なるほど!と膝を打つ本を読みました。従来とは違う、「シン富裕層」が2017年頃から増加しているとし、彼らがどのようにして資産を築き、どんな行動をしているのかを紹介した本です。
- 40代がメインのシン富裕層
- ビジネスオーナー型
- 資本投下型
- ネット情報ビジネス型
- 暗号資産ドリーム型
- 相続型
- その特徴ーー決断が早い、情報にお金を払う?
- その特徴ーー欲を消せるか、ロジックか、信仰か
- 次世代の最強ビジネスは情報商材
40代がメインのシン富裕層
著者はシン富裕層をメインに海外移住のコンサルティングを行っている人物です。これまで2万人を超える富裕層から相談を受けてきたといいます。2017年以降生まれたシン富裕層のメインは40代。次に50代、30代が来て、わずかに20代もいるといいます。シニア層が多かった昔の富裕層とは年代が違うのです。
高級車、高級時計、オーダーメイドのスーツ……少し前なら一点豪華主義であっても見分けがつくようなわかりやすい記号を持っていたかもしれません。しかし「シン富裕層」はたとえがいいかどうかはわかりませんが、エリートビジネスマンどころかそのへんにいる学生のようでもあり、街中ですれ違ったとしても「リッチ感」のオーラはゼロと言っていいでしょう。
ボトムスはたいていスウェットパンツ。ジーンズでもコットンパンツでも、ましてスラックスでもありません。さらに高級ブランドのスウェットパンツでもなく、ユニクロなのです。ブランド物の時計やバッグももちません。
自宅についても投資と考えている人が多く、子供の住環境重視で贅沢目的ではありません。恋愛や友人関係も、お金を持ったからといって変わることがなく、従来同様。
こんな、よく隣にいるような人が現代のシン富裕層なわけです。
そしてそのタイプは資産構築の方法によって5つに分けられるといいます。
ビジネスオーナー型
一つはいわゆる起業家です。よくも悪くも昔からあるタイプで、欲求も比較的オールドスタイル。
ビジネスオーナーは、「シン富裕層」の中ではある意味昔からいるタイプともいえるでしょう。他のシン富裕層のタイプと比べて、成功や欲望に強い関心をもつ人が多いです。いいモノを買う、いいサービスを受ける、いい家に住むなどの欲求が原動力になっている方が多いです。不動産投資に積極的なのも特徴です。目に見えるモノを好む傾向はもっとも顕著かもしれません。
ただ古くからの起業家と違うのは、事業を生み出すことに特化していて大きくすることにあまり興味を持たないことでしょうか。このあたりは、たしかに最近こういう人が多いなぁと感じます。
それはつくった会社を巨大化し続けるというベクトルではなく、アメーバのように新規事業を多角的に手がけるという点にあります。既存のビジネスは人に任せてフットワーク軽く新しい分野を開拓していく、という起業に特化するタイプ。
資本投下型
2つめは、高い給与を元手に、GAFA投資で当てたり、自宅の値上がり益で資産を作るパターン。SNSの投資アカの一部は、このパターンの人が多いですね。
さらにこの中で多いのが、自宅投資型だそうです。都心の高級マンションを買って、値上がりとともに売却し、さらに高いグレードのマンションを買うことで資産が膨張していく手法です。「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」があるため、キャピタルゲインを無税で取得できるのです。
さらに低金利+ペアローンの増加もあって、1億円くらいのローンを簡単に組める環境だったことも追い風となりました。
ネット情報ビジネス型
昨今勢いがあるのが、情報商材やYouTuberなどのネット情報ビジネスだそうです。いわゆるファーストペンギンです。情報収集にお金をかけて、ビジネスを一人から少人数で行い、外注をうまく使ったマイクロビジネスをしています。フットワークが軽いことが特徴です。
資格を取って安定した仕事を目指すような人も、最近ではこのジャンルに参入してきています。情報商材というといかがわしいイメージをぼくなんかはまだ持ってしまうのですが、いろいろな意味で急成長ビジネスだということですね。
彼は割り切っていて、「税理士の仕事では高収入は得られない。でも税理士という国家資格を持っていると世間的に信用が増すので、そのために資格を取った」と言っていました。「税理士資格を持っている人が書いたノウハウ本」というブランド力で、情報商材を売っているということです。
暗号資産ドリーム型
4つ目が仮想通貨持ちです。数億から数百億円規模も多いそうです。特徴は、何百倍、何千倍と高騰しても、持ち続ける忍耐力がある人。メンターがいる人と、自分で考えて決断できる人に分かれます。
仮想通貨を「買ったことがある」人はかなり多いのですが、そのほとんどが2倍からいっても10倍で「利確」してしまっています。それを100倍、1000倍になってもホールドし続けられる人だけが、暗号資産一本でシン富裕層になっているのです。
勧誘されるほとんどの投資話が詐欺といわれる中、たまたま投資した暗号資産が詐欺ではなかったというドリーム要素が非常に大きいということで、「ドリーム型」となづけているようです。
実はメンタリティはFIREとかに近いかもとも想います。
大富豪といわれる実業家が、動画配信などに登場して話しているのを見ていると、話し方や雰囲気など、すべての力が抜けている印象を受けます。表情も変につくらないし、誰に気も遣う必要もなさそうなふるまいです。暗号資産でシン富裕層になった人たちも、そういう力の抜けた雰囲気で、思うままに生きている印象です。
相続型
最後の相続型は、特にコメントの必要はありませんね。いつの時代にも相続で富裕層になる人は一定いるのです。
その特徴ーー決断が早い、情報にお金を払う?
