知る人ぞ知るネット完結低金利証券担保ローンの「野村Webローン」に続き、楽天証券もネット完結低金利証券担保ローンを始めたことで、証券担保ローンがなかなかに熱くなってきました。
するとよく「長期で借りているんですか?」と聞かれるのですが、実はぼくは極短期でしか借りていません。それはなぜか。
証券担保ローンとは
証券担保ローンというのは、証券会社に預けた株や債券を担保にしてお金を借りるローンです。野村の場合で金利1.9%、楽天証券は1.875〜3.875%と比較的低金利で借りることができます。
証券担保ローンの位置付け
証券担保ローンの1.9%という金利はなかなかに魅力的です。他の借り入れとざっくり比較してみると、こんな感じです。
- 住宅ローン(変動) 0.5〜0.7%
- 住宅ローン(フラット35) 1.84%
- 太陽光ソーラーローン(固定) 2%前後
- 収益不動産ローン(変動) 0.5〜3.5%程度
- 証券担保ローン(変動) 1.9%
- 信用取引 2.8%程度
- 銀行系自動車ローン(固定) 1.9〜5%程度
- ディーラー系自動車ローン(固定) 3〜9%程度
- カードローン(固定) 1.5〜18%程度
当然ながら、カードローンのような無担保ローンが最も金利が高く、担保の価値が安定するに従って金利も低くなります。不動産を担保にするローンと自動車を担保にするローンの間くらいに証券担保ローンは位置するイメージでしょうか。
追証の有無が重要
では、証券担保ローンの位置付けが分かったところで、どんな目的の借入に使うのがいいのでしょうか。まず、株の信用取引を使うのであれば証券担保ローンでお金を借りて現物を買うほうがいろいろメリットがある感じ。ただし信用取引の売りはできないのでそこは欠点かも。
他の使い道は……と見る前に、もう一つ、追証の有無が重要です。どういうことかというと、途中で担保の価値が下がっても一括返済や追証を求められないローンは、実際のところたいへんリスクが減ります。上の例だと、住宅ローンやソーラーローン、不動産ローンなどがそう。また自動車ローンは期間が短いということもあり、カードローンはそもそも無担保なので関係ありません。これらのローンは、担保がどうなろうと追証を求められたり一括返済を求められることがないという意味で、大変有利なのです。
他方、証券担保ローンと信用取引は、担保価値が下がると追証を求められたり一括返済(強制ロスカット)を求められるというリスクがあります。
追証の有無は、特に長期で借りる場合に重要です。長いあいだには価格の変動があるわけですが、下がったときに強制ロスカットのリスクを負ったり、追証を求められると辛い。ロスカットを避けるにも追証のリスクを緩和するのも余裕のある現金を持たなくてはいけず、更にマージン管理もしなくてはいけないからです。
それに比べ追証のないローンの気楽さといったら。不動産価格が多少下落しても、「まぁ5年10年待てば戻るだろ」くらいにドンと構えていられるわけです。
証券担保ローンを何に使うか
このように見ると、証券担保ローンの使い所も分かります。あくまで私見ですが、信用取引のロングを使うなら証券担保ローンで現物を買ってしまうのはアリだと思っています。
また、証券担保ローンのほうが金利が安ければ自動車ローンとして使うのもありかもしれないと思っています。これは期間が長くて5年程度だし、金額もそこまで大きくないので、もし追証がかかるような状況になったらローンを全部返済してしまえばいいからです。逆にいえば、「現金はあるけど敢えてローンで買う」場合の選択肢であって、「現金がないからローンで」という場合に証券担保ローンを使ってクルマを買うとドツボにはまる可能性はあります。
そして使い方を選ぶのが、不動産系のローンとして使うこと。まずそもそも不動産系のローンは金利が低く、証券担保ローンよりも低いことが多い。つまり、1.9%以上の金利でしか借りられない人や物件の場合の選択肢ということになるわけですが、そういう不動産はそこそこリスクがある場合が多いわけです。
不動産でローンを組めば資産価値が減少しても追証なしで、リスクを一定抑えることができるのですが、証券担保ローンの場合、株価が下落すると大きな問題になってしまいます。もちろん、株価を担保にするのではなく国債などを担保にすれば追証リスクはたいへん小さくなりますが、そもそも借金して投資するのならば、国債を売却して頭金にしたほうが、リスクも小さく、リターンも大きくなります。そもそ不動産投資の最大の利点は、購入する不動産自体を担保としてお金を借りられることなので、有価証券を担保にするのはちょっともったいないかな? という気もします。
ただしメリットもあって、それはキャッシュフローが大幅に改善することです。通常の投資用不動産は、家賃収入から管理費とローンの元本返済と金利を引いた残りが手残り=CFになります。このうちコストの中で最も大きいのが元本返済なわけですが、証券担保ローンでお金を借りれば、元本返済が必要ないのです。かかるコストは管理費と金利だけなので、そりゃCFは激増します。インカムにレバレッジをかけた投資のようなものですね。そのかわりにキャピタルゲインは望みにくいですけど。
そのため、利回りは悪くないけど、何らかの事情で借入が厳しい=金利が高い、多くの金額が引けない という場合は、証券担保ローンで購入するというのも一案かもしれません。例えば築古物件などは、地銀などの低金利融資が引きにくい場合もあり、金利が高くなる傾向にあります。ならば、証券担保ローンのほうが有利になることもありそうです。
僕自身は短期利用
そんな中、僕自身は証券担保ローンは極短期の借入にしか使っていません。具体的には、優待クロス、IPO、PO、分売向けの資金需要です。これらは数日から長くても1〜2週間程度の資金需要なので、この間に担保価値が下落するリスクは限定的です。
また1.9%の金利に対して、確実にそれを上回るリターンが得られます。そして資金があればあるだけ利益が上乗せできます。つまり、借りられるだけ借りるのが合理的だということです。
もちろん、優待クロスで逆日歩が出まくるなど全体で損失を出してしまったり、購入したIPOが損失ばかりだったりした場合、証券担保ローンはレバレッジ投資なので損失も拡大してしまうのですが、これらの投資はプラスになる確率が高いところが特徴です。だからレバレッジの旨味もある。そして、もし投資的に失敗したとしても、元本を失うほどのダメージにはなかなかならないところも重要です。
証券担保ローンはあくまでレバレッジ手法。そのため低リターンでもリスクが低い先に使うことが重要ではないかと考えています。