FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

子どもたちには一切資産を残さない


資産家の方の中には、子どもたちに資産を遺したいと考える方が非常に多いですね。でもぼくは、子どもたちには一切資産を残さないほうがいいと考えています。それはぼくがDIE WIH ZERO派だからだというのもありますが、別の理由もあります。

相続は人から多くを吸い取る

相続は人から多くを吸い取るものだと思う。それは呪いのようなものだ。もし私が子供の頃、「将来何もしなくても財産が手に入る」と感じていたら、ここまで努力できたかどうか分からない。

こう書くのは、資産の使い方を説いた名著『アート・オブ・すペンディングマネー』の筆者です。お金の使い方、というか、使い切れずに残っても、それは子どもたちに遺産として相続されるのだからいいだろう――。そんな考えの人もいるかもしれませんが、それは子供たちにかけられた「呪い」だというのです。

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こう考える人は少なくはありません。ミュージシャンのスティング(資産約3億ドル)も、多すぎる遺産が子供の呪いになると考える一人です。

「彼らに信託基金という『アホウドリ(重荷)』を背負わせたくない。彼らは働かなくてはならない」 ("I certainly don't want to leave them trust funds that are albatrosses round their necks.")    

 

「アホウドリ(Albatross)」という表現は、サミュエル・テイラー・コールリッジの詩『老水夫の歌』に由来する英語の慣用句で、「逃れられない精神的重荷」「呪い」を意味します。スティングは、親の金が子どもたちの人生に重くのしかかり、自由を奪う呪いになると考えているのです。

「財産を残さない」運動の理論的支柱

現代において、財産を子どもたちに残さないという考え方の代表が、ご存知ウォーレン・バフェットです。バフェットは2006年、自身の保有するバークシャー・ハサウェイ株の大部分(当時約310億ドル相当)をビル&メリンダ・ゲイツ財団などに寄付すると発表し、世界を驚かせました 。

「裕福な親は、子供たちが『何でもできる』と感じられるだけの額を残すべきだが、『何もしなくていい』と感じるほどの額を残してはならない」 ("A very rich person should leave his kids enough to do anything but not enough to do nothing.")    

多くの富裕層と親交のあるバフェットは、巨額の遺産が「信託基金ベイビー(Trust Fund Baby)」と呼ばれる、勤労意欲を失った層を生み出すリスクをよく理解しています。遺産は、子供たちの才能や野心を潰す凶器になるというのです。

 

実際バフェットの息子ピーター・バフェット(音楽家)は、「もし巨万の富を与えられていたら、自分が何者なのか、自分の力で何を成し遂げられるのかを知ることは決してなかっただろう」と感謝しているといいます。

 

もう一人の代表例が、ビル・ゲイツです。彼は、子どもたちには「最高の教育」と「医療」は無制限に提供するが、キャリアや収入は自分自身で確立しなければならないというルールを家庭内で徹底してきました。

 

子どもたちが「ビル・ゲイツの子ども」というレッテルでなく、自分自身のアイデンティティを持って生きることを何よりも重視しました。莫大な遺産はそのアイデンティティ形成を阻害するノイズにしかならないという考え方です。

 

「遺産相続は『やる気の搾取者(initiative sucker)』だと思う。それは呪いだ」 ("I think it's an initiative sucker. I think it's a curse.")    

「もし家に帰れば金の壺が待っていると知っていたら、私はこれほど必死に働いただろうか?」

こう話したのは、CNNの著名アンカー、アンダーソン・クーパーです。アメリカ屈指の名家ヴァンダービルト家の子孫ですが、母からは「信託基金はない」と言われて育ったと言います。母は遺産を巡る親族の争いで人生を狂わされそうになりましたが、自力でキャリアを築きました。彼はそれを見て育ち、ジャーナリストとして大成したのです。

働く喜びを奪いたくない

自分は自分、子供は子供。そうした考えの著名人も数多くいます。ジャッキー・チェンは全財産を寄付する意向を示して驚かれました。中華圏では、財産を代々受け継がせ、一族の繁栄を願うのが一般的だからです。 

「もし彼に能力があるなら、自分でお金を稼げるはずだ。もし能力がないなら、私の金を浪費するだけだろう」 ("If he is capable, he can make his own money. If he is not, then he will just be wasting my money.")    

