
人はいつか、労働する現役から引退して、資産によって生活するようになるわけですが、このとき、どんなことにお金を使うか? はその人の価値観そのものだといえます。中でも象徴的なのか「タクシーに乗るかどうか」にあるんじゃないかと最近考えています。
気軽にタクシーに乗る人、乗らない人
世の中には、気軽にタクシーに乗る人と、めったなことではタクシーに乗らない人がいます。気軽に乗る人は、飲み会のあと、電車が動いていても帰りはタクシーです。日常の移動も、躊躇せずタクシーに乗ります。
逆にめったに乗らない人は、飲み会帰りにタクシーに乗るとしても終電が終わったあとです。日中の移動でも、タクシーでないと次の約束に間に合わないとか、電車がトラブルで止まっていて仕方なくタクシーに乗る。あるいは大きな荷物を持っていて、電車では移動が厳しい場合にタクシーを呼ぶのです。
気軽に乗る人にその理由を聞いてみたことがあります。
- 少しでも時間を節約したい。タクシーの中なら電話もできる
- 快適さが違う
わからなくはありません。移動時間というのは身体的にもしんどいものだし長時間利用します。その間の時間を有意義に使いたいなら、タクシーは選択肢です。それでも乗らない人は乗りません。
タクシーのほうが速いともいえない
ちなみに、都内での利用に関して、タクシーと電車を比較してみました。だいたいの経路は電車が時間でも料金でも有利です。料金はだいたい10倍になりますね。ただ、これは駅→駅のルートなので、前後の移動を考えると、タクシーのほうが早くなることもあります。「駅まで5分かかる」のはザラですから。
- 渋谷→新宿 電車:200円/7分 タクシー:2200−2900円/15−25分
- 東京→新宿 電車:260円/14分 タクシー:3700−4800円/20-35分
- 銀座→六本木 電車:180円/10分 タクシー:2000-2700円/12−20分
- 上野→浅草 電車:180円/5分 タクシー:1200−1800円/10−18分
- 池袋→秋葉原 電車:260円/21分 タクシー:4300−5600円/25−45分
- 新宿→六本木 電車:220円/9分 タクシー:3000−4000円/15−30分
- 品川→羽田空港 電車:330円/22分 タクシー:5500−7000円/20−35分
ただもちろんタクシーがだいたい有利というルートもあります。典型は六本木・西麻布・麻布台方面。JR・メトロのターミナル駅から直結していない港区がタクシー有利になりがちです。
- 品川→六本木ヒルズ 電車:25−27分 タクシー 約16分〜
- 新橋→六本木ヒルズ 電車:25分 タクシー:約15分
- 渋谷→六本木ヒルズ 電車:19分 タクシー:約9分〜
資産額とタクシー利用の有無は関係しない
面白いのは、資産が多いかどうかはタクシーを気軽に使うかどうかにほぼ関係がないということ。逆に、収入のほうは関係があるように感じています。高年収の人ほど、時間を限りある重要なものだと認識していて、躊躇なくタクシーになる感じです。
ある外資系企業の日本のカントリーマネージャーをしているある友人は、移動はタクシーが基本だそうです。年収は2000〜3000万くらいかな。知り合いの弁護士も、移動は常にタクシー。某有名JTCの役員をやっている友人も、飲み会の行き来はいつもタクシーです。埼玉の自宅まで帰るので片道1万円以上はかかっているでしょうけど、それが普通だと言っていました。
一方で億以上の資産を持っている人でも、よほどのことがなければタクシーは使わないという人もけっこういます。ぼくもその一人ですが、節約を意識し始めたころに、タクシーに乗るという習慣とか感覚がなくなった感じがしています。タクシーというのは、つかなくてもなんとかなるもので、しかも金額が大きい。要するに贅沢だというわけです。
お金の使い方=価値観
「贅沢」にはいろんなものがあります。そして、何にお金を使うかはその人の価値観そのものです。それはタクシーだけではありません。例えば、ペットボトルの水を買うか、水筒か、お茶やジュースにするか。外食の際に「水でいい」か「飲み物も頼む」か。無料版で広告や制限を我慢するか、月数百円から千円で快適さを買うか。
いくつかの贅沢の軸を分類してみました。
- 地位 他人からの評価 ブランド、外車、高級時計
- 効能 性能・快適性 高性能PC、広い家、高級椅子
- 時間 移動・作業時間の短縮 タクシー、グリーン車、家事代行
- 安全 不快・失敗・リスクの低減 良いホテル、保険、治安の良い住居
- 自由度 選択肢の保持 余剰資金、広い家、キャンセル可能券
- 外注 手間・責任の移転 税理士、清掃、予約代行
- 体験 記憶・感情の密度 旅行、ライブ、食事
- 身体 コンディション維持 寝具、ジム、歯科、人間ドック
- 認知 迷い・苛立ちの削減 良いUI、駅近、ノイキャン
- 美意識 自分の感覚への適合 家具、照明、器、アート
- 関係性 人間関係の維持 会食、贈答、家族旅行
- 自己物語 自分らしさの補強 趣味道具、書斎、学習
面白いもので、どれを重要だと考えるかがそのままお金の使い路になっています。たとえば僕でいえば、「効能」「自由度」「体験」「認知」「自己物語」には、お金を使ってももったいないとは思わない。というか、そのためにお金はあると考えます。でも、人によってはまったく違うものを評価するのでしょう。
そして同じ支出でも人によって当てはまる場所は違います。高級車を、「地位」で見る人もいえれば、「効能」でみたり「安全」で見たり、さらには「美意識」「自己物語」でみる場合もあります。最初のタクシーの例も面白くて、ある人には「時間を買う贅沢」だけど、別の人には「身体の疲労を避ける贅沢」、別の人には「地位財」になります。グリーン車も、ある人には作業環境(効能)であり、ある人には体力温存(身体)、ある人には見栄(地位)、ある人には旅行気分(体験)になります。
そう考えてみると、贅沢とはその人の価値観の究極の反映であり、同じ対象であっても求める価値は異なるというのも分かるわけです。