FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

なぜ自分には「上がる銘柄が当てられる」と思うのか

先日、証券会社に務める知人と話していたら、「インデックスの投資信託やETFを買って5年放っておいて20%上がって喜ぶんじゃなくて、企業の分析情報を見て、ちゃんと投資したいじゃないですか」なんてことを言っていました。

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投資はギャンブルか資産運用か

以前、投資と投機の違いは、インカムゲインかキャピタルゲインかにあるという記事を書きました。インカムゲイン目的かキャピタルゲイン目的かで、投資か投機かが決まるというものでした。また、もう少し前には、投資とギャンブルの本質的な違いという記事で、プラスサムなのかマイナスサムなのかを考えることについて触れました。

 

いろいろな考え方があると思いますが、個別株の売買でインデックスを超えるリターンを得ようというのは、僕の中ではキャピタルゲイン狙いの最たるものであり、つまり本質的にはゼロサムのゲームになります。

 

企業の成長があるので、プラスサムの要素はありますが、手数料を引かれるのでそこはマイナスサム。期間によって違いますが、まぁだいたいゼロサムという感じです。

なぜ投資を「安く買って、高く売る」と考えてしまうのか

にも関わらず、企業をしっかり分析して、上がりそうな銘柄を見つけることこそが投資だと考える人がこれほど多いのでしょうか。

 

僕の考えは、短期のデイトレード的なものを除けば、株価は買い手と売り手がお互いに適切だと考える価格に落ち着くというものです。これはもちろん、将来の業績を予測した上で、適切な値段を弾き出しています。

 

これに対して「この銘柄はもっと上がるはずだ」と考えるのは、「売り手はこの企業の将来を過小評価している」と言っていることと同じです。それこそ、膨大な時間と人手をかけて事業や市況を分析して適切な価格を導き出しているプロの投資家がたくさんいます。そのひとたちが導いた価格に対して、「その評価は間違っている」というわけです。

 

アナリストのレポートを読んだくらいで、その企業が過小評価されているかどうかなんて分かるはずもないとおもいませんか? 世間は間違っていて、自分は正しい。真の価値を分かっているのは自分だけだ。こんなバイアスが、不思議な自信過剰につながっているのでしょう。

でも儲かる場合があるのはリスク・プレミアムか、アノマリーか

それでも個別株を購入して、インデックスよりも儲かる場合があります(いわゆるアルファです)。これはなぜでしょうか。一つは完全な運ですね。もう一つは、その銘柄の大きなボラティリティというリスクを取ったため。つまりリスクプレミアムだと考えられます。フリーランチはない。得られる可能性の裏側には、同じくらいのリスクが存在している。これが重要な考え方です。

 

別の考え方もあります。アノマリーです。これは、人間のさまざまな非合理的な思考の結果、価格形成が歪むというものです。例えば、古典的なフレンチ・ファーマの3ファクターモデルでは、上記のリスク・プレミアムに加えて、「小型株効果」「割安株効果」という利益の源泉を挙げています。

 

多くのアナリストがカバーする大型株に対して、情報が不十分な小型株は不適切な価格が付きやすい可能性があります。流動性が低いため、大口の投資家の投資対象にもなりにくく、その結果、割安に放置されることが多いというのが小型株効果です。

 

割安株効果は、いわゆるバリュー投資です。株価が割安ということは事業や業績がパットしないわけですが、つまりあまり魅力的に見えない地味な企業だということです。こうした企業の株は、人気がないゆえに株価が低くなる傾向にあります。派手なニュースでみんなが買ってしまうグロース株の逆です。これによって、ミスプライシングが起きているという説明がされます。

 

ただし、「小型株効果」「割安株効果」も、人間心理に基づくアノマリーではなく、表面に現れないリスクがあるから評価が落ちているという考え方もあります。つまり、実際にはリスクを取っており、結果的にリターンが高いのはリスク・プレミアムのせいだというものです。

 

さらに、第4のファクターとして「モメンタム」もよく言われます。これは、上がっている株はさらに上がる、下がっている株はさらに下がるというものです。当然、これも企業の本質的な価値より上振れしたり、下振れしたりする可能性があります。

アナリストの企業レポートの価値はどこにあるのか

こう考えてみると、アナリストのレポートを読み込めば、現在市場でついている価格が適切であることは分かっても、ミスプライシングなのかどうかは分かりません。

 

小型株効果は、そもそもアナリストのカバーが少ないから起こるわけです。割安株効果はもしかするとアナリストの評価よりも低い株価になっているかもしれません。そしてモメンタムについては、いくら業績を分析しても何も分かりません。上がるのはチャートを見て上がっているから買うという人がたくさんいるからなので。

 

ではアナリストの分析は不要なのかというと、実は大いに役立っています。それは、これらのレポートを見て、機関投資家たちが売買し、株価を適切なところに動かしているからです。つまり、アナリスト分析の結果が現在の株価だということです。こうしたファンダメンタルズに基づく調査が、市場の効率性を実現しているともいえます。

 

逆説的に、いくら後からアナリストの分析レポートを読んでも、現在の株価が適正だということ以上の意味はないということです。

個別株を売買するならアノマリーを狙う

ぼくは、ある意味極端な効率的市場仮説の信奉者なのかもしれません。ただし、アノマリーは存在する思っていて、だからこそ個別株を買うなら、「小型株効果」「割安株効果」「モメンタム」「低ボラティリティ効果」などのアノマリーに基づいて買うべきだと考えています。「IPO」や、日本だと「優待」の存在も大きなアノマリーですね。

 

だから巷でよく言われる、「身近で関心のある企業の株を買おう」とか「経営者を見て能力や人柄で判断して買おう」「応援したい企業を買おう」みたいなものは、賢明な投資ではないと思っています。

 

とはいいつつ、自分自身はGAFAに代表されるハイテクグロース株にけっこう投資してきているわけですが、言ってみればこれは趣味ですね。地味で面白みもなく、株価がずっと低迷している企業に投資する(バリュー投資)のは、まぁ面白くありません。それよりも、毎日のようにニュースが出て、CEOの一挙手一投足が注目される企業の株主になったほうが、張り合いがあるじゃないですか。

 

あえて言うなら、同じように「業績よりも、気分だよ。プロダクトを愛用しているし、CEOのファンだから」という理由で買う人が一定数いるなら、それだけで株価は上がるわけです。そして株価が上がれば、事業内容なんて関係なく、モメンタム派のひとたちも買って株価を押し上げてくれます。そして、株価が上がると資金調達もしやすくなり、実際に業績が伸びたりもするわけです。

 

これはまさにケインズが「人気投票」と呼んだ株式市場そのものですね。そんなわけで、機関投資家でもない限り、アナリストレポートはファンクラブ向け会誌くらいに思って、楽しく読ませていただきます。

 

 

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