経済的に自立(FI)した上で、退職に限定せず好きな仕事で働く(RE)ことがFIREだと思っていますが、今回サラリーマンも退職し、世間的な意味で完全FIREすることにしました。
完全FIREすると、収入のコントロールが容易になり節税の機会も増します。今回は退職金控除を最大活用するための手法として小規模企業共済を検討する中で、概論の前回に続き、実際に加入してみましたので、その顛末を。
個人事業主か法人役員か
まず小規模企業共済の場合、個人事業主で加入するか法人の役員として加入するかを選択しなくてはなりません。
それぞれに必要な書類が違い、下記が必要になります。
個人:確定申告書/開業届
法人:登記簿謄本
ぼくの場合は「個人事業主」であり「中小企業の経営者」でもあります。自分が入れるかどうかは中小機構に電話すると調べてくれるので、確認してみました。すると、「個人事業主としても中小企業の経営者としても加入できるということでした。
というわけで今回は個人事業主として加入します。なぜかといえば法人役員として加入してしまうと、共済金Aとして受け取るには法人を解散する必要があります。つまり法人から受け取る退職金控除と小規模企業共済の退職所得控除のタイミングが一緒になってしまい、控除枠が合算されてしまう。
しかし個人事業主であれば個人事業を「廃業」すれば共済金Aとして受け取れるわけで、法人からの退職所得を受け取るタイミングとずらすことが可能です。個人事業を廃業したあとも、もし働く(仕事を受注する)なら法人のほうで受注すればいいわけで、あまり問題はありません。要するに、個人事業主として加入したほうがタイミングをコントロールできるわけです。
今年開業で確定申告書がないので開業届を。開業届はe-taxで申請したので税務署印がありません。その場合、e-Taxのメッセージボックスに届いている受信通知をPDF化して添付すればOKということでした。
オンラインで加入できる小規模企業共済
小規模企業共済は実はオンラインから加入できます。小規模企業共済を運営する中小機構がサービスを提供していますが、ドメイン名やサイト名が「e-私書箱」になっているので実際に運営しているのは金融系SIerの野村総研(NRI)ですね。
e-私書箱の名前の通り、中身はマイナポータルで、マイナンバーカードを使ってログインして登録を進めます。ただPCから利用するにはICカードリーダーが必要で、デジ庁のマイナポータルのようにPCのWebサイトに表示されたQRコードをスマホで読み取って、スマホでマイナカードを読み取ると、PC Webでログイン……ということはできません。
カードリーダーがなければ、スマホでマイナカードを読み取り、スマホで手続きを進めるしかないのが、かなりいまいちです。
ログイン後の流れは次の感じです。
- マイナカードから基本情報を読み取る
- 注意書きに同意
- フリガナや住所などを入力
- 業種や従業員数などを入力
- 月額掛け金を入力
- 必要書類をアップロード
- 口座振替を登録(銀行サイトに遷移)
- 最終確認
と、ここまでやって最後の最後で「OK」ボタンを押したら出てきたのは次の画面です。
おいおい。まじかよ。最後の最後で? その後、同じ端末(Pixel8)で再度試し同じエラー。ネットワーク回線の問題を考えて、VPNをオフにして再度、光回線の問題を考えて4G回線から再度やっても同じエラー。端末の問題かと思い、iPhoneに変えてやっても、最後の最後で固まる始末。全滅です。
サポートに電話してエラーコードを伝えても「原因不明」と言われるのみ。最後に言われたのは、
「オンラインではうまくいかないので、紙の書類を持って店頭で手続きしてください」
の一言でした。いやはや日本のDXの現実がそこにはありました。
加入時期と控除タイミング
それならば仕方ない。銀行の窓口で申し込むかと気を取り直して。メガバンク含む、メジャーなところでは大体取り扱いがあるようです。ちなみに加入のための書類を調べたところ、申込書は複写式のみでPDFダウンロードできず、フォームから資料請求するしかないようです。到着まで一週間程度かかるそうなので、事前取り寄せは断念。
多くの窓口では書類が用意されているということなので、銀行の窓口で書類を受け取って記入することにしました。
