FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

公的な年金制度は廃止すべきなのか?

ちきりんの新刊『自分の意見で生きていこう』を読んでいて、面白い内容がありました。

公的な年金制度は廃止すべきだ。自分の老後に必要なお金は、それぞれ自分で貯蓄すればよい。どうしてもお金が足りなくなった場合は、生活保護を申請すればよい。

 

という意見に賛成ですか? 反対ですか?

本を読んでも、ちきりんの答えは書いていません。あくまで「自分の意見」を持つための練習問題として出されたものです。では、ぼくならこれをどう考えるか。

僕は「反対」です

ぼくはこの意見に「反対」です。公的な年金制度は維持して、それに加えて豊かな生活をしたい場合には自分で貯蓄すべきです。

 

ではなぜこう考えるのか。それは公的年金が「長生きに対する保険」という性質を持つからです。自分が必ず80歳で死ぬ、と分かっているなら、80歳までの生活費を貯蓄として持てばいいでしょう。ところが、80歳で死ねる人はごくわずかで、ほとんどの人はもっと若くして死んだり、もっと長生きしたりします。

 

そして、死ぬ間際まで貯金で生活することを想定するなら、120歳くらいまで持つ金額を貯蓄しなくてはなりません。とてもではありませんが、60歳で引退なんてできず、相当先まで働き続ける必要が出てくるでしょう。

 

これは、自動車保険がない世界について考えてみると分かります。もし、交通事故を起こして人を死なせてしまったときに備えて、1億円貯めてからではないとクルマが運転できないとなったらどうでしょう。ほとんどの人は運転なんてできませんし、1億円持っているから人を轢いてもなんとかなるぜという人も、そんなリスクを取ってまで運転しようとは思わないでしょう。

 

保険があるからこそ、起こるかもしれない出来事を過剰に気にせずに生きていけるのです。

そもそも公的年金は保険である

そもそも、公的年金の積立金は「保険料」と呼びます。これは、老後に必要になる資金を、国が各個人の代わりに預かって運用してあげましょう……という仕組みではなくて、みんなで出して貯めておいて、早く死んでしまった人から、平均以上に必要になった人(=長生きしてしまった人)にお金を移転しましょうという制度です。

 

これは、みんなからお金を集めて、病気にならなかった人から、なってしまった人にお金を移転しましょうという、保険と同じ構造ですね。

反論1:生活保護が代わりになるのではないか?

反論としては、長生きしても生活保護で生きていけるというものがあります。では75歳以上の都内23区在住の夫婦は、月額いくら生活保護でもらえるでしょうか? これは、生活扶助が11万2380円、住宅扶助が6万4000円の合わせて17万6380円です。

seikatsu-hogo.net

一方で、公的年金の夫婦がもらえる金額はどうでしょう? 国民年金のみの自営業の場合は生活保護を下回りますが、厚生年金が含まれる会社員の場合、20万円を超えてきます。

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年金は夫婦でいくらもらえる? 月額の目安と老後の受給額を増やす方法 | マネープラザONLINE

この金額だけを見ると、年金制度を廃止して生活保護でもいいのではないか。生活保護の金額をもう少し増やせば、年金と変わらないとも思うかもしれません。しかし、代替にならない理由が2つあります。

 

1つは、働ける能力があるのに働かない場合、生活保護を受けられないということ。病気や怪我、もしかしたら高齢など、働けない理由が必要です。2つ目は、生活保護で受け取ったお金の使い道は制約されることです。何に使ってよくて何に使ってはいけないかは、福祉事務所が判断することになります。さらに、「あの人は生活保護なのにギャンブルをしている、ブランドモノのバッグを買っている」など近所から通報されることもあるそうです。

 

つまり自分の意思に沿った生活が行えないということです。これでは、半分くらいは刑務所にいるのと変わりありません。人間らしい生活が送れるとは言いがたいのが現在の生活保護制度です。

 

もちろん、審査なし使い道も自由で生活保護を提供するという制度に変更することだって可能でしょう。年金支払い分だけ増税して、その税収で生活保護を充実させるという考え方です。

 

ただこれは、現在の生活保護とは別物で、ベーシックインカムと呼ばれるものになります。もし、公的年金を廃止して、ベーシックインカムを導入するというのならば、ぼくはそれには賛成です。ただし現在の生活保護では公的年金の代わりにならないということです。

