラ、コストセンター扱いになってきています。面白いのは、AIがSpaceの売上を上回ったことでしょうか。

 

一方で、全体としては損失が拡大しました。赤字企業の赤字拡大です。要因は研究開発費の増加で、AI開発で大きく研究費が伸びたほか、Satarshipの投資も増えました。

 

つまり、SpaceXは今やロケット打ち上げ企業ではなく、衛星通信が急成長して高利益を上げている会社です。そして伸び余地としてはAI事業がAnthropicやOpenAIのように化ける可能性があります。さらに、Starshipが本格稼働すれば、他にない圧倒的な技術ということになります。ただSatarshipが事業化されるのは相当先でしょうけど。

アナリスト評価額は750億ドル

ではSpaceXのIPOは買いでしょうか? Morningstarのアナリストは公正価値を7800億ドルと算定しています。IPO目標の半分以下です。

 

その内訳を見ると、こうです。

  • Space+Starlink事業 6110億ドル
  • AI事業 1700億ドル

2026年の売上ベースでも、PSレシオは111倍に達しています。ちなみにNVIDIAは13倍、Appleは10倍、Teslaでも14倍です。超割高なわけです。

3つのシナリオ

とはいえ、SpaceXのIPOは割高すぎると言い切ることもできません。2030年前後あたりに向けた、3つのありそうなシナリオをみていきます。

 

まずは強気シナリオ。Starlink加入者は継続的に成長し、Starshipも高頻度運用に近づく。そしてAI事業事業も外部顧客向けに収益化に成功するというもの。時価総額は1.8兆〜2.7兆ドル規模目安です。

 

次に標準シナリオ。成長は続くが利益化は遅れるというもの。Starlinkは成長するものの、Starshipは完全再使用や商用運用には遅れ。AIは成長するが投下コストも増加し収益化には時間がかかるというものです。時価総額目役は0.9兆〜1.25兆ドル。

 

最後に弱気シナリオ。StarlinkはARPUが徐々に低下していますがそれが加速。Starshipは開発遅延。AI開発はコモディティ化して赤字は拡大。時価総額目安は4500億〜7500億ドル。

 

さて、投資家目線だと、SpaceXは「ロケット会社」ではなく、衛星通信のStarlinkを中核とする通信インフラ会社です。そこにStarshipとAIインフラの巨大なオプションが乗っています。

 

Starlink単体では0.6兆ドルがいいところで、1.8兆ドルのIPO目標には、StarshipとAI事業の可能性が1兆ドル以上乗っている計算です。AnthropicやOpenAIが1兆ドル規模のIPOを予定していることを考えると荒唐無稽とはいいませんが、正直、xAIのGrokは開発競争ではかなり後塵を拝しています。

 

それから、デュアルクラス株式によって、イーロン・マスク氏は株式の42%、議決権の85%を握っていることにも注意です。すべての決定をマスク氏が一人で決められる構造です。何をしでかすか分からないという意味では、これがSpaceXを買う最大のガバナンスリスクだともいえそうです。逆にマスクファンにとっては、不明確な事業に対する1兆ドルの上乗せ価値を正当化するポイントだともいえるでしょう。

 

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