ロックバンドKISSのベーシストであり、ビジネスマンとしても成功しているジーン・シモンズも似たような考えです。

「鳥が飛び方を覚えたとき、母親はその鳥を巣から蹴り出すものだ。もしその鳥が落ちれば、それはそれで仕方がない」 

彼は「毎日起きて、働きに出ること」が人生の活力であり、遺産を受け取ることはその活力を奪うことだと考えています。子どもたちが生活に困ることはないようにはする(セーフティネット)が、彼の金で贅沢をすることは許さないという姿勢です 。

 

「銀のスプーンは野心をくじく」ということわざもあるように、両親がいつでもお金をくれるなら、頑張る意味などないと思ってしまうものです。

遺産相続というシステムは非道徳的だ

子供のためというよりも、遺産相続というシステム自体が非道徳的だと考える人もいます。ジェームズ・ボンド役で知られるダニエル・クレイグもその一人です。

「遺産相続なんて不快だと思う。私の哲学は、死ぬ前に使い切るか、誰かにあげてしまうことだ」 ("I think inheritance is distasteful. My philosophy is to get rid of it or give it away before you go.") 

自分が稼いだ金を自分以外の人間(たとえ子どもであっても)が自動的に手にするシステムは、道徳的に受け入れがたいという考えですね。。彼は「次の世代に巨額の金を残したくない」と明言しており、自身の富は自身の人生と、社会への還元で完結させるべきだという、まさに「DIE WITH ZERO」の精神を体現しています。

 

スティーブ・ジョブズの妻であり、慈善団体エマーソン・コレクティブを率いるローレン・パウエル・ジョブズは、夫が築いた巨万の富を、自分の代で終わらせることを使命としています。

 

彼女は、個人の手元に、何百万人もの人々の経済力に匹敵する富が集中することは「正しくない」し「危険だ」と主張しています。彼女の目標は、その富を教育、移民改革、環境問題などの解決のために「配布」することです。彼女にとって、子どもに金を残すことは、社会的な不平等を次世代に再生産することと同義なのです。

 

ジェフ・ベゾスの元妻マッケンジー・スコットは、離婚によって得た数兆円規模の資産を、驚異的なスピードで寄付し続けています。

古くて新しいDIE WITH ZERO

こうした、子どもたちに莫大な遺産を残さないという考え方は、実は最近に始まったものではありません。19世紀の鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは、現代のフィランソロピー(慈善活動)の父であり、バフェットやゲイツの思想的源流だともいえます。

「富を持って死ぬ男は不名誉に死ぬ(The man who dies thus rich dies disgraced)」

彼は著書『富の福音』の中で、このように書きました。遺産は子どもたちの才能を殺し、国家の活力を削ぐというのがカーネギーの考えです。彼は「子どもたちに1ドルたりとも残すべきではない」と極言し、富は生存中に社会のために使い切るべきだと説きました。この思想は100年以上を経て、現代のビリオネアたちに再発見されたともいえます。

 

こうした考えを持つ偉人は海外だけではありません。明治時代の安田財閥創始者・安田善次郎は、勤勉と倹約を重んじ、富の私物化を戒めました。彼は東京大学の安田講堂などを寄付しましたが、それは匿名で行われました。死後にこのことが判明し、安田を偲び、一般に安田講堂と呼ばれるようになりました。

 

「子供に財産を残さない」理由として、子供自身の成長や自立、勤勉さを損ないたくないという共通の信念。そして、遺産相続というシステムが、不平等の再生産につながる。こんな考え方を持つ人は昔から一定数いたわけです。

九条のスタンス

ぼくもDIE WITH ZERO派で、一切遺産を残すつもりはありません。ただ、それは子供のためにお金を使わないという意味ではなく、子供が年老いてから遺産として資産を受け継ぐのではなく、真の意味でお金を必要とするタイミングで渡してあげたいという意味です。

 

偉人たちの考え方の中では、子どもたちの教育と医療にはいくらでもお金は支払うが、享楽のためには出すつもりはないというビル・ゲイツの考え方がしっくり来ました。資産形成が面白くまた重要なのは、その過程にあるのであって、最初から富裕層といわれるような資産を持っていたら、そんな人生なんて詰らないとぼくは思うのです。

 

たかがお金の問題で人生から転落してしまわないように、セーフティネットはしっかりと与えたい。でもその呪いとなるような資産は与えたくない。そんなふうに考えています。

 

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