反論2:公的年金は破綻しかけているので頼るべきではない

次なる反論として、公的年金は破綻しかけているのではないかというものを考えてみます。

 

日本の公的年金は、払った人たちの間で再配分する保険のような形ではなく、世代間で再配分する割賦方式を使っており、これは少子高齢化によって制度運用が厳しくなるという問題があります。保険料を払う人が減って、保険金を受け取る人は増えるのですから、まぁそれはそうですね。

 

これが分かっていながら根本的な手を打たずにきたことは非難されるべきですが、だからといって制度が破綻するというわけではありません。支払う保険料をアップさせ、受け取る保険金を減らし、さらに高齢者にも働いてもらって労働参加率を高め、GDP伸び率を高めに想定すれば、制度は存続できるのです。

 

ひどい話だ……とぼくも思います。でも、絶対に年金制度を破綻させはしないでしょう。政治的に影響が大きすぎるからです。そしてそれでも財源が足りなければ税金から投入する量をさらに増やすこともできます。額は減るにしても、制度は存続させると見ています。

反論3:世代間再配分の割賦方式に問題があったので信頼できない

日本の年金制度は世代間で再配分する割賦方式です。この最大の問題は、少子高齢化で払い側の負担が重くなるというものでした。では、メリットはないのでしょうか?

 

もちろん制度スタート直後は大きなメリットがありました。だって、積立がなくても支払いはできたのですから。でも、現在でもメリットはあるのです。それがインフレ対応です。年金制度は、インフレに応じて給付金を増加させる仕組みになっています。なぜこんなことができるかというと、割賦方式だからなのです。

 

貯金がインフレに弱いことはよく知られています。老後に向けてせっせと貯金に励んでも、インフレが起きてしまい貯金の価値が大きく目減りしたら、それで老後生活は破綻です。

 

ところが現役世代の支払った保険料を、給付金に充てる割賦方式ならば、両方をインフレに連動させられます。例えば、100%のインフレになったとしましょう。給料も100%増加しているので、保険料も100%増加させます。そうすれば、給付金も100%増やせることになります。

 

このことは、年金制度は民間がやるよりも国がやったほうが上手くいくということにもつながります。ぼくは基本的に市場に任せたほうがうまくいくと考えているリバタリアンですが、割賦方式の年金制度は民間では実現不能だと考えます。これが成り立つには保険料の強制徴収が必要になるからです。

成功とは運である

自由を愛し、市場経済を重要だと考えるリバタリアン的には、公的年金制度を是とするなんておかしいでしょうか。ここには、実は「ほとんどの成功とは運である」という洞察が背景にあります。

 

世の中、自己責任主義者は基本的に優秀な人間です。上手くいくのも失敗するのも自分の能力次第と考えることが多く、だからこそ自己責任を唱えます。逆に、そこまで優秀ではない人は社会責任を主張します。

 

ただ自己責任主義者の中で欠けているのは、その成功のどれくらいが運の要素だったのかという点です。自己責任を主張する人の多くは、自分の成功は自分の能力のためだと考えていますが、実際はどうでしょう。運の要素はなかったのでしょうか。また、失敗して社会的保障制度のお世話になっている人は、本当に能力が足りなかったのでしょうか。残念ながら運悪く、そういう境遇になってしまったということはないのでしょうか。

 

能力ですべてが決まるのではなく、多くが運で決まるなら、能力の是非に関係なく、運が悪かっただけで悲惨な境遇になり得ます。だからこそ、社会はそうした人達へのセイフティネットを設ける必要があるのです。そしてそれは、現在の生活保護よりももっと寛大なリスペクトのあるものになるでしょう。今の生活保護は、能力がない人を見守ってやろうというパターナリズムの香りがプンプンします。しかし、それは不運のために生活保護に陥ってしまった人に向ける態度ではないでしょう。

 

そうした観点から、ぼくはベーシックインカムには好意的です。多くの人がいろいろな試算をしていますが、社会保障制度に関わる官僚的コストを削減できるのなら、そして社会保障を受ける人の尊厳を守れるなら、ぜひベーシックインカムに移行すべきだと思います。それこそが、無駄な国の役割を減らすことにつながり、自由につながると考えるからです。

 

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