この数年で使い勝手がよくなったことといえば、やはりクレジットカードを使った投信積立です。楽天証券急成長のドライバーともなったこのクレカ積立、ベストプラクティスはどんなものか考えていきます。
- クレカ積立とは?
- クレカ積立のメリット
- クレカ積立を提供している証券会社
- 各社共通のベストプラクティス
- 楽天証券のベストプラクティス
- 楽天キャッシュ買付のベストプラクティス
- SBI証券のベストプラクティス
- マネックス証券のベストプラクティス
- auカブコム証券のベストプラクティス
- tsumiki証券のベストプラクティス
- CONNECT証券のベストプラクティス
- 九条の場合
クレカ積立とは?
クレカ積立とは、毎月投資信託を積み立てるにあたり支払いをクレジットカードで行うものです。楽天証券が2018年10月にスタート。その後、急速に普及しました。
最大の制約は、一つの証券会社あたり月間5万円までしか積立ができないこと。これは、証券会社が顧客に借金をさせて投資させることを禁じた金融商品取引法第44条があるためです。その例外規定として、内閣府令大148条で「分割払いはNG」「積立であること」「顧客はいつでも解約できる」「10万円まで」ならOKよ、とされました。
クレジットカード決済の場合、タイミング次第で引き落としまでに2回積立が行われる場合があります。そのため実際には月間5万円までとなっています。このような法律があるため、どの証券会社でも月額上限は5万円です。
クレカ積立のメリット
ではクレカ積立の投資家にとってのメリットは何でしょうか。一つはカードのポイントが貯まることです。ポイント還元率が1%ならば、投信を1%割引で買っているのと同じ。手数料を払うどころか儲かるわけですから、それは人気が出ます。
2つ目は銀行口座残高を気にしなくていいこと。クレジットカードですから与信、つまり借金です。口座に残高がなくても購入できます。この「引き落としに失敗するリスクがない」のは案外よくて、これもクレカ積立のメリットだと思っています。
もし入り口がポイントだったとしても、こうやって毎月投信を積み立てるのは資産形成にとっては最良の方法です。後述しますが、まさに資産運用のベストプラクティスにいざなってくれるのがクレカ積立だと思います。
クレカ積立を提供している証券会社
楽天証券以後、多くの証券会社がクレカ積立をスタートさせました。注意点は、証券会社とクレカの組み合わせが決まっていること。カード決済を行うと、加盟店は決済手数料をカード会社に払います。これは平均3%程度と言われていて、カード会社はこれを原資として1%前後のポイントを還元するわけです。
ここで加盟店は証券会社になります。クレカ積立を行うために、決済額の3%を払っていてはさすがに経営がもちません。特定のカード会社と握ることで、決済手数料をディスカウントしてもらっていると思われます。
クレカ積立を提供している主な証券会社は下記の通りです。
各社共通のベストプラクティス
証券会社ごとのベストプラクティスに入る前に、共通のポイントを。それはどんな投信を買い付けるかです。個人的には、「eMAXIS Slim全世界株式」を推します。
超長期(20年以上のスパン)で見ると株式は最もリターンのよい投資先です。レバレッジをかけないのであれば、100%株式に投資するというのは合理的な投資方法だといえます。
その上で重要なのはできる限り分散をかけること。個別株よりも株式指数、1国の株式指数よりも全世界の株式。この分散というのは、リスクを減らしてリターンだけをアップさせる、投資において唯一の魔法の杖なのです。
そして全世界株式にもいろいろありますが、eMAXIS Slimを選ぶのは手数料が年率0.1144%と低いこと。60万円の積立なら年間686円です。さらにeMAXIS Slimは「業界最低のコストを目指す」ことを表明しています。これはよりコストが安い競合が出てきたら、同レベルまで下げるという宣言です。これならば安心して投資ができるというものです。
楽天証券のベストプラクティス
楽天証券の注意点は、買い付ける投信によって0.2%還元のものと1.0%還元のものがあることです。もともとはすべて1.0%還元でしたが、「それでは経営が持たない」ということで、還元率を引き下げました。
投信のコスト(信託報酬)は、販売会社である証券会社、運用会社(委託会社)、受託会社である信託銀行で分け合います。信託銀行の取り分はとっても小さく(eMAXIS Slim全世界で0.02%)、残りを証券会社と運用会社で分けるイメージです。下記はeMAXIS Slim全世界のコストの内訳です。
