日本の投信のトップを独走する「オルカン」ことeMAXIS Slimオールカントリー・インデックス。これほどまでにインデックス投資が市民権を得るなんて、10年前は想像もできませんでした。その背景には、インフルエンサーやFP、そして金融機関の中の人も「オルカン推し」だったりするわけですが、いざ「実のところ何買ってますか?」と聞くと、違うものを買っていたりするのです。
- 表面上はインデックス推しだけど……
- 仮説1 投資は資産形成の手段ではない
- 仮説2 自分はうまい投資法を知っている
- 仮説3 インデックスと言っておくほうが安心
- 仮説4 インデックス投資は面白くない
- で、九条はどうなの?
表面上はインデックス推しだけど……
最近、誰がとはいいませんが、「初心者にはインデックス投資がオススメ」「難しいことを考えずインデックス投資で十分」と、インタビューや各メディアで語っている人が増えました。
ところがそうした人たちに個人的に会って、「実のところ何を買ってるんですか?」と聞くと、けっこうな比率で「他人にはインデックスをオススメするけど、自分自身は違うものを買っています」と答えるんです。
あれ? インデックス推しじゃなかったの? どうして自分ではインデックスじゃないの? 現業不一致なの? さて、なぜこうした投資の専門家たちは、周りにはインデックス投資を勧めるのに、自分自身は異なる投資を行うのでしょうか?
仮説1 投資は資産形成の手段ではない
1つ目の仮説は「投資を資産形成の手段」だとは考えていないというものです。というのも、こうした投資専門家の多くは、金融機関に所属していてかつ講演や出版などの機会にも恵まれています。つまり、ものすごく所得が高い人が多いのです。
もちろん証券会社や運用会社の人たちの誰もが年収がバカ高いというつもりはありませんが、金融機関の年収はほかの業種に比べても高く、さらに外資系とかになるとさらに跳ね上がります。
話を聞いた一人は、給与や副業の収入だけで資産はできてしまうので、投資については趣味的にやっているということでした。
仮説2 自分はうまい投資法を知っている
”初心者には”インデックス投資をオススメします、という表現をする人は、本音では”上級者ならインデックスより良いものがある”と思っている人がけっこういます。つまり投資観としては、一部の優れた優れた投資家は、継続的に指数を上回る投資結果を出せると考えているわけです。
これがたまたまなのか、実際に指数を上回り続けられる実力を持っているのかは分かりません。でも、少なくともこれまでの投資歴において指数に打ち勝ってきたということが、今のスタンスにつながっているのでしょう。
こういう人が他人に投資を説明する場合、方向性は2つに分かれます。一つは「ぜひ勉強して勝てる投資ができるようになろう!」というもの。二つ目が「初心者はインデックス投資がオススメ」というものです。
ある著名インフルエンサーは、自分は違う投資法だけど、初心者はインデックス投資がオススメスタンスですね。
仮説3 インデックスと言っておくほうが安心
別に投資の手法なんて人の数だけあればいいのですが、インデックス投資については、他の手法を非科学的、非論理的だといって認めない「インデックス投資教過激派」の方もいます。
そしてインデックス投資のほうが理論が明快で、説明しやすいんですよね。ただし、世の中には半分くらいのポジションがインデックスに勝っているということも忘れてはいけません。
となると今は「俺はインデックスを超えられる!」と声高に叫ぶと、インデックス投資教からも「適当なことを言うな!」と非難されるし、メディアからも「インデックスに勝てるとおっしゃる理由を取材させてください」という話になる。
でも「なぜインデックスに勝っているのか」は、単一の理論として説明できないんですね。まぁそれは当たり前で「こうやったらインデックスに勝てる」とエビデンスやロジックで説明できるなら、それはすぐに世間に知れ渡り、インデックスの成績に織り込まれてしまいます。つまり、インデックスに継続して勝っている人は、その手法を説明できないか、する気がないか、どちらかだということになります。
世の中がこれだけインデックス一色だと、理論派の人であるほど、「インデックスがいいよ」以上のことは言えない(言ったら非難されるか、アカデミックな意味でバカにされる)のでしょう。
仮説4 インデックス投資は面白くない
確率的に儲かる確率が高いのがインデックス投資だと信じていても、それでも個別株投資に手を出す人もいます。それはなぜかというと、シンプルに「インデックス投資は面白くない」からです。
インデックス投資理論を研究している大学の先生ならともかく、金融機関の中の人の場合、口ではインデックス投資がイイデスヨと言っていても、隣の席では世界経済の動向を研究していたり、企業の決算を分析したりしています。こういう情報にニーズがあることをよく知っているからです。
そして「今年後半の金利の動向はこうだ」とか「AI銘柄でこれから業績が伸びるのはここだ」みたいな話を聞くことが多いのに、そこに投資しないというのは面白くありません。そうでなくても金融機関では業務に近しい領域での個別株投資は禁止されている場合が多いのです。せめて投資信託ならアグレッシブなアクティブを選びたいし、許されているなら個別株も触りたい。この気持ちは分かります。
で、九条はどうなの?
では九条はインデックス投資家を自認していますが、お前はどうなのかと。ぼくも他人に投資法を聞かれたら「インデックスがオススメ」と答えます。そのくせ、自分では資産の35%しかインデックスに入れていません。ほかの50%は、現金でも債券でもなく、多種多様な投資先に投資しているわけです。
なぜか。答えの半分は仮説3の「インデックスと言っておくほうが安心」です。自分自身で自信のある投資対象でも、下手に他人に推奨すると失敗したときにあーだこーだ言われます。そんなリスクは取りたくないというのが理由です。自分だってそこまで自信がないから、リスク資産の半分くらいをインデックスにしているわけで。
残りの半分は仮説2の「自分はうまい投資法を知っている」です。個別株や仮想通貨がその代表例ですが、特に説得力のある理屈があるわけではなく、定性的な理論と過去の成功体験から投資しているわけです。言ってみれば思い込みです。
なおポートフォリオに現れない優待クロスとかの短期投資は、完全に仮説4の「インデックス投資は面白くない」です。人はどうしてもほったらかしで投資はできません。勉強すればするほど、売買したくなってしまうのが人情です。そんなときクロス取引ならどれだけ売買しても値動きで損失を被ることがありません。売買手数料と金利分だけの損失で済むのです。
まぁいろいろ考えてみましたが、インデックスは一つの正解だとして、みんな自由に投資すればいいじゃないですか。最近「インデックスは貯金みたいなもの」みたいな言説をXで見ることも増えてきて、さすがにそれはインデックスを盲信しすぎでしょうと思ったりします。
インデックス投資はあくまで平均点であり、長期で投資すれば、元本を上回る確率が高く、債券運用のリターンを超える可能性が高いというだけのものです。実質的に無リスクとされてている銀行預金*1や国債(先進国の国債はデフォルトしないことになっています。))とは違い、あくまで可能性が高いだけなのです。それは便利な投資手法だし、誰にでもオススメできるものですが、ほかの投資法を否定するほどのものでもないよねと、最近よく思います。
*1:言うまでもなくい1行あたり1000万円上限。