ちなみにオンラインと店頭では少し違いがあります。まず共通なのは小規模企業共済の加入月数の計測で、これは申し込んだ日からカウントされるそうです。オンラインで11月30日に申し込めば11月加入。店頭で12月4日に申し込めば12月加入です。加入月数は、中途解約時の返戻率やペナルティ対象となる月数に影響するし、退職所得控除額の計算にも影響するので、1ヶ月でも早いほうがいいですね。
もう一つは掛け金がどのタイミングの所得控除として扱えるかです。実はこちら、加入月や加入年とは関係なく、支払いがあった年の所得控除となります。つまり加入月が同じでも、11月12月中に支払いできれば2023年の所得控除、支払いが1月になれば2024年の所得控除となります。
そして、オンライン加入の場合、支払い手続きに2ヶ月かかります。2023年の所得控除を行うには10月中に申し込みが必要なのです。
一方、店頭申込の場合は12月であっても、12月の支払いが可能です。これはオンラインが口座引き落とし(2ヶ月後)しか選べないのに対し、店頭は現金払い(即時)が選べるから。つまり店頭申込ならば、2023年分の所得控除も可能だということです。
でも所詮、数カ月分の差でしょう? いやいや。実は小規模企業共済は翌年分の前納も可能。しかも年払いも可能なのです。つまり、12月に2024年分1年分もまとめて払えば、12月〜翌11月分の12ヶ月分が支払えて、2023年分の所得控除が可能なのです。なにこのチート的な手法?
店頭で申し込んだ
というわけで、オンラインを拒否されたぼくは店頭で申し込みすることにしました。三井住友銀行の店頭に行って「小規模企業共済に入りたいのですが」と伝えたら、申込み用紙をわたされてこれを書くように、と。記入して、24年分まで1年分を前納したいと伝えたら、84万円を現金で渡して完了です。
書類のチェックなどで合計1時間ほどかかりましたが、申込みは完了しました。ちなみに最初は11月30日に行ったのですが、窓口が月末で混んでいて、受付までに1時間以上かかると言われて断念した結果、12月頭の本日となりました。
ちなみに初回のみ現金払いが可能ですが、翌年からは必ず口座引き落としだそうで、つまり三井住友銀行の口座と印鑑は必須です。次回は2024年12月に翌1年分が引き落とされるそうです。自動的にそうなるということでした。
支払い方のベストプラクティス
小規模企業共済は月払い/年払いが選択できますが、どのように支払うのが合理的でしょうか。まず支払った日が属する年の控除が可能なので、所得控除の観点からいうと年の最後に支払うほうが得です。
2023年の控除を得ようと思ったら、1月〜12月のどこかで支払うわけですが、1月に支払うメリットはありません。その間資金を利用できることを考えると、12月末日がベストということになります。年払いなら毎年同じタイミングで支払うことになるので、毎年12月に支払いを行うのが最適解です。
では加入はというと、少しでも長いほうが良いことになります。というわけで、12月に加入して、12月に翌年分含めて1年分を前納することになった今回は、期せずしてベストプラクティスとなったわけです。
なお、前納することのメリット・デメリットも考えてみましたが、支払いタイミングと加入タイミングは別々に設定できると考えれば、前納であるかどうかを考える必要はないと理解しました。加入はできるだけ早いほうがいいし、支払いは12月がいい。前納すれば2023年分から控除できるし、前納しなければ控除は2024年分からになります。もし2024年分から控除するなら、支払いは12月のほうがいいので加入も12月まで待つことになります。つまり、12月に加入して翌年分1年分を前納するのも合理的だということです。
引き落とし方法の変更
なお今回は三井住友銀行で申し込みをして、引き落とし口座も三井住友銀行にしましたが、引き落とし口座は変更可能です。小規模企業共済では、オンライン申し込みに関してGMOあおぞらネット銀行と楽天銀行が選択できますが、店頭では選べません。
ただしあとから引き落とし口座をGMOあおぞらネット銀行や楽天銀行に変更することは可能なので、次回の引き落とし2024年12月までに、引き落とし口座を変更する予定です。