ここで販売会社である楽天証券の取り分が0.4%以上の投信についてだけは、1%を還元しています。それでも赤字でしょうが、1%をなんとか残した形です。
ちなみに販売会社取り分0.4%超というのは、合計したコストはだいたい1%くらいの投信になります。比較的高コストな投資という感じです。楽天の場合「投信スーパーサーチ」で「クレカ決済 1%ポイント還元」にチェックすれば、対象の投信が表示されます。
ではその中から何を選ぶか? ですが、還元率が低くても「eMAXIS Slim全世界」を買い付けて長期保有するというのがオススメです。どうしても1%還元を選ぶなら、海外債券系でヘッジ付きというのが一つの選択肢ですが、配当に対してコスト負けしてしまいます。
ではよくネットにあるように、買い付けたらすぐに売却してしまえばいいかとというと、確かにそれは一つの有効な手段ですが、こうした行動を取る人が増えるとシステム全体が改悪される可能性が増えるのです。
楽天キャッシュ買付のベストプラクティス
さて直接のクレカ積立ではありませんが、楽天証券では間接的にクレカ積立が可能です。それが楽天キャッシュ決済。電子マネーである楽天キャッシュを使って、投信を買い付けるものです。
ポイント還元は、楽天カードから楽天キャッシュにチャージした場合で0.5%となっており、0.2%よりは高いですが、従来の1.0%よりは低い。そこで、楽天カードから楽天キャッシュにチャージするのは止めましょう。
2023年2月時点の最高還元ルートは、マネックスカード(JCB)かPayPayカード(JCB)からファミペイにチャージして(1%還元)、ファミペイで「5か0の付く日」に楽天キャッシュPOSAを購入(2%還元)。その楽天キャッシュで投信を買い付けるというものです。
ファミペイPOSAルートで、楽天ペイが5重取りの4.5%還元に 楽天キャッシュ積立にも - FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記
実際にはこの方法だと月間2万円までしか回せないので、ファミマTカードからチャージ(0.5%還元)することになり、還元率は2.5%に下がってしまいますが、それでもかなりの高還元です。
ここでは当然、eMAXIS Slim全世界株式を買い付けましょう。
SBI証券のベストプラクティス
SBI証券で買い付けるのはeMAXIS Slim全世界株式で決まりです。ただ、なんとなく僕は「SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」を買い付けています。まぁどちらでも大差はありません。
SBI証券の場合、どの商品を買うかの縛りはありませんが、利用できるカードが幅広くなっています。基本は三井住友カード。ただしクレカ発行会社に仲介されてSBI証券口座を開いた場合、そこのカードでの積立も可能です。
とはいえ、ベストプラクティスを目指すなら三井住友カードを選択すればOKです。そして、三井住友カードの中でも種類によって還元率が異なります。下記のとおり、一般カードで0.5%、ゴールドカードで1.0%、そしてプラチナプリファードで驚異の5%還元です。
まず、あまり難しいことを考えたくないなら年会費無料の三井住友カード(NL)を作り、0.5%還元を受けて終わりです。
多少手数をかけても構わないならゴールド(NL)を無料で作り、クレカ積立以外で年間100万円利用します。すると、その後の年会費が永年無料となります。そうして年会費コストがない状態でクレカ積立を行えば、1%還元が継続します。これがいわゆる「100万円修行」です。
そしてクレカ自体の還元率も求めるなら、3万3000円の年会費ながら、5%還元されるプラチナプリファードを選択します。毎月5万円を12カ月積み立てると60万円、その5%が還元されるので3万円が戻ってきます。実質年会費3000円で利用できるわけです。とはいえ、完全無料で1%還元のゴールドに比べると9000円ビハインドします。プラチナプリファードをカードとして活用するならありですが、クレカ積立だけならゴールドに軍配があがります。
マネックス証券のベストプラクティス
マネックス証券の場合、買い付けるのはeMAXIS Slim全世界株式でOK。カードはアプラスの「マネックスカード」です。最大の特徴は1.1%還元ということ。SBI証券x三井住友カードがいろいろ凝ったことをしていますが、年会費無料のカードで1.2%還元なのは難しくなくていいですね。
