久しぶりに保有銘柄の売却です。昨日、米国債ETFを一部売却しました。その背景にあるのは、米国の財政悪化からくるドルの価値下落トレンドです。保有の超長期米国債ETFであるTLTを半分売却、またTMFや2621にも売り注文を出しました。
米国債ETFの売却開始
ぼくが現在持っている債券系の金融資産は次の通りです。
- TLT(米超長期国債ETF)
- IS米国債20年ヘッジ【2621】
- HYG(ハイイールド債ETF)
- ハイイールド債投資信託
- TMF(米超長期国債3倍レバレッジETF)
- 個人向け国債 変動10年
- 米国債29年満期(利付債)
- 米国債29年満期ストリップス
- 米国債44年満期ストリップス
このうち、TLTと2621を半分、TMFをすべて売却注文を出しました。少し上で指値注文を入れています。すでにTLTは約定しました。
どういう意図の売却か
債券にはいろいろな種類がありますが、今回売却したのはインカム(金利)を得る目的ではなくデュレーション(金利変動によるキャピタルゲイン)を得ることを目指した商品です。超長期国債というデュレーションが25年程度のものになります。
高デュレーションの商品は金利が下がると大きく価格が上がります。株価下落などが起こると資金の逃避先として債券が買われ、債券価格が下落=金利が上昇しますが、それを狙った商品になります。
ただ昨今の情勢を見るに、特に米国のデュレーション目当ての商品は厳しいだというと考えていて、そのボリュームを減らし、代わりに低デュレーション債券や米国以外の国の債券に切り替えようと考えています。
金利のこれまでと今後
米金利のこれまでの動きを振り返っておきましょう。2017年あたりから長短金利差はちじまり、イールドカーブのフラット化が進みました。そんな中起こったのがコロナ禍です。低金利政策により急激に金利は低下、短期金利はほぼ0に落ち込みました。
続いて起こったのがインフレです。今度は急激に政策金利が上昇。政策金利にほぼ連動する2年もの金利も急上昇。ところが長期金利はそこまでのペースでは上昇せず、再びイールドカーブはフラットに。一時は短期金利が長期金利を上回る逆イールドが発生していました。

2024年ころからインフレ沈静化を背景に金利は落ち着き始め、全体に下がり始めます。ところが米大統領選挙に向けて再び上昇し、トランプ氏が当選。トランプ大統領がトランプ関税を打ち出した2月頃からは短期金利は下落するも、逆に長期金利は上昇し、イールドカーブが立つスティープ化が進行しました。

下記は、30年債と10年債の金利差(青)と5年債と2年債の金利差(赤)です。

金利のある世界の復活
コロナが起き、各国は膨大な給付金をバラマキました。これで経済を支えようとしたわけですが、当然それには副作用があります。コロナ真っ最中の2020年に、すでに給付金によってインフレか増税が起こると書きましたが、これは意外でも何でもなく論理的な帰結でした(ここで書いたのは日本ですが状況は海外も同じ)。
そして2020年5月の段階で、コロナバブルが引き起こされると書きました。というか、経済メディアはだいたいそう書いていました。
さてさて、その後コロナが落ち着くとともに急激なインフレが起きました。しかしFRBはうまくインフレを抑え込んだように見えました。一時は高金利により経済が失速してクラッシュするまで金利を上げざるを得なくなるハードランディングシナリオも取り沙汰されましたが、うまく舵取りをしたということです。
そこで、次のように書いたのが2023年の春。
ぼくの想定シナリオは、インフレはピークを超えており、利上げもあと1〜2回。今年後半には利下げもあり得るというものでした。これを見越して長期金利は下がり始めており、ならば!と債券を購入したのです。
実際、FRBは2024年9月に利下げを決定し、これで金利は下がるかな……と思ったものです。ところが短期金利は下がったものの、逆に長期金利は上昇。長期国債投資家は損失を被りました。
下記の記事を書いたときには「なぜ利下げしたのに長期金利が上がるの?」と謎だったのですが、これは実はそろそろ米国の財政の悪化が顕在化してきたというタイミングでもあったということです。
というわけで、昨日書いたレイ・ダリオの見立てです。膨大な債務によってドルの信任は低下してきており、長期国債は供給過多。人気のない債券となってきていて、要するに価格は低下し、長期金利は上昇します。
政権は国債利払いを抑えるために政策金利は低く誘導するでしょうが、財政の健全化が見えなければ長期金利は上昇するでしょう。
ぼくはもともとインフレが落ち着けば金利は低下すると素直に考えていました。それが米長期国債ポジションを多く取った理由です。しかしそれは失敗でした。今後は米長期金利の上昇可能性が高く、ドルの価値低下に伴い中長期ではドル安が進むと考えます。しかもこれは構造的な問題なので、ノイズで揺れながらも数年〜十数年かけて徐々に進むでしょう。というわけで、米国債のデュレーションの大きいポジションを半減させ、代わりに低デュレーション債券と、米国外の債券に移そうと考えています。
また財政健全化には、支出削減/増税/低金利/インフレ のそれぞれの組み合わせが必要なので、インフレも収まり切ることはないと考えています。なのでTIPS(インフレ連動債)とかも面白いかもしれません。