長期的にリターンが見込める投資とは違い、為替は基本的にゼロサムゲームです。誰かが得をすれば、ほかの誰かが損をしています。そして今回、大きく損をしたのはぼくでした。
為替ヘッジをかけて円高リスクをなくそうという発想
ことの発端は2ヶ月前の5月25日。一気に131円まで下がったドル円が、少し盛り返してきて127円くらいまで円高に振れてきたタイミングです。このあとの為替の動向は全く分かりませんが、為替の影響を少し減らしたい……と考えて、為替ヘッジをかけたのでした。
ポイントは下記の3点です。（1）オプションを使用（2）ドル資産の一部だけヘッジ（3）満期は2ヶ月後。
個人ができる為替ヘッジといえば、FXを使う方法がポピュラーです。ドル売りのポジションを持つということです。コストは売買スプレッド（極小です）と、日々のスワップコスト。日米金利差が開く中で、スワップコストは年率3％くらいになってきていたので、そこそこ重い。
そんな中、オプションを使い、124円より円高をヘッジ、その代わり128円より上もヘッジというポジションを取りました。プット買いのコストをコール売りで賄うクレジットスプレッドで、数万円ですが差額の利益も出るポジションです。
このかたちのポジションは初めてなので、あまり大きく張ることはせず、20万ドル分だけのヘッジに留めました。ドル資産の一部分だけをヘッジするという目論見です。結果的には、これが良かったということになります。
FXならば、いつまでもポジションを持ち続けられますが、オプションには満期があります。今回は、2ヶ月後の7月25日を満期に設定しました。
ドル円は127円→137円に
ポジションを建てたときのドル円は127.13円。ここから円高が進んでも、124円より下はヘッジしてカバーする目論見でした。ところが、意に反してどんどん円安が進みます。円安方向は128円を超えればヘッジがかかります。
ヘッジポジションは、ドルの現物＋オプションなので、128円を超えたあと、ドルの現物は利益が出ますが、オプションのほうは損失が発生するということです。もちろん、ポジション全体で見れば相殺されて、損益ゼロ。ですが、オプションだけで見たらどんどん損失が積み上がります。
結果的に、5月25日の127円をほぼ底にして、為替はひたすら円安に進み、現在は137円。なんと10円も円安になってしまいました。
これだけ想定が外れるというのもスゴイですね。20万ドルで10円動いたので、為替単体で見ると200万円の損失が発生したことになります。正確には、ドル資産の価値も200万円上昇したので、「200万円の利益を取りそこねた」ということになりますが、下記の損益を見ると、そんなことを言っても慰めになりません。
正確には、オプションの場合、為替変動に伴う損益の変動はデルタに依存し、デルタはATMで0.5でディープ（この場合円安）になるつれて1に近づきます。さすがに10円動くと、現在のデルタはほぼ1（0.99943）なのですが、途中までは1未満なので、多少は損失は緩和したとは思いますが……。
資産全体ではプラスだが……
不幸中の幸いなのは、ヘッジしたのはドル資産の一部だけだったことでしょう。この2ヶ月で、ドル資産の価値は7.8%も増加しました。ドル資産10万ドルごとに100万円のボーナスが入ってきたわけです。そういう意味では、資産全体では円安の恩恵を大きく受けています。今回のヘッジによる失敗で、20万ドル分は恩恵を受け損なったともいえます。
それでも2つ、問題があります。1つは、満期があるために、ドル資産の円安効果は含み益なのに、為替ヘッジポジションのほうは確定損失になってしまうことです。このあとヘッジを止めたら、含み益が消え去って、損失だけが残ることにもなりかねません。7月末、もう一度ヘッジポジションを建てるかどうかが悩みです。
2つ目は税制です。円安効果を受けたのは株式で、譲渡課税。一方オプションのほうは先物などと同様の申告分離課税の枠になります。先物でガッポガッポ儲けていればよかったのですが、実は先物の枠は損失が継続しているのです。
というわけで、200万円の損失を出した為替ヘッジのお話でした。