貯まるポイントは唯一、クレジットカードのポイントではなく証券会社のポイントです。ただマネックスポイントは楽天以外の共通ポイントに好感できるので、あまり使い勝手には困りません。
auカブコム証券のベストプラクティス
auカブコム証券の場合も、買い付けるのはeMAXIS Slim全世界株式でOK。カードはグループのau PAYカードです。還元率は1.0%とほかと比べるとおとなしめ。スタート当初やっていたau/UQ mobileユーザー向け上乗せ還元も、キャンペーンであって終了してしまいました。非常にオーソドックスでエッジのないサービスです。貯まるポイントはPontaポイントなので、比較的使い勝手は良いです。
tsumiki証券のベストプラクティス
tsumiki証券のクレカ積立は、ほかと少々異なります。まず選択できる投信の数は5種類しかありません。しかも、そのほとんどがアクティブファンドで、インデックスファンドは「セゾン・グローバルバランスファンド」しかありません。
しかし問題は、セゾン・グローバルバランスファンドは信託財産留保額が0.1%あることです。最近はこれを設定しているところは珍しいのですが、解約するときに0.1%が引かれるというものです。解約手数料のようなものですね。
また、ひふみの2ファンドは、販売手数料が最大0.33%と目論見書にはありますが、tsumiki証券は販売手数料を取っていないので安心して大丈夫です。
さて還元率は継続年数で異なります。1年目は0.1%、2年目は0.2%と増えていき、5年めで0.5%までアップします。そして、ちょっとおもしろいことに積立にエポスゴールドカードを使った場合、ボーナスポイントももらえるのです。これは年間100万円利用ごとに1万ポイントを付与するもので、要するに1%還元。この年間100万円利用にはtsumiki証券での積立もカウントされるのです。つまり、60万円積立に対しても1%分付与されるのです。
細かな計算はこちらの記事を見てもらうとして、実質還元率は1.22%までアップします。まぁ悪くないですね。
CONNECT証券のベストプラクティス
つい先日スタートしたのがCONNECTのクレカ積立です。対応している投信は35銘柄。アクティブ型が15銘柄あって、微妙な感じもあるのですが、eMAXIS Slimシリーズ各種を用意しているところは敬意を持てます。もちろん、全世界株式もラインナップされています。
利用できるクレカはセゾンカード(またはクレディセゾンが取り扱うUCカード)。還元率はプラチナで1.0%、一般カードは0.5%です。ただし、セゾンカードデジタルの場合、7月5日積立分までの6カ月間、還元率が1%にアップします。要は+0.5%ということです。
スケジュールは下記の通りです。
セゾンカードデジタルは年会費無料のカード。ということで、これを機にセゾンカードデジタルを作って、7月5日まではeMAXIS Slim全世界株式を積み立てるのがベストプラクティスとなるでしょう。
その後は0.5%還元となるので、継続するかどうかは要検討です。
九条の場合
というわけで、各証券会社のクレカ積立のベストプラクティスを見てきました。なおセゾンポケットのクレカ積立については、最大で0.5%還元であることとかなり還元条件が複雑なためにチェックも諦めています。赤字にならずユーザーに継続してもらうようにいろいろ工夫を凝らすのはいいのですが、複雑になったせいで敬遠されてはもともこもありません。
ぼくの場合、下記の積立を毎月行っています。
- 楽天証券(キャッシュ/クレカ)
- SBI証券(プラチナプリファード)
- マネックス証券
- auカブコム証券
- tsumiki証券
基本的にはeMAXIS Slim全世界ですが、たまに米国単体のインデックスだったりもします。ちなみに、eMAXIS SlimとeMAXISは、全く同じ対象に投資していますが(マザーファンドが同じ)、信託報酬だけが違ってeMAXISのほうが高価なので注意してくください。ほんと、ネット証券ではeMAXISは販売しないでくれたらいいのに。
うわーーー
— セミリタイア九条 (@kuzyofire) 2022年12月19日
eMAXIS Slimと間違えて、eMAXISを積み立ていたぼくを笑ってください pic.twitter.com/VzpqsGJ5t6