では、こうした「シン富裕層」はどんな特徴を持っているでしょうか。
「ビジネスオーナー型」と「ネット情報ビジネス型」の2つは、決断の場数が多いために直感が研ぎ澄まされているといいます。「暗号資産ドリーム型」についても、自分で暗号資産について研究し、計画して買うことを決めた人は、ほぼ即決です。サラリーマンとは真逆の、この決断力がポイントの一つです。
情報にお金を払うかどうかは、タイプによって違います。「ビジネスオーナー型」と「ネット情報ビジネス型」はここにお金をケチりません。不動産仲介料をケチるとか、もってのほかという考え方をするわけです。
情報ビジネスを仕事にしているタイプは、ノウハウやアドバイスなどには即決でお金を払います。なぜなら、自分自身がこれまで、そうやって専門家からノウハウを買うことで成功してきたし、自身が価値があると思っている情報商材を販売していることもあるからです。ただし株式投資家やFXトレーダーは、自分の努力でコツコツとやってきたという自負があり、情報にお金をあまり払おうとしません
一方で、株式投資家や「資本投下型」の人は情報にお金を払いません。伝統的というか、書籍や論文は信じるけれど情報商材を評価していないタイプです。さらに決断が遅く、相見積もりを取る人が多いことを著者は批判しています。
情報やサービスを値切ろうとし、時間をかけて交渉したがるのが、「資本投資型」の人たちです。特に大企業のサラリーマンは、何かを購入するときにどこが一番安いのか、「相見積もり」を取ります。
その特徴ーー欲を消せるか、ロジックか、信仰か
もう一つ、株式投資で成功している人の特徴は2つあるといいます。
まず株式投資に関しては、「欲をなくす」よう、精神力を鍛えるしかありません。お坊さんのような無の境地に入るのです。
欲を消せない人が、もうひとつ取れる手法としては、信者のように信じ込むことです。 金融マンが一生懸命に勉強して、投資の手法をロジックで固めるのは、頭で考えて決めておかないと、どうしても感情に負けてしまうからです。
投資で勝ち続け、何億も稼いで「シン富裕層」になれる人は、欲から解放された人か、ロジックを信じて実行し続けられる人。これはいろいろ納得感があります。自分の経験でも、数万円、数十万円くらいが一番欲にまみれる金額で、失って怖いし、得て嬉しく想います。このお金で「あれが買える」とか想像しやすいのです。
ところが、これが数百万、数千万、数億の増減となると、だんだんスプレッドシート上の数字になっていきます。イメージがわかないがゆえに、何パーセント増えたかはチェックしますが、だからどう? という感じになっていきます。ゲーム感覚になるのです。
ロジックで固めてルールを作るというのも、トレードの成功則としてよくいわれますが、それを「信仰」と呼ぶのが面白いところ。さらに、仮想通貨で成功した人こそ、まさに「宗教のように信奉できる」ところに特徴があるといいます。
暗号資産ドリーム型は、暗号資産をとことんまで調べて、将来の値上がりを宗教のように信奉できるのです。
次世代の最強ビジネスは情報商材
「富裕層はこんな考え方をする」「富裕層はこれを大事にする」みたいな記事がネットによくありますが、いずれも変な礼賛で、ぜんぜん僕が知っている富裕層とは違うなぁと思っていました。ところが、本書が描く富裕層は本当にリアルです。そうそう、今の富裕層ってこんななんですよ。
そして筆者が「次世代の最強ビジネス」と呼ぶのが情報商材です。
情報商材の「ノウハウ」はピンキリですが、基本的には「狭くて深い専門的な知識」というよりも、「広く浅く、実践的で役立つ」ものが、不特定多数の人に好まれ、売れています。
noteとかを見ていると、このジャンルのイメージがだんだん変わってきていることも感じます。「出会い系」と呼ばれて怪しまれていたサービスが「マッチングサイト」として誰でも使うものに変わっていったようなものでしょうか。
こうした価値観も、だんだんアップデートしていかなくてはいけないかもしれません。