コロナも開けて海外旅行も行きやすくなり、またChatGPTのようにドル建てで支払わなければならないサービスも増えています。昨今はクレジットカードがありますから、支払う事自体は簡単なのですが、果たしてどんな方法で支払うのがお得なのか。特に、この秋からクレカの外貨決済手数料の値上げが相次いでいます。それを含めて、最もお得な支払い方を考えてみます。
外貨決済には何段階ものコストがある
まずは外貨決済、つまりドル建ての品物を購入する際のコスト構造をおさらいしましょう。ドル建て決済には大きく2種類の方法があって、それぞれ少しコストが違います。
1つ目は、あらかじめ円をドルに替えておき、それで決済する方法です。いわば両替所で事前に両替しておくようなもので、ドルアカウントから直接決済できるカードがこれにあたります。この場合、コストは両替手数料だけです。
もう一つは、円払いのクレジットカードでドル決済する方法です。これは複数のステップに分けてコストが乗ってきます。まずVisaなど国際ブランドが定めたレートとスプレッドがあります。さらにカード発行会社(イシュア)が取る外貨決済手数料(マークアップフィー)があります。そして、クレカにはポイント還元があるのでそれを差し引いたものが合計コストです。
例えば、三井住友カードでドル決済した場合のコストは次のようになります。
- Visaの為替手数料(スプレッド) 0.46%程度
- 外貨決済手数料(海外事務手数料) 3.63%
- ポイント還元(ゴールドカード) ▲0.5%
- 合計 3.61%
詳細は以前まとめた下記の記事をご参照ください。
各社値上げの外貨決済手数料
なぜこの記事をアップデートしようかと思ったかというと、Revolutがチャージ手数料を設けて全然お得でなくなったことと、カード発行会社各社が外貨決済手数料を軒並み値上げしているからです。
各社の外貨決済手数料変更は次の通りです。
- 三井住友カード クレカ(11/1〜) 2.20%→ 3.63%
- 三井住友カード デビット(11/1〜) 3.05%→ 3.63%
- 楽天カード(4/1〜)
- Visa/Mastercard 1.63%→ 2.20%
- JCB 1.60%→2.20%
- AMEX 2.00%→2.20%
- セゾンカード(12/4〜)
- Visa/Mastercard 2.20%→ 3.85%
- JCB 2.15%→3.85%
- AMEX 2.00%→3.85%
- 三菱UFJニコス(8/13、8/27〜) 2.2%→ 3.85%
- アプラス(11/11〜)
- Visa →3.85%
- Mastercard →1.63%
- JCB →3.85%
- アメリカン・エキスプレス(変更なし) 2.0%
- イオンカード(変更なし) 1.60%
- JCBカード(変更なし) 1.6%
- イオンカード(変更なし)1.6%
- ダイナース(変更なし) 1.3%
- エポスカード(変更なし)2.2%
- Kyash(変更なし) 4.5%
- B/43(変更なし) 4.5%
- IDARE(変更なし) 0%
- UPSIDER(変更なし) 2.2%(ログイン後ヘルプページに記載)
セゾン、三菱UFJニコス、三井住友カード、アプラス(ラグジュアリーカードも)の値上げが激しいです。これまで安かった楽天カードは値上げして他社並に。また、KyashとB/43のプリペイド兄弟は4.5%とぼったりくなので注意を。
安いほうでは、ダイナースが1.3%、そして1.6%のイオンカード、JCBカードカード。そして0%のプリペイド「IDARE」がピカ一です。
外貨直接決済カードの研究
では、こうした背景の中、どの決済方法が最も有利か見ていきます。まずはドル決済カードから。これはあらかじめ両替してドルなど外貨を保有しておき、その通貨で直接決済できるサービスです。
例えばアカウントに20ドル入れておき、20ドルのものを購入したら、特段の手数料はかからないので、円からドルに交換したときの両替コストだけが手数料になります。コストが見えやすく、分かりやすいのもいいですね。
こうした種類のカードには有名なところで下記4つがあります。
- ソニー銀行(デビット)
- JAL GLOBAL WALLET(プリペイド)
- Revolut(デビット)
- Wise(デビット)
基本的にはデビット扱いのカードが多いのですが、JAL GLOBAL WALLETはプリペイドです。デビットやプリペイドはクレジットとは違い、ホテルやガソリンスタンドなどオーソリ後に支払い額が決まるところや、サブスクなどで使えない場合がある(使えるものもある)のでそこは注意です。
さて、各社の12/7日時点でのドル円レートは次の通りでした。TTBとTTSの中間を想定為替レートとし、そこからの乖離をスプレッド=コストとして計算しています。
- ソニー銀行
- TTB:149.89 TTS:150.19 スプレッド:0.3円 コスト0.15円(0.1%)
- Revolut(休日)
- TTB:148.02 TTS:151.82 スプレッド:3.8円 コスト1.9円(1.27%)
- 住信SBIネット銀行
- TTB:149.92 TTS:150.04 スプレッド:0.12円 コスト0.06円(0.04%)
- JAL GLOBAL WALLET
- TTB:147.14 TTS:152.82 スプレッド:5.69円 コスト2.8円(1.9%)
- Wise
- TTB:149.57 TTS:150.83 スプレッド:1.26円 コスト0.63円(0.42%)
