FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

インデックス投資で考えるべき3つのこと

ぼくが投資を始めたころは、まだインデックス投資は市民権を得ておらず、知る人ぞ知る投資法でした。でもいまや、インデックス投資は、手法の一つとして定着してきています。ただし、一口に「インデックス投資」といっても、そこにはバリエーションがあり、どの方向でインデックス投資をするかを考える必要があります。

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ざっくりとしたインデックス投資入門

インデックス投資とは何でしょうか? 投資というと、株式銘柄を選んで気にいったり、上がると見込んだ会社の株を買い、上がったら売却するというイメージの人も多いと思います。

 

インデックス投資では、基本的に銘柄を選びません。複数の銘柄で構成された株価指数=インデックスに対して投資します。方法としては、インデックスに連動した投資信託や、それが市場に上場したETFを購入する方法を取ります。

 

特徴は、株式投資をしているひとすべての平均値のリターンを得られることです。投資している人のポジションすべての合計が、理屈上、株価指数になるので、これは当然です。そのため、銘柄選びがうまくても下手でも、平均を獲得できます。どんな初心者でも、平均を得られるというのは、ほかのいろいろな物事と違い、インデックス投資の特徴です。

 

2つ目に、平均のリターンが得られるだけでなく、リスク(値動きの変動)に対するリターンが高いことが挙げられます。一般的な金融理論では、リターンが大きいものはリスクも大きいのですが、唯一、複数の銘柄に分散させることで、リターンをそのままリスクだけを下げることができるのです。インデックスは、市場すべての銘柄に分散させる手法なので、リスクを最も下げることができます。

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このマーコヴィッツが示したモダンポートフォリオ理論に基づくと、ある限定された条件下ではありますが、すべての投資は同じポートフォリオを持つことが合理的であり(トービンの分離定理)、考えるべきは、無リスク資産をどれだけ持つかを決めることで、資産全体のリスクをコントロールすることだけになります。

 

さて、ここまでが、インデックス投資の概要でした。ただ、これによって結論がおなじになるかというと、そうではありません。ここから、深い深い選択肢が広がるのです。

リスク資産をどれだけ持つか:エクスポージャ比率

まず考えなくてはいけないのは、リスク資産の比率をどのくらいにするかです。例えば、1000万円を持っている人が、そのすべてを株式インデックスに投じるのならエクスポージャ比率100%、いわゆるフルインベストとなります。

 

400万円は預金で持っておき、残り600万円を株式インデックスに投じるという選択もあります。この場合、エクスポージャは60%です。いったいどのくらいの比率を、株式インデックスに投じるべきなのでしょうか? これがエクスポージャ比率、または現金比率問題です。

 

よく「失って困らない金額を投資に回そう」と言われます。これは、直近の生活費や、数年のうちに必要になる、教育費や住宅購入費などは取っておきましょう、という意味だと考えられますが、これは当たり前です。問題は、その上で、残ったお金はすべて投資に回して良いのか? ということです。

 

トービンの分離定理によると、この時、どれだけの現金を残すかで、投資の合理性に変化はありません。フルインベストすれば、リスクも増しますが、その分リターンも減ります。半分を現金に残せば、リスクも半分になり、リターンも半分です。

 

つまり、いくら投資に回すか? ではなく、自分が取れるリスクはどのくらいか、それを見極めて投資に回す金額を決めることが合理的だということです。でも、「自分が取れるリスク」っていったいどのくらい? これはそう簡単には見極められない問題です。

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何のインデックスか?:組入れアセット

2つ目に考えなくてはならないのは、何のインデックスに投資するのかということです。インデックス投資は、株価指数=インデックスに投資すると思われがちですが、もともとのモダンポートフォリオ理論がいっているのは、「市場ポートフォリオ」=市場にある金融商品すべてへの投資です。

 

その代表例であり、最も簡単に投資でき、計算も容易なため、株式インデックスが選ばれていると言っていいでしょう。そのとき、日本株のインデックス(日経225、TOPIXなど)に投資するのか、米国株インデックス(ダウ工業株平均、S&P500)に投資するのか、全世界株式(MSCI ACWI、FTSE Global)へ投資するのか、選択肢はさまざまです。

 

さらに、国債などのさまざまな債券、不動産、金などの商品、市場にある金融商品は無数にあります。この中からどのアセットを選んで組み入れるのかを決める必要があります。その比率をどうするかも考えなくてはなりません。分散理論では、相互に値動きが連動しない資産を組み入れることで、リスクを抑えリターンを上昇させられるからです。

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先程、日本株のインデックスと一口にいっても、日経225とTOPIXがあることを書きました。日経225は、対象としているのが大型の225銘柄ですし、計算方法も基本的にはその単純平均値です。TOPIXは東証一部銘柄すべての約2000銘柄が対象で、計算方法も時価総額加重平均(正確には浮動株基準)です。どちらが正しいインデックスなのでしょうか?

