FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

過去1年の日本株リターン 個別株とインデックス

「インデックスは儲からない」。Twitterなどでこんな話をよく聞きます。確かに、セミリタイアを目指すのであれば、少なくとも1億円以上は資産が必要でしょうし、入金力が少なければ、それをインデックスで実現するのはけっこう大変です。つまり、平均6%程度のリターンでは、小さすぎる――というわけです。

 

では、インデックス投資の代わりに個別株に投資すればいいのでしょうか。あながち間違っていません。僕自身も、インデックス投資をメインとしながらも、資産の一部は個別株への集中投資で構築しました。ただし、インデックスではなく個別株に投資すれば儲かると無闇に考えるのは早計でしょう。

 

日本株の過去1年のリターンについて、どんな状況だったのかを分析してみました。

日本株の過去1年のリターンはどうだったのか

国内で上場している株式3996銘柄について、過去1年間のリターンを調べました。SBI証券からデータをもってきています。このリターン(騰落率)について、ヒストグラムにしたものが下記です。

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最もリターンが大きかったのは447%。一方で、最も悪かったのは-85.18%。メジアン(中央値)は-3.79%でした。そして平均値は2.16%です。

 

これが意味することは何でしょうか。メジアンがマイナスなのを見て分かる通り、約4000銘柄のうち、リターンがプラスだったのは1713銘柄。半分以上がマイナスのリターンだったということです。ヒストグラムを見ても、-10%〜0%のレンジに、767銘柄があって、最頻値もリターンはマイナスだったことが分かります。

 

それでも平均値が2.16%となったのは、一部に大きなリターンを生み出した銘柄があったからです。極めて少数の、大きいリターンを叩き出した銘柄に引っ張られて、平均値が上昇したことが分かります。

インデックスのリターンは?

では、このときインデックスのリターンはどうだったのでしょうか。TOPIXインデックス連動のETFを見るとリターンは2.5%。日経225平均連動のETFでは4.49%でした。上場銘柄全体のメジアンよりも平均値よりも、インデックスのリターンは上回っています。

 

TOPIXのリターンを上回った銘柄は、全銘柄の38%しかありません。日経225のリターンを上回ったのも34.3%です。逆にいえば、個別株を買って、インデックスを超えるには、全体の約3分の1から銘柄を選ばなければいけなかったということです。

 

では、東証一部上場銘柄でヒストグラムを作ってみるとどうでしょうか。

東証一部 TOPIX銘柄のリターン

2165銘柄の平均値は3.33%となりました。メジアンは-1.96%です。こちらも同様に、最もあり得るリターンは-10%〜0%で、TOPIXのリターンである2.5%を下回りました。

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銘柄数は減りましたが、グラフの形はよく似ています。この場合でも、TOPIXのリターンを上回った銘柄は、全体の42%でした。

インデックスのほうが有利なのか?

ただしこれをもって、インデックスのほうが有利とはいえません。上記の平均値は、全銘柄の単純平均です。ところがTOPIXは時価総額加重平均ですし、日経225平均は代表的な225銘柄の平均だからです。

 

時価総額加重平均であるTOPIXのリターン2.5%に対し、TOPIX銘柄の単純平均は3.33%でしたが、これは単に、相対的に小型株のほうがリターンが良かった1年だったということを意味しています。時価総額加重平均だと、大型株のウエイトが大きくなり、リターンの影響度が大きくなるからです。

 

一方で、上場全銘柄の単純平均(2.16%)が、TOPIXを下回ったのは、ウエイト付の違いのほかに、TOPIXに採用されていないREITなどの影響もあったのではないかと想像できます。いずれにせよ、平均値の良し悪しについては、その年の状況によって有利不利は変わるのでしょう。

 

今回のグラフは、コロナショックを挟んだ1年間のデータであり、ここだけを見て、小型株の方が有利だ、とか時価総額加重平均より均等ウエイトのほうが有利だとか、そういうことは言えません。ただし、一つだけ、言えることがあります。

最頻値では、まず間違いなくインデックスを下回る

一つ、確実にいえるだろうことは、最頻値は、まず間違いなくインデックスを下回るだろうということです。株式銘柄のリターン分布は、単純な正規分布ではなく、極端に大きなリターンを出した銘柄が、ロングテールを形成するからです。

 

素朴に考えると、個別株とインデックスを比較したとき、例えば銘柄数が100ならば、50銘柄はインデックスに負け、50銘柄はインデックスに勝つようなイメージを持ちがちです。ところが、このような分布だと、60〜70%程度はインデックスに負け、残りの30〜40%程度がインデックスに勝つという構造になります。つまり、インデックスに勝てる銘柄は、ほぼ間違いなく、半数よりも少ないのです。

自分ならばインデックスに勝てる銘柄を選べるのか

全体のうち、上位3〜4割をうまく選べば、インデックスに勝てる。そのくらいは簡単だ。そんなふうに思う人もいると思います。もちろん、実際にうまく銘柄を選択して大きなリターンを出している人もいるでしょう。ただし、全員がその3〜4割をうまく選ぶことは、理屈上不可能です。

 

インデックスに勝てるかどうか、つまりインデックスに対する超過リターンの観点でいうと、これはゼロサムゲームになり、誰かが出した利益と同じだけ、誰かが損をしているからです。さらに、先の分布を考えると、ごく一部の人が大きな利益を出し、多くの投資家がインデックスに負けている。そうした構造になります。

 

つまり、インデックスでは儲からない、個別株ならば儲かるというのは、インデックスに買っている上位の銘柄を、他の人はうまく見つけられないが、自分ならばうまく見つけられるという確信があるということです。

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正直に言うと……

自分自身でいうと、資産全体の15%ほどを個別株にまわしており、こちらはインデックスを遥かに上回るリターンを上げてきました。すでに売却してしまったNVIDIAやiRobot、Teslaなどもありますが、Amazon、Google、Facebookなどは長期保有です。その昔に失敗した日本株を除けば、損失を出したこともありませんし、少なくとも購入額の数十%の利益は上げてきています。

 

でも、なぜこれらの株式への投資がうまくいったのか、全く合理的な説明ができないんですね。はっきり言って、雰囲気と運です。もちろん、購入にあたっては事業自体の分析から、財務分析、CEOの調査など一通りのことはやります。ただし、株価は基本的に効率的に決まるという思いを持っているので、分析したって、他の人が気づいていない何かを見つけられるなんて、まったく思えないのです。

 

Teslaはmodel3を発表した頃の、資金ショートの噂も多く、株価が大きく下げていたときに購入しましたし、Facebookは上場直後、モバイル対応が不安視され、大きく下げたときにやはり購入しています。この2銘柄に関しては、将来性を信じて買ったわけですが、AmazonやGoogleに関しては、今も昔も人気のグロース銘柄でした。

で結局、インデックスなのか個別株なのか

結局のところ、個別株はインデックスよりも儲かるのでしょうか? シンプルな答えは、「当然儲かる人はいるが、その数は半数よりも少ない」です。

 

そして、個別株については、儲けた人はそれを喧伝しますが、損した場合は口をつぐむことが多いということも覚えておくべきでしょう*1

 

ただし、目標とする資産額が大きく、インデックスのリターンでは足りないのならば、チャレンジする意味はあるでしょう。その場合、インデックスのように基本的に上昇するロジックを持った資産からリターンを得るのではなく、多分にゼロサムゲーム、利益の奪い合いになることは覚悟すべきではないかと思います。テラ銭こそ小さいですが、構造はギャンブルと同じだということです。 

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