ソニー銀行はコスト15銭で計算していますが、ステージをアップさせると最大4銭までコストが低下します。そうなると最安値に突入です。
ドル以外の通貨の為替コストは次のようになっています。ドルとユーロはかなり低く、ほかは国ごとという感じです。
Revolutは手数料が高く見えますが、これは土日に1%の追加コストが乗っているためです。平日なら1%引きの0.27%くらいだと考えるといいと思います。
JAL GLOBAL WALLETはかなり手数料が高いのですが、実は住信SBIネット銀行のドル口座からドルを送金することが可能です。住信SBIネット銀行ではドルの為替手数料は6銭なので、非常に低コストで両替が可能になります。なお、ネットで検索してもJAL GLOBAL WALLETの解説があまりなくて概念がつかみにくいのですが、下記のような構造になっています。
要するに、JAL Payの物理カードをJAL GLOBAL WALLETカードと呼び、JAL Payの外貨残高をJAL GLOBAL WALLETと呼んでいるわけです。
まとめると、最安は下記の方法ということになります。
- ドル決済で最安:住信SBIネット銀行でドル両替しJAL Payにチャージしたドルを、JAL GLOBAL WALLET(カード)で決済 6銭(0.04%)
- ドル決済で最安:ソニー銀行でドル両替し、ソニー銀行デビットカードで決済 4銭〜15銭(0.026〜0.1%)
ユーロはソニー銀行がおそらくベストで0.1%程度。他の通貨はソニー、Reovlutなどが同じくらいの手数料な感じです。ただし、Revolutはクレカからチャージすればそのクレカのポイント還元が得られます。そしてクレカチャージには手数料がかかります。つまりチャージ手数料無料のMastercardクレカを使えば、ポイント還元分は入手できるので、差し引きプラスにすることも可能ではあります。
円建てカード外貨決済の研究
外貨直接決済カードに続き、円建てカードでの決済も見ていきましょう。クレカの場合、下記のコストを合算したものがコストになります。
- 国際ブランドの為替レート(スプレッド)
- カード会社の海外事務手数料(マークアップフィー)
- (プリペイドの場合)チャージ手数料
- カードのポイント還元(マイナスコスト)
まずVisaの場合、スプレッドは0.46%程度です。これは下記のサイトからリアルタイムでチェックできます*1。
先の各サービスの両替コストと並べてVisaのレートを見ると次のようになり、それほど悪いスプレッドでもないことが分かります。
- Visaスプレッド
- TTB:149.340 TTS:150.729 スプレッド:1.389円 コスト0.6945円(0.462%)
ここに各社の海外事務手数料(外貨決済手数料、マークアップフィー)が足されるわけですが、これが大きい。1.6%のイオンやJCBでも、合わせて2%を超えます。0.5〜1%のポイント還元があっても、合計1%以上のコストとなるわけで、0.04〜0.1%程度だったドル直接決済サービスに敵いません。
ただここで思い出したいのが、マークアップフィーゼロのプリペイドカード「IDARE」です。IDAREはプリペイドなので、他のクレカからチャージして使うわけですが、なんと三井住友プラチナプリファードからチャージすれば最大2.5%還元((通常だと1%還元、100万利用で+1%、リボ利用で0.5%、新規ユーザーはリボ利用特典は利用不可))が得られます。つまり、Visaのスプレッド0.46%からポイント還元2.5%を引けるので、なんと2.04%ほどのプラスになるのです。
まとめ:外貨最安はどれか
というわけで、単体で見ると外貨直接決済のソニー銀行やJAL GLOBAL WALLETはかなり安いコストで利用できました。しかしRevolutにMastercardのクレカからチャージすれば、クレカのポイント還元がRevolutの手数料を上回るのでプラスになります。
さらに、マークアップフィーゼロ円のIDAREに三井住友プラチナプリファードからチャージして外貨決済すれば、差し引きでプラスにすることが可能です。特に国内にいて海外ECや海外のサブスクに利用するならIDAREは現状ベストの選択肢ではないでしょうか。
Revolutも悪くないのですが、カードのチャージ手数料がしょっちゅう変更されて複雑なのと、土日に両替手数料が1%上乗せされるのはトラップです。要するにけっこう複雑なので、僕でさえ相当集中しないとミスることがあります。
ただIDAREよりもRevolutのほうが便利なところが一つあります。IDAREはプリペイドなので、利用できない場所がかなり多いんですね。海外旅行で利用する場合、飲食店などはいいのですが、ホテルでは利用できない場合が多いでしょう。一方、Revolutはデビット扱いで、さらにサブスクやホテルなどでもだいたい利用できます。なんなら残高がマイナスになることさえあります。相当クレカに近い使い勝手なんですね。
そのため、海外旅行の場合、次のようなラインナップを用意しようかと思っています。
- IDARE メイン
- Revolut サブ
- JCB どっちも使えない場合
外貨利用はかなり複雑なので、見落としなどもありそうです。もっといい手法がありましたら、ぜひXなどで教えて下さい。
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*1:Bank feeは0%に設定すること。