 

一部の大型株を押さえれば、市場平均の動きのほとんどをカバーできるという考え方もあります。ならば、例えば米国株インデックスを狙う場合も、S&P500(500銘柄)に連動したETFであるVOOを選べば、米国株を広く網羅したETF VTI(約3600銘柄)でなくてもいいということになります。さらに、世界の株式時価総額の過半は米国です。ならば、米国株だけ押さえておけばいいという考え方にもつながります。

 

さて、どこまでカバーすればいいのでしょうか?

 

最後に、実際問題として、単なる時価総額加重平均への投資が合理的なのかという疑問もあります。確かに時価総額加重平均は、全投資家の平均値ではあるものの、それは投資家のさまざまなマインドによって、歪みも生じています。そもそものモダンポートフォリオ理論(特にCAPM)は、参加する投資家がすべて合理的であることを前提にしており、実態とはかけ離れているのも事実です。

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であれば、単なる時価総額加重平均よりも優れたインデックス計算方法を探そうという動きも出てきます。例えば、平均分散ではなく最小分散に基づいて比率を決めたり、主にマルチアセットの場合の話ですが、リターンを推計せず、リスク比率を一定に揃えるというリスクパリティという考え方もあります。

 

そして、モダンポートフォリオ理論の生みの親たちも、理論とは一致しない歪み=アノマリがあると認めており、そのアノマリを把握してポートフォリオに反映させようという動きも、今や普通です。これは、この市場平均値=マーケットファクター意外にも、株価を動かす要因(ファクター)があると考え、ファクターごとに投資をするという意味で、マルチファクターモデルと呼ばれます。

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 何のインデックスを選ぶのか、株式以外の資産をどう組み込むのか、そもそも時価総額加重平均インデックスでいいのか。組入アセットも、深く悩む問題です。

リバランス頻度

最後に考える必要があるのが、リバランスです。1つ目のリスク許容度に基づいて、現金と投資資産の割合を決めました。そして、組入アセットの考え方に基づいて、どんなインデックスや各種アセットをどのくらいの 割合で持つのかを決めました。

 

ところが、市場は変動するので、いったん比率を決めても、比率は刻々と変わっていきます。放っておけば、心地よい比率よりもリスクを取り過ぎになっているかもしれませんし、株式の比率が高すぎるようになる場合もあります。最適な比率が崩れれば、リスクに対するリターンも最適ではなくなってきます。

 

この比率を調整しなおすのがリバランスです。しかし、リバランスというのは理論的に「逆張り投資」の手法を内在しており、市場の動き方次第では、うまく効果を発揮しません。 

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さらに、リバランスは資産の売買を伴うので、そこには売買手数料というコストも発生します。果たしてどのくらいの頻度でリバランスするのがいいのでしょうか?

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さらに為替の問題があります。ぼくらは日本の投資家で、日本円で生活しています。投資の目的も、移住でもしない限り、日本円を増やすことにあります。ところが、投資先がドル建て資産ならば、それは為替の影響を受けます。

 

現金が円で、投資資産がドル建てならば、ドル円為替が変動するだけで、比率が変わってしまいます。為替ヘッジには、二国間の金利差分だけコストが発生するので、一般的にはヘッジは不人気の手法です。それにしても、どの通貨建てでリバランスの有無を見たらいいのでしょうか?

実例 ぼくの場合の考え方

よくよく考えると、数ヶ月〜数年単位で上がる株を探すほうが簡単なくらいに思えてくるほど、これらの問題は複雑です。一方で、基本を押さえておけば、この3つについてはあまり考えなくても、大きな違いはないという考え方もあります。それでも、インデックス投資の中でも、次のようなスタイルの違いがあるようです。

  • フルインベスト派 vs. 現金比率を保つ派
  • 米国株インデックス派 vs. 世界株式派
  • 株式オンリー派 vs. 債券組入派
  • 時価総額加重平均派 vs. スマートベータ派
  • 数ヶ月おきのリバランス派 vs. 年単位のリバランス派

さて、ぼくの場合の例です。まず、数年前まではフルインベストでしたが、セミリタイアを決めてからリスクを抑えるよう、現金比率を30%前後まで上げてきました。米国株比率は高めですが、他の先進国や新興国にも投資する、全世界派です。株式以外の資産クラス、債券や不動産、商品にもくまなく投資するマルチアセットを目指しています。インデックス計算手法は時価総額加重平均の一般的なインデックスですが、これはスマートべータ系の手数料嫌っているのと、それ以外の適切なインデックスがないと考えているからです。リバランスは、短くて1年に1回、たいていは3〜5年単位で考えています。

 

ひとえに「インデックス投資家」といっても、意外にバリエーションがあるものです。もちろん、細かいことは気にしないという人も多いでしょう。それでも、いまの現金比率は本当に最適なのか、株式以外の資産クラスを持たなくて本当にいいのか、それは雰囲気ではなく、考えた末の結論としたいものです。