FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

安定するビットコインと、バブル化するビットコイン戦略保有企業

ビットコインは1500万円前後で安定が続いていますが、一方でバブルの様相を帯びているのがビットコイン戦略保有企業です。米国のストラテジー(旧マイクロストラテジー)を筆頭に、日本でもメタプラネット、リミックスポイントなどがビットコインを継続的に購入し、株価が急上昇しています。

日本でも相次ぐビットコイン戦略保有企業

ビットコイン戦略保有企業とは、資産の一部または全部をビットコイン(BTC)で保有することを戦略として採用している企業を指します。ただし、多くの場合、余剰資金をビットコインに振り分けるのではなく、社債などを発行してビットコインを購入します。企業の形を取っていますが、実質的にはビットコインETFと同様の、ビットコインの箱として機能する形です。

 

最も有名なビットコイン戦略保有企業は米ストラテジーです。旧社名はマイクロストラテジーで、2020年から戦略的にビットコインの購入を開始。現在は、592,100BTC=約9兆円分 という多額のビットコインを保有しています。

 

日本でも複数の上場企業がビットコインを戦略的に買い集めています。

  • メタプラネット 10,000BTC 2027年末までに21万BTC保有目指す
  • リミックスポイント 1051BTCなど、時価評価171億円相当の仮想通貨
  • マックハウス 17億1500万円
  • gumi 80.3BTC 10億円相当
  • ANAPホールディングス 2025年8月期末までに1000BTC以上 80億円を投じる

最も有名なのはメタプラネット。通称メタプラで、「ビットコイン財務企業」をうたい2024年4月に10億円を費やしてビットコイン(97.8519BTC)を購入。「資本市場を活用してビットコインの相補有料を増やし、1株あたりのBTCを成長させています」とうたいます。

 

リミックスポイントも1051BTCなど複数の仮想通貨を保有し、総額171億円相当の仮想通貨を保有します。エネルギー事業を営む同社ですが、2024年9月に15億円の仮想通貨購入を発表して以来、買い増しています。

その他衣料品のマックハウスやゲームのgumi、アパレルやエステ事業などを営むANAPホールディングスもビットコインを購入。その数は増加しています。

跳ね上がる株価

ストラテジー社もそうですが、ビットコイン戦略保有企業の株価は跳ね上がっています。下記はメタプラネットの株価。2024年4月のBTC保有発表からグイグイと上昇し、2024年初頭からだとなんと+1万%(=100倍)の上昇です。

ストラテジー社は5年前の2020年から見て、+3000%(=30倍)です。これはS&P500(+94%)やNVIDIA(+1476%)と比べても驚くべき上昇です。

この株価は正当化できるのか?

ただちょっと注意が必要なのが、ストラテジーにせよメタプラネットにせよ、上昇の理由はビットコインの大量保有なのですが、ビットコイン自体の価格よりも大きく上昇しているのです。

ストラテジーの保有するビットコインは592,100BTC。この評価額は約9兆円ですが、ストラテジーの時価総額は15兆円に達しています。約1.6倍です。もちろんストラテジーはビットコイン以外の本業もあるので、その分も評価されているわけですが、それでも15兆円という巨大な評価額の裏付けはビットコインのはずで、それを超える価値をどう評価するかは難しいところです。

 

メタプラネットに至っては、保有ビットコイン数が10,000BTC、評価額1520億円ですが、メタプラネット自身の株価から導かれる時価総額は1兆円を超えています。倍率は7倍以上です。

 

ビットコイン保有企業の価値は、基本的には保有しているビットコインの価値になるはずで、その7倍以上の値段がついて株式がやり取りされているのは過剰評価にしか見えません。メタプラネット自身も、ここについては説明が必要だと考え、「なぜ当社(メタプラネット)はNAV(保有BTCの価値)に対してプレミアム(割高)で取引されるのか」というスライドをIR資料で公開しています。

これによると、将来もBTCを取得する計画だから、それが上乗せされている(時間分は割り引かれて)という説明です。うーん。言わんとすることは分かりますが、「将来ビットコインを買う計画だから、それが現在の株価に織り込まれている」と言われても、なかなか納得しがたいようには思います。

ビットコインの寡占という問題

もう一つ、ちょっと面白いのは、こうしたビットコイン戦略保有企業が、株式市場で資金を調達してビットコインを買うことで、急速にビットコインの保有量を増やしていることです。まぁ正確には59.2万BTCも保有しているストラテジー社です。

 

下記は世界の上場企業が保有するBTCランキングです。1万BTCを保有するメタプラネットが9位に入っているのも凄いことですが、何より注目すべきはストラテジーでしょう。

  1. Strategy, Inc. (MSTR) 米国 592,100
  2. MARA Holdings, Inc. (MARA) 米国 49,543
  3. XXI (XXI) 米国 37,230
  4. Riot Platforms, Inc. (RIOT) 米国 19,225
  5. Galaxy Digital Holdings Ltd. (GLXY.TO) カナダ 12,830
  6. CleanSpark, Inc. (CLSK) 米国 12,502
  7. Tesla, Inc. (TSLA) 米国 11,509
  8. Hut 8 Mining Corp. (HUT) カナダ 10,273
  9. Metaplanet Inc. (3350.T) 日本 10,000
  10. Coinbase Global, Inc. (COIN) 米国 9,267
  11. Block, Inc. (SQ) 米国 8,584

ストラテジーが保有する59.2万BTCというのは、他の企業すべてが保有するBTCの合計の2倍以上になります。それどころか、これまで供給されてきたビットコイン総量のうち2.82%を占めているのです。これまで発行されたビットコインは、サトシ・ナカモトの持分が100〜110万BTCといわれ、ビットコインETFを運用するブラックロックが63.6万BTCを保有し2位。そして3位には顧客預かり資産を持つBinanceが62.9万BTCで3位とされています。

 

ストラテジーの保有量は、それに次ぐ4位。カストディとしての保有ではなく、単一の意思決定者が動かせる保有量としては世界1位だといえるでしょう。2.82%という比率を「寡占」というべきなのかは分かりませんが、ストラテジーの保有量は、今後のビットコインの動向を左右するレベルになってきています。

 

ストラテジーは、2025年の計画として、株式で420億ドル、債券で420億ドルを調達し、それをすべてビットコイン購入に充てる計画です。合計840億ドル=約12兆円のBTCを購入すると、現在のBTC価格のままならストラテジーの保有BTC量はほぼ倍増することになります。

このペースで投資家から資金を集め、ストラテジーがビットコインを買い集めていったら、ビットコインの価値の源泉である分散化は失われてしまうのではないか? といった懸念も囁かれる中、今後の動向が注目されるところです。

 

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